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【スペック】全長×全幅×全高=4648×1881×1661mm/ホイールベース=2810mm/車重=1805kg/駆動方式=4WD/3リッター直6DOHC24バルブターボ(306ps/5800rpm、40.8kgm/1200-5000rpm)(欧州仕様車)

BMW X3 xDrive35i(4WD/8AT)【海外試乗記】

すべてがレベルアップ 2010.11.18 試乗記 島下 泰久 BMW X3 xDrive35i(4WD/8AT)

人気の高級コンパクトSUV「X3」がフルチェンジ。北米はアトランタで先行試乗した。
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大きく立派になった

新型「X3」の実車を最初に目にした時の率直な印象は、事前に目にしていたオフィシャル写真よりも、はるかに魅力的じゃない? というものだった。ライトまわりをはじめ、写真では平板に見えていたところも実車はとても肉感的で、存在感が際立っている。それだけに、今回は試乗をずいぶん前から楽しみに待っていたのである。

訪れたのはアメリカ東部のアトランタ。新型X3はこれまでのオーストリアではなく、「X5」などと同じサウスカロライナ州のスパータンバーグ工場にて生産される。そのあたりが、試乗場所のチョイスに影響したことは想像に難くない。

見た目は実に立派になった。スリーサイズは全長4648mm×全幅1881mm×全高1661mmと、現行型に対して全長83mm、全幅28mm、全高12mm、それぞれ拡大されている。もはや全長は初代X5に匹敵。全幅は上回るなど、「X1」が登場したこともあって明確に上級移行が図られている。
立派に感じるのは単純に大きくなったからというだけではない。プロポーション自体も、タイヤをボディの四隅に置いて安定感を醸し出しているし、なによりディテールが洗練された。先代はややトリッキーなところがあったが、新型は誰にとっても素直にスタイリッシュに見えるはずだ。

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走りの質は大きく進化

インテリアも、やはりグッと洗練された。デザインもクオリティも、いかにも急ごしらえで安普請なところが散見できた先代とは違って、よく練られている。空間的にも、前席では特に横方向の広がり感が心地良い。後席こそ足元スペースなど実はX1と大きな差を感じさせないものの、荷室は容量550〜1600リッターと、実に先代より15%近くも拡大されている。

試乗したのは「xDrive35i」。その走りっぷりは重厚の一言だった。18インチタイヤとXモデルとしては初採用のダイナミック・ダンパー・コントロールを装着した試乗車は、足さばきは落ち着いているし重心の高さをみじんも感じさせない心地良いロール感を見せるなど、兄貴分と同じくSUVらしからぬ爽快(そうかい)な走りっぷりを見せる。路面の継ぎ目を越える際などにゴチンッと強い衝撃が伝わってくるものの、それを除けば乗り味の質は大きく進化した。

これもオプションのバリアブル・スポーツ・ステアリングは、その名のとおりバリアブルレシオを採用してロック・トゥ・ロックを1.25回転に抑えたクイックな操舵(そうだ)を可能にしている。しかし、そのせいなのか電動アシストとされたせいか、ステアリングフィールは今ひとつで、特に中立感がつかみづらかったのは事実。現行モデルと同じxDriveと呼ばれるフルタイム4WDシステムが、普段はFRに近い駆動力配分を行うことも要因か。ここがX3で一番の不満と言ってもいい。

ちなみにBMWはアクティブステアリングを今後は4輪操舵とのみ組み合わせていくといい、このX3には用意されていない。これより下のクラスでは、今後はこのバリアブル・スポーツ・ステアリングがその代わりとなるようだ。

心配なのはその価格

エンジンはおなじみの直列3リッター直噴ツインスクロールターボ。最高出力306ps、最大トルク40.8kgmを発生する。ぜいたくにも兄貴分達と同じく8段ATが与えられたことで、日常域の走りは十分なトルクのある低回転域を矢継ぎ早のシフトアップでつないでいく、実に効率的な加速感を示す。初のオート・スタート・ストップの搭載と相まって、EU複合モード燃費は8.8リッター/100km(11.4km/リッター)をマーク。郊外路では燃費計の表示はおおむね9リッター/100km(11.1km/リッター)台だったから、実燃費も期待して良さそうである。

それでいて、ひとたびダイナミック・ドライビング・コントロールを「COMFORT」から「SPORT」あるいは「SPORT+」に切り替えれば、まさにアクセル操作に即応する鋭いレスポンスを示すようになる。これぐらいハッキリ性格が変われば、この手の装備も単なるギミックとは片付けられなくなる。吹け上がりは鋭く、特に6500rpmからのゼブラゾーン以降は、ギューンという野太いサウンドも相まってすさまじい迫力だ。正直、個人的にはもっと繊細な味付けの方がBMWのストレート6にはふさわしいとは思うのだけれども。

そもそも初代X3は、SAV(スポーツ・アクティビティ・ビークル)の名の下にオンロード派SUVの先鞭(せんべん)をつけたX5と同様に、目下大流行のプレミアムコンパクトSUVという市場を切り開いた存在であった。その意味で新型は、決して斬新な存在とは言えないものの、しかしスタンダードのレベルを引き上げる高い完成度を示していたことは間違いない。

まさにいいことずくめだが、心配なのは価格である。ヨーロッパでのxDrive35iの価格は5万1850ユーロ。日本円にして、ざっと600万円だ。オプションが載ると考えると、現行モデルより高価になってもおかしくはない。さて、どうなるか。

日本には来春にも導入という新型X3。まずはその上陸を楽しみに待つことにしよう。

(文=島下泰久/写真=BMWジャパン)

島下 泰久

島下 泰久

モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。

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