【ニューモデル情報】イマイチな評判だった「フォルクスワーゲン・ゴルフ8」 包括的アップデートで課題解決?
汚名返上! 2024.06.21 アウトビルトジャパン 「フォルクスワーゲン・ゴルフ」のプラグインモデルが受注開始された。酷評されたものの、ゴルフ8はドイツで最も売れているクルマだ。このフェイスリフトにより、その座は再び揺るぎないものとなる。※この記事は「AUTO BILD JAPAN Web」より転載したものです。
フェイスリフトを受けた改良モデルの受注がスタート
言うまでもなく、フォルクスワーゲン・ゴルフは欧州のベストセラーカーである。ゴルフの8代目=ゴルフ8は2019年に発売され、先代の成功をさらに発展させることを意図していた。
数字がフォルクスワーゲンの正しさを証明している。発売以来、ドイツでは合計約40万台が販売され、2023年だけでも8万1000台以上がデリバリーされている。ゴルフはマーケットで最も売れているクルマなのだ。……少なくともドイツ市場では。
そして、このレジェンドを電動化して乗りたい人に、そのチャンスが到来した。現在、2つのプラグインハイブリッドモデル「ゴルフeハイブリッド」と「GTE」が、注文可能となっているのだ!
![]() |
かなり厳しいマーケットの評価を受けて
ゴルフ8は当初から苦戦を強いられていた。インフォテインメントシステムの技術的な問題で市場投入が大幅に遅れ、発売後も改良が必要な素材や不便な操作インターフェイスなどにより、多くの人にとって十分に開発されたモデルには見えなかったのだ。
ヴォルフスブルクはこのことを理解し、今回、ゴルフに包括的なアップデートを実施した。外観的には地味なフェイスリフトにとどまっているが、素材やインフォテインメントの面では、それ以上の改良が施されている。われわれの最初のチェックで、どのような調整がなされ、どこにまだ改善の余地があるかが明らかになった。
![]() |
新型「ゴルフR」はアイスレースでウォームアップ
通常のゴルフとそのスポーティーな派生モデルである「GTI」はすでにフェイスリフトが施されているが、フォルクスワーゲンは今回、「ゴルフR」のフェイスリフトも発表した。オーストリア・ツェルアムゼーの近郊で開催されたアイスレースの一環として、このコンパクトな全輪駆動のスポーツカーは、偽装をかぶって最初の周回を走行した。
2002年以来、すでに30万台以上のRモデルが納車されており、特に2023年は、3万5000台以上がデリバリーされるゴルフRにとって記録的な年となった。フォルクスワーゲンは、性能面がどうなるかはまだ明らかにしていないが、おなじみの2リッター4気筒エンジンは、少なくとも320PSの最高出力を発生することが想定される。
![]() |
ベース価格は約2万7000ユーロ
コンパクトカーのアイコンであるゴルフの50歳の誕生日に合わせ、フェイスリフトされたゴルフ8の販売は開始された。価格は2万7180ユーロ(約457万円)からで、3万ユーロ(約505万円)の大台を大きく下回る。「ヴァリアント」も2万8280ユーロ(約475万円)からと、3万ユーロより低い価格設定となる。電動化モデルはやや高価になり、eハイブリッドは4万4240ユーロ(約743万円)から、よりパワフルなGTEは4万6745ユーロ(約785万円)からとなる。
さらに、誕生日を迎えたゴルフには「エディション50」という特別仕様車が用意される。このモデルを自分のものとしたいなら、最低でも3万6280ユーロ(約610万円)を用意しなければならない。また人気のGTIは、最低でも4万4505ユーロ(約748万円)からとなる。
![]() |
エクステリアの変更は控えめ
ビジュアル面では、ゴルフはかなり慎重なアプローチを受けている。フォルクスワーゲンはボディーワークに抜本的な変更は加えず、フェイスリフトでおなじみの要素に重点を置いた。スポーティーなトップモデルには、従来の「GTIクラブスポーツ」のものをベースにした、マットブラックの「GTX」エプロンが用意される。
「Rライン」ではグロスブラックの大型エアインテークが採用される。ランプ類は、少なくともヨーロッパでは「Performanceヘッドライト」またはオプションの「IQ-LightマトリクスLEDヘッドライト」(いずれもフロントラジエーターグリルに連続したライトストリップを装備)に限られる。ただし、例えば「トゥアレグ」のように、リアのロゴが点灯するようなことはない。
