いつの間にやら多種多様! 「トヨタGRヤリス」のベストバイはどれだ?
2026.02.23 デイリーコラム6年間の時を経て
気づけばこんなに大家族に。一体いつの間に?
なんのことかといえば「GRヤリス」である。トヨタのスポーツブランドである「GR」の中心的存在となる一台で、デビューは2020年1月。当初は初期限定仕様の「RZファーストエディション」と「RZハイパフォーマンス ファーストエディション」が送り出され、同年9月からはレギュラーモデルとなる4タイプの販売が始まった(関連記事)。「RS」「RC」「RZ」そして「RZ“ハイパフォーマンス”」である。
というわけで発売から6年がたち、その間に1回のマイナーチェンジ(2024年1月)と1回の年次改良(2025年4月)を実施して進化したGRヤリス。そのベストバイを探ろうというのが今回のコラムの趣旨だ。
まず基本バリエーションから見ていくと、実はレギュラーモデルに関しては、2点を除けばレギュラーモデル時の状況と大きくは変わらない。競技向けモデルのRC(MT車:356万円/AT車:391万円だがエアコンはオプション設定)があり、中心的モデルのRZ(MT車:448万円/AT車:483万円)が存在し、その高性能仕様としてBBS鍛造ホイール&ミシュラン製タイヤ、トルセンLSD、専用チューニングのサスペンションなどを組み合わせたRZ“ハイパフォーマンス”(MT車:498万円/AT車:533万円)が用意されるフォーメーションだ。
デビュー時とは異なる1点は、FFモデルのRSがラインナップから消えたことである。このグレードは、1.6リッター直3ターボを搭載するほかのGRヤリスとは異なり、1.5リッター直3自然吸気エンジンに発進用ギア付きの「ダイレクトシフトCVT」を組み合わせた“ATで低価格の仕様”であり、ガチな走りを求める人以外にもGRヤリスを訴求して生産ラインの稼働率を高めるという目的もあった。しかし、GRファクトリーと呼ぶ特殊な生産ラインの稼働率が高まり、また4WDのGRヤリスにもATが追加されたことでその役割を終えたというわけだ。
もうひとつの違いはRCとRZ“ハイパフォーマンス”に「+Aero performance package(+エアロパフォーマンスパッケージ)」という仕様が追加されていること。「RC+エアロパフォーマンスパッケージ」と「RZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ」だ。追加されるのは「フロントリップスポイラー」「ダクト付きアルミフード」「フェンダーダクト」「燃料タンクアンダーカバー」「リアバンパーダクト」そして「可変式リアウイング」など。レースやラリーといった競技で速く走るための、より空力性能を突き詰めた仕様と考えればいいだろう。価格は約50万円のアップとなる。
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各車こだわりのつくり込み
現在、通常モデルとして用意されているのは、前述の4グレードに素のRZを合わせた5グレードだ。それぞれ6段MTと8段ATが選べ、AT車はMT車に対して35万円アップとなっている。
そして、悩ましいのは度々登場する特別仕様の限定車だ。これまでも2022年1月に発表された「GRMNヤリス」や、2024年1月に発表された「RZ“High performance・Sébastien Ogier Edition(ハイパフォーマンス セバスチャン・オジエエディション)”」「RZ “High performance・Kalle Rovanperä Edition(ハイパフォーマンス カッレ・ロバンペラエディション)”」などがあったが、2026年1月には「MORIZO RR」と「Sébastien Ogier 9x World Champion Edition(セバスチャン・オジエ 9xワールドチャンピオンエディション)」も「2026年春以降に発売(価格未定)」として発表されている。
一般的に限定車といえば内外装のコーディネートを変える程度で済ませることもあるが、GRヤリスにおいてはそれだけで済まないのが面白いところ。
いずれもサスペンションや駆動系(前後の駆動配分制御)など走行性能にまで手が入り、モデルによって異なる走りの味つけとしているのがすごいのだ。台数は最も多いGRMNでも500台、それ以外は100台や200台という台数しかつくらないのだから、そこまでつくり込んできちんと商売になっているのだろうかとこちらが心配したくなるほどである。
というわけでここからが本題。もしも筆者がいまGRヤリスを買うとしたら、どれを狙うか?
