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三菱アウトランダーPエグゼクティブパッケージ(4WD)

フラッグシップですから 2024.12.25 試乗記 高平 高輝 「三菱アウトランダー」のマイナーチェンジモデルが登場。スキンチェンジよりもメカニズムの進化に重きを置いたメニューにより、EV走行換算距離はドーンと100kmオーバー、システム出力は20%アップの大盤振る舞いだ。新たな最上級グレードの仕上がりをリポートする。
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ほぼ3年でマイナーチェンジ

2021年の末に「やれることは全部やった」との言葉とともに全面刷新された三菱の「アウトランダーPHEV」だが、それから3年でマイナーチェンジを迎えた。しかも単なる化粧直しにとどまらず、プラグインハイブリッドシステムの要である駆動用バッテリーの容量拡大(20.0kWhから22.7kWhへ約10%増し)をはじめ、広範囲に手が入っている。三菱自慢の電動化技術と4WD技術を詰め込んだフラッグシップモデルであるからには、変化の速い時代に見合うスピード感が必要なのだろう。

外観はほとんど変わっていない。フロントグリルの上半分がフラットパネルに置き換えられたことと迫力ある新デザインのホイールを除けば、新旧の違いは一見しただけでは分からないが、実はバンパーやフェンダーなどはつくり直され、パネル間のチリ合わせもより緻密になっているという。そう言われると何だかキリッと引き締まって、以前からのテーマだった「威風堂々」にも磨きがかかっているように見える。

さらにフロント開口部の奥には自動開閉するグリルシャッターが備わり、またフロア下のアンダーカバーやリアバンパー形状なども手直しされて空力性能を向上させているという。2025年の春以降、順次欧州やオセアニア、北米市場にも投入される予定のアウトランダーPHEV(過去3年は国内向けのみだった)にとって、高速域での性能向上(および各国の規制適合)は必須なのである。

フロントまわりのデザイン変更は三菱エンブレムが貼られた部分がメッシュパネルからフラットパネルに変わった程度。写真では分からないが、開口部の奥にグリルシャッターが搭載されている。
フロントまわりのデザイン変更は三菱エンブレムが貼られた部分がメッシュパネルからフラットパネルに変わった程度。写真では分からないが、開口部の奥にグリルシャッターが搭載されている。拡大
ここでは新たに設定された最上級グレード「Pエグゼクティブパッケージ」(5人乗り)を紹介。リアバンパーの形状変更によってボディーの全長が10mmだけ長くなっている(4720mmに)。
ここでは新たに設定された最上級グレード「Pエグゼクティブパッケージ」(5人乗り)を紹介。リアバンパーの形状変更によってボディーの全長が10mmだけ長くなっている(4720mmに)。拡大
切削光輝仕上げの20インチアルミホイールは新デザイン。これまではオールシーズンタイヤが標準だったが、夏タイヤの「ブリヂストン・アレンザ001」に変わっている。
切削光輝仕上げの20インチアルミホイールは新デザイン。これまではオールシーズンタイヤが標準だったが、夏タイヤの「ブリヂストン・アレンザ001」に変わっている。拡大
テールランプのレンズがブラック仕上げに変わった。
テールランプのレンズがブラック仕上げに変わった。拡大
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新たな最上級グレードを追加

ご存じのように、アウトランダーは従来型から日本向けにはガソリン車は用意されずPHEVモデルのみ、前後2基のモーターによる電動走行優先の4WDで、最もベーシックな「M」グレード(5人乗りのみ)以外は5人乗り/7人乗りの両タイプが用意されている。今回の試乗車は新たに追加された最上級グレード「Pエグゼクティブパッケージ」で、ヤマハと共同開発したオーディオシステム「ダイナミックサウンドヤマハアルティメット」や専用のセミアニリンレザーシートなどを標準装備とする。

5人乗り仕様の本体価格は659万4500円とこれまでに比べて一気に高くなった(7人乗りは668万5800円、ちなみに従来型の最上級グレード「P」の7人乗りは532万0700円)。フラッグシップとはいえ、また補助金があてにできるとはいえ、この価格上昇をユーザーがどう見るかは気になるところだ。

9インチから12.3インチに大きくなったセンターディスプレイが目につくインテリアは以前に増して豪勢な雰囲気だ。キルティング加工のレザーシートは前後席のヒーターに加えて前席にはベンチレーションも備わり(Pグレード以上)、フレームレスのデジタルルームミラー(G以上)やアルミペダル(P以上)など、まさに“全部盛り”である。

