フェラーリの新たなスペチアーレ「F80」誕生! では歴代6モデルで最もスペシャルなのは?
2024.11.04 デイリーコラムたいたい節目の○十年で……
(ほぼ)10年に一度のスーパーフェラーリ。ファンは“スペチアーレ”と呼んだりするが、マラネッロは“スーパーカー”だと言っている。ちなみに他のロードカーは“スポーツカー”と“GT”だ。王者には確かにシンプルな物言いが似合っている。
最新の“スーパーカー”は創立80周年を自ら祝って「F80」と名乗った。その意味は、「2025年末から生産が始まって、80周年にあたる2027年に生産を終える」だ。いきなり余談で申し訳ないけれど、この説明に新興のマーケットからやってきたジャーナリストの一部はあまり納得できなかったらしく、プレスカンファレンスでももう一度真意を問いただす場面があった。はた目で、「マラネッロのネーミングにいちいち合理性を求めてもなぁ」と思いつつ、過去にも同じ例のあったことを思い出す。
1995年に登場し、1997年、つまり50周年の年に生産を終えた「F50」だ。その先代にあたる「F40」はちゃんと1987年にデビューしていたから、当時は私も「なんで50なんだろ」と思ったものだ。ちなみにその後の2モデル、「エンツォ フェラーリ」(2002年)と「ラ フェラーリ」(2013年)は特にアニバーサリーとは関係ない。70周年を前に「ラ フェラーリ アペルタ」(オープン仕様)を出したが、記念バッジがあった程度だ。
ビジネス化への契機はF40
そもそもマラネッロが“周年記念事業としてスペシャルな限定車を出す”というビジネスモデルを戦略的に考え出したとはとうてい思えない。このシリーズの始祖は1984年登場の「GTO」(「288GTO」として知られている)だったが、これは“後から振り返ってみてそうだった”にすぎない。グループBのホモロゲーションモデルということで往年の名前であるGTオモロガータを名乗ったものの、レギュレーション変更によってモータースポーツ活動の場所を奪われた悲劇のマシンとデビュー当初はみられていた。それゆえ生産台数はわずかに272台、日本への正規輸入に至ってはわずかに1台であった。
もっとも、個人的には最もラブリーな跳ね馬の一台だと思っている。その理由は「ディーノ」に始まる美しいフェラーリミドシップカー=フィオラノヴァンティの香りを存分に残しつつ、性能的にみれば後のスーパースポーツカー時代を期待させるに十分だから。端的に言って、美しくも野蛮な最後の跳ね馬だ。
行き場をなくしたGTOを発展させ、それを最強ロードカーに仕立てて販売しようというもくろみが、たまさか40周年というちょっと半端な節目に当たってF40が誕生する。姿形はもちろん、カーボンファイバーを多用し、第一級のパフォーマンスを有するなど、まさにスーパーカーがスーパースポーツへと発展する画期となったモデルである。エンツォ・フェラーリ御大が開発を最後に見つめたロードカーであり、バブル期の狂乱人気もあって、その存在は神格化された。
ホモロゲーションとはもはや関係なかったため、限定生産ではなく、乞われるがまま1000台以上を生産した(つまり計画性などなかった)が、そんなF40の大成功がマラネッロをして“スーパーカービジネス”に力を入れさせるきっかけとなったことは間違いない。
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コレクターを刺激した2台
そういう意味では、厳密に言って限定生産型スーパーカービジネスの端緒はF50だろう。コンセプトは“公道用F1マシン”というもので、歴代スーパーカーのなかでも最も硬派な一台だ。最近のモデルでいえば「AMG ONE」や「アストンマーティン・ヴァルキリー」あたりがそのコンセプトに近いかもしれない。コンセプトが明確で、生産台数も349台と少なく、また事実上最後のマラネッロ産V12ミドシップ+3ペダルマニュアルトランスミッションであったことから、近年極めて急激に評価が上がっている。
F80を初めて見たとき、思い出したのが実はF50だった。なぜか。最新の自社製レーシングカーを強く意識した車体のコンセプトもさることながら、そのデザインにある種の違和感があったからだ。F50がデビューしたときも違和感だらけで、正直、かっこいいと思えるまでに数年、どころか十数年かかった。スペシャルなモデルのデザインというものは、ちょっと先の将来を見据えているものなのだろう。
また、F50人気が急激に高まった背景には、台数が最も大きな要因(みんな全部そろえたいものだ)である一方、小さい頃に憧れたという若い人たちが購買層の中心になってきたという、斯界(しかい)の世代交代もあるといえそうだ。
続くエンツォもF1マシンを強く意識したデザインで登場した。奥山清行さんがデザインしたことでも有名だ。エアロダイナミクスを追求し、派手なデバイスを取り除いたことがその後のマラネッロ高性能モデルの規範となる。巨大なリアウイングがF80で復活したということは、それだけ性能が上がって必要なダウンフォースも増えた(最大1t以上!)ということだ。生産台数は400台。F50同様に次世代コレクターからの支持が圧倒的に高いモデルとなった。
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「MTでシンプル」が一番
おそらくこのエンツォあたりで、スーパーカービジネスのうま味を確定することができたのではないだろうか。その始まりをGTOに求め、「だいたい10年おきに出してみようじゃないか」というプランもまたここから始まった。
エンツォという名前を使ってしまうなんて! 次はどうするんだ? と思ったが、その次はなんとラ フェラーリ(=ザ・フェラーリ)だった。確かにもうそれしかないな、と妙に納得したものだ。現時点で歴代スーパーカー(スペチアーレ)のなかで最も価値のあるモデル(特にアペルタ)であり、世代交代の影響が色濃く表れているとも思う。F40やF50は半ば神格化され、マニュアルトランスミッションであることから完全にコレクターズアイテム化した。若い世代には2ペダルの高性能マシンのほうが好まれるようである。
最強のマラネッロ産スーパーカーはもちろん乗らずと知れた「F80」だ。私的には最後の3ペダル12気筒で、そのコンセプトも甚だシンプルなF50が最強スペチアーレだと思っている。
そういえば、F50はバルケッタ(オープン、デタッチャブルハードルーフ)のみであった。一方、GTO、F40、エンツォにはオープン仕様がなかった。ラは両方。F80ではどうなるのだろう?
個人的な希望を言えば(買えやしないけれど)、クーペのままでよりモーター性能を上げ、F80と「499PM」の間を埋める究極のロードカー「F80LM」を見てみたいなぁ。80周年にあたる2027年にその答えが出ると期待しようじゃありませんか!
(文=西川 淳/写真=フェラーリ/編集=関 顕也)
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西川 淳
永遠のスーパーカー少年を自負する、京都在住の自動車ライター。精密機械工学部出身で、産業から経済、歴史、文化、工学まで俯瞰(ふかん)して自動車を眺めることを理想とする。得意なジャンルは、高額車やスポーツカー、輸入車、クラシックカーといった趣味の領域。
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