リアに関していえば、リアライトのロゴもデザイン変更の一部である。フロントと同様、リアエプロンも変更され、新しいディフューザーを装着。ホイールデザインも変更された。エクステリアカラーは全11種類で、そのうち5色が新たに追加されたものだ。
特別仕様車エディション50は、ダーク化されたリアウィンドウ、イルミネーションが施されたラジエーターグリルのクロスバー、同じくイルミネーションが施された「VW」ロゴ、Bピラーの3D「50」バッジで識別できる。ロゴはインテリアにも採用されている。ホイールは18インチだ。
3気筒エンジンと「GTD」は廃止へ
パワートレイン関連では大きな変更はなく、おなじみの1.5リッターと2リッターのガソリンエンジンが残っている。115PSのマイルドハイブリッドユニットを搭載するベースモデルから、265PSのGTI、300PSを前輪に供給するGTIクラブスポーツまで、その出力範囲は広い。
新しいラインナップには、システム出力204PS(eハイブリッド)と同272PS(GTE)の、2種類のプラグインハイブリッドも含まれている。競争力を維持するために容量19.7kWhの大型バッテリーを搭載しており、eハイブリッドでは143km、GTEでは131kmの航続距離を実現する。
いっぽうで、2つのエンジンは提供されなくなる。1リッター3気筒のベーシックなガソリンエンジンと、最高級ディーゼルの「GTD」だ。ウォルフスブルクに本拠を置くフォルクスワーゲンが、今回のマイナーチェンジでボンネットダンパーを追加しなかったのは少々残念だ。
![]() |
目覚ましく改善したインテリアの質感
ゴルフ8では、インテリアもまた、これまで多くの批判の対象となってきた。ゴルフはなにか新しいことを学んだのだろうか? もちろん! 顧客の意見は真摯(しんし)に受け止められ、適切な場所で適切な調整が行われた。
ドアパネルやダッシュボードはソフトパッドの面積が大幅に増え、仕上がりも全体的によくなった。もちろん下を見下ろしたり、後部座席に座ったりすれば、まだ硬いプラスチックが見つかるだろうが、全体として改良型はすでに一歩前進している。
トランク容量はゴルフが381リッターで、最大で1237リッターまで拡大できる。エステートのヴァリアントは611リッター、最大で1642リッターの荷物を積み込むことができる。
GTIは引き続き、赤を基調としたカラーアクセントを採用。ステアリングホイールとシートにはコントラストの効いたステッチが施されている。希望すれば、ファブリックまたはレザーのスポーツシートを注文できる。またトリムエレメントをカーボンファイバー製にすることも可能だ。
最大で12.9インチのセンターディスプレイを装備
インフォテインメントシステムも一歩前進している。これまでは不器用で直感的でなかったため、顧客を悩ませていた。
ここが最も変わったところで、フォルクスワーゲン最新の「MIB4」インフォテインメントモジュラーシステムがゴルフに導入された。ハードウエアが大幅に改良されたことで、よりスムーズな映像が実現し、グラフィカルな表示も当初よりはずっとシンプルに見える。
センタースクリーンは10.4~12.9インチと大型化されただけではない(以前は10.25インチだった)。クライメートコントロールのような重要な機能はもはやサブメニューに隠されることなく、メインスクリーンと一体化している。さらに、しばしば批判されたモニターの下にあるタッチスライダーには、暗い室内でも正しい機能を見つけられるよう照明がついた。
Apple CarPlayとAndroid Autoによるスマートフォンとのワイヤレス連携機能は標準で装備され、使い勝手の向上に貢献している。必要であれば、衛星ナビゲーション、音楽、アンビエント照明、運転補助装置など、特に重要な機能をホーム画面に設定可能で、クイックアクセスにより直接起動させることができる。
結論
新しいインフォテインメント、よりよい素材、新鮮な外観。フォルクスワーゲンはゴルフ8をアップデートする際、顧客の批判を真摯に受け止め、適切な調整を行った。近々行われる予定のテストで、すべての変更が本当にすべてをよくしたかどうかが分かるだろう。
(Text=Sebastian Friemel/Photos=Volkswagen AG)

AUTO BILD 編集部
世界最大級のクルマ情報サイトAUTO BILDの日本版。いち早い新車情報。高品質なオリジナル動画ビデオ満載。チューニングカー、ネオクラシックなど世界のクルマ情報は「アウトビルトジャパン」でゲット!