駆動用バッテリーの容量が20kWhから22.7kWhへとアップ。EV走行換算距離が100km以上に拡大したほか、冷却性能の向上等により、急速充電の受け入れ能力も高くなった(同じ時間でより多く充電できるようになった)。
駆動用バッテリーの容量が20kWhから22.7kWhへとアップ。EV走行換算距離が100km以上に拡大したほか、冷却性能の向上等により、急速充電の受け入れ能力も高くなった(同じ時間でより多く充電できるようになった)。拡大
このブリックブラウンのインテリアは「Pエグゼクティブパッケージ」専用。センターディスプレイのサイズが9インチから12.3インチへと拡大している。
このブリックブラウンのインテリアは「Pエグゼクティブパッケージ」専用。センターディスプレイのサイズが9インチから12.3インチへと拡大している。拡大
シフトセレクターの「P」ボタンのデザインが変わった。USBポートがタイプA+タイプCからタイプC×2になるなど、細かな点もアップグレードされている。
シフトセレクターの「P」ボタンのデザインが変わった。USBポートがタイプA+タイプCからタイプC×2になるなど、細かな点もアップグレードされている。拡大
アルミペダルは「P」「Pエグゼクティブパッケージ」に標準装備。これまでは黒いペダルとカーペットむき出しのフットレストだった。
アルミペダルは「P」「Pエグゼクティブパッケージ」に標準装備。これまでは黒いペダルとカーペットむき出しのフットレストだった。拡大

余裕があると滑らかだ

肝心のバッテリーが容量22.7kWhの新型に換装されたことで、EV走行換算距離(WLTCモード)は83kmから102kmに延びている(Mグレードは87km→106km)。ハイブリッド燃費も16.2km/リッターから17.2km/リッターへ向上しているという(Mグレードは16.6→17.6km/リッター)。試乗会ではこれらの数値は検証できなかったが、以前よりも滑らかで自然な動きだしがまず印象的だった。

リチウムイオン電池は内部抵抗を減らし、冷却性能を向上させたことでトータルのシステム出力が約20%アップ。おかげでエンジン始動頻度が下がり、0-100km/h加速も従来型より2秒短縮できたという(タイムは非公表)。同時にスロットルのセッティングをピーキーに感じないように見直したという(新型の「ノーマル」モードは従来型の「エコ」モードに相当するらしい)。もちろんセンターコンソールのダイヤルで7種ものドライブモードを選べるから、例えば「パワー」モードにすれば驚くほどの鋭いレスポンスを見せる。

ちなみに133PSと195N・m/4300rpmを生み出す2.4リッター4気筒エンジンも、フロントが116PS/255N・m、リアは136PS/195N・mの最高出力および最大トルクを発生するモーターもスペックには変更なし。システム出力が向上しているのは最高出力をより長く維持できるようになったためらしい。

フロントが最高出力116PS/最大トルク255N・m、リアが136PS/195N・mという駆動用モーターのスペックはこれまでどおり。バッテリーの刷新によって目いっぱいの性能を継続的に発揮できるようになり、結果としてシステム出力が20%アップしたという。
フロントが最高出力116PS/最大トルク255N・m、リアが136PS/195N・mという駆動用モーターのスペックはこれまでどおり。バッテリーの刷新によって目いっぱいの性能を継続的に発揮できるようになり、結果としてシステム出力が20%アップしたという。拡大
シート表皮はダイヤモンドステッチ入りのセミアニリンレザー。これまでのヒーターに加えて新たにベンチレーションが搭載された。
シート表皮はダイヤモンドステッチ入りのセミアニリンレザー。これまでのヒーターに加えて新たにベンチレーションが搭載された。拡大
これまでは下位グレード専用だった5人乗り仕様が上位グレードでも選べるようになった。後席のセンターアームレストを倒すとセパレートシートのように使える。
これまでは下位グレード専用だった5人乗り仕様が上位グレードでも選べるようになった。後席のセンターアームレストを倒すとセパレートシートのように使える。拡大
7人乗り仕様の3列目シートは床下格納式のため、5人乗りでも荷室の印象は変わらない。フロアのレベルも同じだ。
7人乗り仕様の3列目シートは床下格納式のため、5人乗りでも荷室の印象は変わらない。フロアのレベルも同じだ。拡大