せっかくなので通常モデルではなく、いましか買えない限定車を狙いたいところだが、独断と偏見に基づいた超個人的チョイスなら、MORIZO RRは残念ながらパス。なぜならトランスミッションがATしかないからだ。
今どきのAT車は速いし、サーキット走行などでもドライバーの操作をハンドルとアクセル/ブレーキに集中できるメリットも重々承知している。しかし筆者としては「こういったスポーツカーは、ゆっくり走っても楽しめるMT車に限る」のだ。
クルマと対話し、スムーズにギアチェンジが決まったときの喜びがあり、クルマとの一体感が高まるMTで乗りたいのである。自分で書いておきながら「古い考え方だなあ」と思うけれど、そこは譲れない。「アルピーヌA110」のようにそもそもMTが選べないスポーツカーなら諦めもつくんだけど。
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装備も価格も幅がある
……となれば、イチオシはセバスチャン・オジエ 9xワールドチャンピオンエディション。GRヤリスでWRCを戦うオジエ選手9回目のWRCドライバーズチャンピオン獲得を記念した特別仕様車だ。
4WD制御は「TRACK」モードと置き換えるかたちで「SEB.」モードを、「GRAVEL」モードと置き換えるかたちで「MORIZO」モードを搭載。前者は旋回性を確保しながら後輪の駆動力による車両コントロールを可能にすることを狙って前40:後ろ60のトルク配分に。後者はトラクション性能と旋回性能を高い次元で両立させるため、加速時は前後輪の拘束力を最大(直結)とし、制動時は必要な分だけ拘束を緩める制御としているという。いずれもラリーからのフィードバックなのだとか。
ボディーは専用開発した車体色「グラビティブラック」をまとい、アクセントにはオジエ選手の出身国であるフランスをイメージしトリコロールをアクセントに採用。ベース車とは異なるステアリングホイール(見た感じMORIZO RRと同じタイプ)の採用など、インテリアも特別仕上げだ。唯一の不安は現時点では価格が明らかになっていないことだけど、2年前に販売されたRZ“ハイパフォーマンス セバスチャン・オジエエディション”の845万円から推測すると900万円くらいだろうか。
ローンの審査は下りるかなあ……。いや、そうじゃない。最大の問題点は国内限定100台という希少さから“売ってもらえる可能性”が極めて低いことだろう。宝くじ並みとは言わないけれど、ローン審査どころか抽選に外れるのが関の山だ。
というわけで、筆者の真のイチオシをお伝えしよう。それは、RCである。モータースポーツのベース車両だ。
価格はたったの(という表現が適切かはわからないけれど現実的な)356万円。オプションでエアコンを付けても369万2000円だ。RZより約80万円も安い。
だけど、高性能スポーツカーにとって最も重要な走行性能は、基本的にRZと同じ。ヘッドランプがハロゲンだろうが、遮音材や消音材が少なくて騒音がうるさくたっていいじゃない。カーナビどころかオーディオもないとか、スマートエントリー&スタートシステムがないなんて言っている場合ではないのだ。そのぶん軽いんだから問題ない(でもバックカメラは欲しいけれど)。
「走り好きのオトコは(オンナも)黙ってRC」である。それでは装備面で満足できないという人だけがRZもしくはそれ以上の仕様を選べばいい。それがGRヤリスのグレード選びの“俺的ベストバイ”であり、神髄だと筆者は本気で思っている。
(文=工藤貴宏/写真=トヨタ自動車/編集=関 顕也)
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工藤 貴宏
物心ついた頃からクルマ好きとなり、小学生の頃には自動車雑誌を読み始め、大学在学中に自動車雑誌編集部でアルバイトを開始。その後、バイト先の編集部に就職したのち編集プロダクションを経て、気が付けばフリーランスの自動車ライターに。別の言い方をすればプロのクルマ好きってとこでしょうか。現在の所有車両は「スズキ・ソリオ」「マツダCX-60」、そして「ホンダS660」。実用車からスポーツカーまで幅広く大好きです。
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