メルセデス・ベンツCLクラス/Sクラス【海外試乗記(前編)】
自動車を生み出した存在として(前編) 2010.09.30 試乗記 メルセデス・ベンツCLクラス/Sクラス新開発のV8、V6エンジンが、メルセデスのトップレンジ「CL」「S」に搭載された。大柄なボディと小
さくなった心臓のマッチングはいかに? 南仏カンヌで試乗した。
燃費を大幅に改善
クリーンディーゼル、ハイブリッド、そしてCGI。メルセデス・ベンツのパワートレインが、環境問題への対処を旗印に大きく進化している。そしていよいよ、その流れがトップレンジに波及してきた。最高級クーペの「CLクラス」、そして旗艦「Sクラス」への新エンジンの搭載だ。
「CL500(日本ではCL550と呼ばれる)ブルーエフィシェンシー」、そして「S500(同S550)ブルーエフィシェンシー」の新たな心臓となるのは、V型8気筒4.7リッター直噴ツインターボユニット。そして「S350ブルーエフィシェンシー」に積まれるのは、V型6気筒3.5リッター直噴自然吸気ユニットである。第3世代のスプレーガイデッド直噴システムを搭載したこれらのエンジンシリーズは、「BlueDIRECT」テクノロジーと総称される。
スペックを見るとV型8気筒ユニットは、現行の5.5リッター自然吸気の最高出力388ps、最大トルク54.0kgmから同435ps、71.4kgmへと大幅にパフォーマンスを高めながら、燃費はEU複合モードで、実に23%減の9.5リッター/100km(約10.5km/リッター)へと改善させている。これはエンジン自体はもちろん、補機類やエアコン、パワーステアリングなどの高効率化、さらにはスタート/ストップ(アイドリングストップ)機能、低転がり抵抗タイヤ、そしてエネルギー節約型とされたABC(アクティブボディコントロール)といった、さまざまな要素が相まって実現された数値だ。
アイドリングストップを採用
まず試したのは「CL500ブルーエフィシェンシー」である。実際に、その走りっぷりがどれだけ変化を感じさせるのかと言えば、実はコレが案外、代わり映えのしない乗り味だった。ただし、誤解のないように。これは良い意味で言っている。
低中回転域でのトルク感は明らかに従来を上回り、軽く踏み込んだだけで即座に欲しいだけの力を得られるなど、ドライバビリティは確実に向上している。しかし、そもそもメルセデスといえばスロットル特性は穏やかなしつけであり、レスポンスをことさらに強調するものとはなっていない。いずれも力強くスムーズ。でも同じように走らせてみると、たしかに違いを、力強さと走りやすさを感じる。そんな味付けなのだ。
以前の「C」に代わって用意された「E(=ECO)」モードではアイドリングストップ機構が働く。この新機能は再始動時の振動が少ないし、タイムラグも僅少でストレスを感じさせず、上質な運転感覚を損なうこともなかった。
なお「CLクラス」は同時にフェイスリフトを受けた。しかしエンジン以外の変更箇所は多くはない。外観はフロントの特に目元に手が入れられて、表情がより精悍(せいかん)に。LEDドライビングライトも搭載された。ドライバーサポート技術も最新のものにアップデートされている。車線逸脱を防ぐアクティブレーンキープアシスト、後方の死角に車両がいる際の車線変更を抑制するアクティブブラインドスポットアシストは、いずれもステアリングではなくブレーキの介入によって車線からの車両の引き戻しを行うのが大きな特徴。これらは「Sクラス」にも用意される。
「S500ブルーエフィシェンシー」も、基本的な走りに大きな違いはない。いずれにせよ言えるのは、試乗の舞台となったカンヌ市街から地中海沿いを抜ける、クルマに不相応なほど狭い道でも、優れたドライバビリティのおかげで難儀せずに済んだということ。もしかすると、そう感じさせることこそが、この土地を選んだメルセデスの狙いだったのかもしれない。
リーンバーンの○と×
続いては「S350ブルーエフィシェンシー」を試す。最高出力が272psから306psに、最大トルクが35.7kgmから37.7kgmへと向上した新しいV型6気筒3.5リッター直噴エンジンは、燃費もEU複合モードで7.6リッター/100km(約13.2km/リッター)へと大きく向上している。こちらは均質燃焼だけでなく成層燃焼、つまりはリーンバーンによる燃費向上が志向されているのが大きな特徴だ。