フラットな乗り心地は出色

乗り心地が洗練されたことも最新のアウトランダーPHEVの特長だ。可変ダンパーやエアスプリングを持たないコンベンショナルなサスペンションのSUVとしては従来型も悪くはなかったが、それでもピッチングがやや気になったことを覚えている。背が高く重いSUVタイプのPHEV(試乗車は2140kg)につきものの課題である。それが最新型ではほぼ気にならなかった。むしろ重量のあるSUVを一般的な足まわりでこれだけフラットに、まろやかな当たりで走らせるのは他にほとんど例がないのではないか。ダンパーなどの改良だけでなく、今回は同じブリヂストンながら専用開発の「アレンザ001」(従来型はM+Sの「エコピア」だった)を採用したことも滑らかで角が取れた乗り心地に貢献しているはずだという。プラグインハイブリッド車と電気自動車を問わず、日本車のSUVでは一番洗練されているのではないかと思った。

ただし、山道のコーナリングとなると路面によってはややあおられる場面もあった。オフロード走行も考慮に入れた全高の高いSUVに(最低地上高は200mmある)、そこまで求めるのは酷だとは思いながらも、せっかくのS-AWCを生かすためにもう一声、電制ダンパーの類いがあればなあ、と感じたことも事実である。

SUVタイプのプラグインハイブリッド車(4WD)としては世界一の売り上げを誇る(世界累計約37万台、国内9.3万台)アウトランダーPHEVは、三菱のフラッグシップゆえにオールラウンダーであることを求められる。そこがいいんだという向きもあれば、ちょっと盛りすぎと感じる人もいるだろうが、ラインナップが限られるなかでの労作であることは間違いない。

(文=高平高輝/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)

スピードレンジの高い欧州市場への再進出を見据えて足まわりやパワーステアリングのセッティングを変更。これまでよりもフラットな乗り味に変わっている。
スピードレンジの高い欧州市場への再進出を見据えて足まわりやパワーステアリングのセッティングを変更。これまでよりもフラットな乗り味に変わっている。拡大
液晶メーターのサイズは変わらないが、グラフィックを一新。落ち着いた雰囲気に変わっている。
液晶メーターのサイズは変わらないが、グラフィックを一新。落ち着いた雰囲気に変わっている。拡大
新たにヤマハのオーディオシステムを全車に標準化。「Pエグゼクティブパッケージ」はより高級な「ダイナミックサウンドヤマハアルティメット」を装備する。
新たにヤマハのオーディオシステムを全車に標準化。「Pエグゼクティブパッケージ」はより高級な「ダイナミックサウンドヤマハアルティメット」を装備する。拡大
「ダイナミックサウンドヤマハアルティメット」は12個のスピーカーと2つのパワーアンプを搭載。サービスホールにカバーを付けるなど、ヤマハのオーディオ採用に合わせてドアパネルの内部設計をやり直している。実際にこれまでとはまるで違う解像度のサウンドが楽しめる。
「ダイナミックサウンドヤマハアルティメット」は12個のスピーカーと2つのパワーアンプを搭載。サービスホールにカバーを付けるなど、ヤマハのオーディオ採用に合わせてドアパネルの内部設計をやり直している。実際にこれまでとはまるで違う解像度のサウンドが楽しめる。拡大

テスト車のデータ

三菱アウトランダーPエグゼクティブパッケージ

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4720×1860×1750mm
ホイールベース:2705mm
車重:2140kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.4リッター直4 DOHC 16バルブ
フロントモーター:交流同期電動機
リアモーター:交流同期電動機
エンジン最高出力:133PS(98kW)/5000rpm
エンジン最大トルク:195N・m(19.9kgf・m)/4300rpm
フロントモーター最高出力:116PS(85kW)
フロントモーター最大トルク:255N・m(26.0kgf・m)
リアモーター最高出力:136PS(100kW)
リアモーター最大トルク:195N・m(19.9kgf・m)
タイヤ:(前)255/45R20 101W/(後)255/45R20 101W(ブリヂストン・アレンザ001)
ハイブリッド燃料消費率:17.2km/リッター(WLTCモード)
EV走行換算距離:102km(WLTCモード)
充電電力使用時走行距離:102km(WLTCモード)
交流電力量消費率:227Wh/km(WLTCモード)
価格:659万4500円/テスト車=708万0590円
オプション装備:ボディーカラー<ムーンストーングレーメタリック×ブラックマイカ>(11万円)/電動パノラマサンルーフ(14万3000円) ※以下、販売店オプション 前後ドライブレコーダー+ETC2.0車載器<スマートフォン連携ナビゲーション接続用>(15万1030円)/フロアマット<5人乗り用>(5万6760円)/トノカバー(2万2000円)/三角表示板(3300円)

テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:2044km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター

三菱アウトランダーPエグゼクティブパッケージ
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