-
【ニュース】高性能を誇るBMWのラグジュアリーエステート「M5ツーリング」が復活! その魅力とは? 2024.9.6 高性能サルーン新型「BMW M5」に続き、そのワゴンバージョンたる新型「M5ツーリング」が登場。ユーティリティーからスリルまで幅広いニーズをパーフェクトに満たす“スーパーワゴン”とは、どんなクルマなのか?
-
MINIクーパーSE(FWD)【海外試乗記】 2024.8.21 電気自動車でも内燃機関車でも、常に「クーパー」と呼ばれるようになった新型MINIのハッチバック。価格にデザイン、パワーユニット、装備、そしてドライビングテストリポートと、新しくなったMINIクーパーの全情報をお届けする!
-
スズキ・スイフト(FF/5MT)【海外試乗記】 2024.8.20 世界で900万台以上が販売されてきた大人気モデル「スズキ・スイフト」。7代目となる新型は、海外でどのように評価されているのか? これまでの成功をさらに発展させることを目指し、スズキが投入した小さな巨人に、『AUTO BILD』のスタッフが試乗した。
-
スマート#1ピュア(RWD)/#1ブラバス(4WD)【海外試乗記】 2024.8.20 続々とラインナップを拡大している、スマートブランドのフル電動SUV「スマート#1」とはどんなクルマなのか? その価格とデザインからパワーユニット、イクイップメント、試乗した印象まで、すべての情報をお届けしよう。
-
【ニュース】電動ルノー・トゥインゴの最新情報 2024.8.15 ルノーの電気自動車(BEV)を手がける新会社アンペアが、2025年にコンパクトBEVとして「トゥインゴ」を復活させる。初代トゥインゴを想起させるデザインや価格、そしてパワーユニットまで、現時点でのすべての情報をお届けする。
-
NEW
第844回:「ホンダらしさ」はここで生まれる ホンダの四輪開発拠点を見学
2025.9.17エディターから一言栃木県にあるホンダの四輪開発センターに潜入。屋内全天候型全方位衝突実験施設と四輪ダイナミクス性能評価用のドライビングシミュレーターで、現代の自動車開発の最先端と、ホンダらしいクルマが生まれる現場を体験した。 -
NEW
アウディSQ6 e-tron(4WD)【試乗記】
2025.9.17試乗記最高出力517PSの、電気で走るハイパフォーマンスSUV「アウディSQ6 e-tron」に試乗。電気自動車(BEV)版のアウディSモデルは、どのようなマシンに仕上がっており、また既存のSとはどう違うのか? 電動時代の高性能スポーツモデルの在り方に思いをはせた。 -
NEW
第85回:ステランティスの3兄弟を総括する(その3) ―「ジープ・アベンジャー」にただよう“コレジャナイ感”の正体―
2025.9.17カーデザイン曼荼羅ステランティスの将来を占う、コンパクトSUV 3兄弟のデザインを大考察! 最終回のお題は「ジープ・アベンジャー」だ。3兄弟のなかでもとくに影が薄いと言わざるを得ない一台だが、それはなぜか? ただよう“コレジャナイ感”の正体とは? 有識者と考えた。 -
NEW
トランプも真っ青の最高税率40% 日本に輸入車関税があった時代
2025.9.17デイリーコラムトランプ大統領の就任以来、世間を騒がせている関税だが、かつては日本も輸入車に関税を課していた。しかも小型車では最高40%という高い税率だったのだ。当時の具体的な車両価格や輸入車関税撤廃(1978年)までの一連を紹介する。 -
内燃機関を持たないEVに必要な「冷やす技術」とは何か?
2025.9.16あの多田哲哉のクルマQ&Aエンジンが搭載されていない電気自動車でも、冷却のメカニズムが必要なのはなぜか? どんなところをどのような仕組みで冷やすのか、元トヨタのエンジニアである多田哲哉さんに聞いた。 -
トヨタ・ハリアーZ“レザーパッケージ・ナイトシェード”(4WD/CVT)【試乗記】
2025.9.16試乗記人気SUVの「トヨタ・ハリアー」が改良でさらなる進化を遂げた。そもそも人気なのにライバル車との差を広げようというのだから、その貪欲さにはまことに頭が下がる思いだ。それはともかく特別仕様車「Z“レザーパッケージ・ナイトシェード”」を試す。