骨肉の争いへと発展!? 「エステート」発売で「クラウン」4兄弟の勢力図はどう変化するのか
2025.04.30 デイリーコラムエステート登場前夜の販売順位
2025年3月13日に「エステート」が発売されたことで、いよいよ計4種類のボディータイプがすべて出そろった新型「トヨタ・クラウン」シリーズ。最も早いタイミングで登場した「クラウン クロスオーバー」の発売から3年近くの時間が経過したことで、最近は同じ「クラウン」と名がつくモデルのなかでも、人気の高低が比較的はっきりしてきたように思う。直近の販売台数データからそれぞれの人気順を確認するとともに、人気・不人気の理由を推測してみることにしよう。
まずエステートが発売される前、クロスオーバーと「スポーツ」「セダン」の3タイプがそろって販売されていた2024年のボディータイプ別販売台数は、以下のとおりであった。
- クロスオーバー:1万6980台
- スポーツ:3万5700台(ハイブリッド車:3万1930台/プラグインハイブリッド車:3770台)
- セダン:9420台(ハイブリッド車:8850台/水素燃料電池車:570台)
ボディータイプ別でダントツに数が多いのがスポーツで、クロスオーバーの販売台数はその約半分。そしてセダンはさらにその約半分ということになる。パワーユニット別でみると、プラグインハイブリッド車と水素燃料電池車の販売台数は一般的なハイブリッド車のざっくり10分の1前後といったニュアンスだ。
セダンの販売台数が少ないのは「想定の範囲内」といったところだろう。新型クラウンシリーズにおけるセダンの役割は「拡販のための切り込み隊長」ではなく「文鎮」のようなもの。トヨタもセダンに対しては「どっしり構えて、シリーズ全体の“重し”になってくれればそれでよし」と考えているはずであるため、この台数と順位にも特に問題はない。
いぶし銀 VS. ニューヒーロー
そして切り込み隊長の役割を担ったクロスオーバーの登場から1年2カ月遅れで登場したスポーツが最も売れているというのも、これまた想定の範囲内であるはずだ。世の中全体は今なおSUV全盛の時代が続いているため、いかにも分かりやすい「ザ・スポーツSUV!」であるスポーツが、「セダンのような、それでいてSUVでもあるような」という玉虫色の存在であるクロスオーバー以上に売れるのは必然というほかない。
個人的には玉虫色のクロスオーバーこそが絶妙な存在であると感じているが、分かりやすいモノのほうが売れるのは当然であり、なおかつスポーツは「これまでのあしき(?)クラウン像」を、クロスオーバー以上の派手さでもってぶっ壊した「分かりやすいニューヒーロー」という側面もある。玉虫色の貢献者であるクロスオーバーも相変わらず月販1300台前後のペースでいぶし銀的に売れ続けているが、分かりやすくスポーツ万能(に見える)なヒーローが、民衆からシブいいぶし銀の2倍以上の支持を集めるのは当然であろう。
だが2025年3月に第4のモデルであるエステートが登場した今、クロスオーバーの立場は若干危うくなっているのかもしれない。
首筋が寒くなるのはクロスオーバー!?
2025年3月度のエステートの販売台数はハイブリッド車が370台で、プラグインハイブリッド車が70台。「少な!」と思うわけだが、エステートが発売されたのは3月13日であり、3月に登録された計440台のほとんどは、おそらくはディーラーの試乗車。そこに、ごくごく少数の一般ユーザー向け車両が交じっている程度の数字であろう。エステートのユーザー向けデリバリーが本格化するのは、もう少し時間がたってからだ。
そんなクラウン エステートの初速は悪くなく、ハイブリッド車に関しては3月中に早くも受注停止とした販売店もあったもよう。そしてエステートが売れるのも、当然といえば当然だ。
こちらも実はクロスオーバーと同様に玉虫色の存在で、車名はクラウン エステートだが、トヨタの公式サイトでは「SUV」として扱われている。つまり新型クラウン エステートとは、以前のそれのような純然たるステーションワゴンではなく「ステーションワゴンとSUVのクロスオーバー」とでもいうべき存在なのだ。そしてどちらかといえば、SUVに軸足を置いているクルマであるように思える(だからこそトヨタも、これを「SUV」として扱っているのだろう)。
セダンとSUVのクロスオーバーである(その名も)クロスオーバーも、もちろん魅力的な一台ではある。しかし時代の趨勢(すうせい)がSUVに完全に傾き、セダンの世界的な斜陽も続いている今、「SUVっぽいセダン=クロスオーバー」を選び続けるのは一部の好事家にとどまり、一般的なユーザーは初回車検を機に「ステーションワゴンっぽいSUV」であるエステートに乗り換えることも予想される。そしてディープなセダン愛好家は、当然ながら「SUVっぽいセダン」ではなくセダンを選ぶ。
そうなった場合、「最も人気が高いのは分かりやすいスポーツ」という構図は変わらないと思われるが、2番人気はエステートとなり、クロスオーバーはセダンと同様の「文鎮」的なポジションになるか、あるいは「文鎮はセダンだけで十分」と判断された場合、モデル消滅の憂き目にあう可能性もある。
先ほども申し上げたとおり、個人的にはクロスオーバーこそを「絶妙!」と思っている。そのためこれからもいぶし銀的に売れ続けてほしいと願っているが、今後1~2年間の数字が、クロスオーバーの命運を決めることになるだろう。
(文=玉川ニコ/写真=トヨタ自動車/編集=藤沢 勝)

玉川 ニコ
自動車ライター。外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、自動車出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。愛車は「スバル・レヴォーグSTI Sport R EX Black Interior Selection」。
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