動力性能は、こちらも不満はない。特に高回転域まで回した時の吹け上がりのシャープさ、パワーの盛り上がりは気持ち良い。バランサーシャフトを省き摩擦抵抗を低減するためにVバンク角をV型8気筒と同じ90度から6気筒にとって好バランスな60度に変更したことは、こうしたフィーリングの面でもプラスの効果を及ぼしている。
一方で低回転域では時折、スロットル一定でも微妙にトルクが変動するような様子が見受けられた。これは日本未導入の以前のCGIユニットでも感じられた欠点だが、要するに燃焼効率のギリギリのところを攻めているのだろう。音や回転フィールも硬質で、Sクラスに積むとすればもう少しウェットな感触の方が喜ばれそうな気もした。まあしかし、このあたりのことは優れた燃費が確認できれば、十分納得できるのだろう。(後編に続く)
(文=島下泰久/写真=メルセデス・ベンツ日本)

島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
-
フィアット500トリノ ハイブリッド(FF/6MT)【試乗記】 2026.10.13 電気自動車からエンジン搭載車へと華麗に変身! 日本では珍しい、4代目「フィアット500」のマイルドハイブリッドモデルに試乗。1リッターの自然吸気エンジンを6段MTで駆るイタリアンコンパクトは、今のクルマが忘れてしまった楽しさに満ちていた。
-
ボルボES90ウルトラ ツインモーター パフォーマンス(4WD)【試乗記】 2026.10.12 ボルボの電気自動車(BEV)「ES90」のトップモデル「ウルトラ ツインモーター パフォーマンス」を駆り、東京から初秋の新潟へ。往復700kmを超えるロングドライブで分かった新型5ドアハッチバックモデルの実力と、BEVで気になる充電環境のリアルな今を報告する。
-
フェラーリ・プロサングエ ハンドリング スペチアーレ仕様(4WD/8AT)【海外試乗記】 2026.10.8 フェラーリの4ドア4シーターモデル「プロサングエ」に、「ハンドリング スペチアーレ」を名乗るスペシャルバージョンが登場。その走りは従来モデルからどのように変わったのか? 跳ね馬の原産国、イタリアで確かめた。
-
トヨタ・ランドクルーザー“FJ”VX(4WD/6AT)【試乗記】 2026.10.7 新たにシリーズに加わった「ランドクルーザー“FJ”」は、ポップな見た目から簡易版のように思われるかもしれないが、その中身は紛れもなく本物であり、道なき道をグイグイと突き進む。これもまた「どこへでも行き、生きて帰ってこられる」を体現する一台である。
-
スバル・レヴォーグ レイバック プレミアムS:HEV EX(4WD/CVT)【試乗記】 2026.10.6 「スバル・レヴォーグ レイバック」にストロングハイブリッド搭載モデルが登場。高効率なパワーユニットが積まれたのはもちろんのこと、既存の純エンジン車とはデザインやボディーサイズも違っているというから興味深い。上位グレードの「プレミアムS:HEV EX」を試す。
-
NEW
写真で解説する「フィアット・グランデパンダ」
2026.10.16画像・写真ステランティスが「フィアットブランドの大きな柱のひとつとなる重要なモデル」と位置づける「グランデパンダ」が日本上陸。その具体的な見どころを、写真とともに解説する。 -
NEW
フィアット・グランデパンダ ハイブリッド ラプリマ(FF/6AT)【試乗記】
2026.10.16試乗記欧州を代表するコンパクトカーの一台である「フィアット・パンダ」が第4世代に進化。新たに「グランデパンダ」を名乗り、日本にやってきた。ずばり新型の見どころは車両の随所にちりばめられた初代モデルへのオマージュである。上位グレード「ラプリマ」の仕上がりをリポートする。 -
NEW
スズキの未来を徹底検証! 技術戦略説明会から“10年先のスズキの姿”を夢想する
2026.10.16デイリーコラム年間生産500万台で、Dセグメントまでカバーする巨大メーカーに!? スズキが発表した「10年先を見据えた技術戦略2026」を徹底検証。技術開発に製品開発、インドを核としたグローバル戦略などの中身を通して、「10年先のスズキの姿」を予想した。 -
賢い選択 ――キャデラック「LYRIQ」フラットプランのすゝめ――
2026.10.15投資家も太鼓判! 「キャデラック・リリック」×フラットプランという最適解<AD>クルマが変わり、時代も変われば“持ち方”だって変化する? お金のプロである投資家が、「キャデラック・リリック」の残価保証型リースを勧める理由とは? 夢の「2台持ち」をかなえる、最新電気自動車の賢い選び方を考えた。 -
間もなく正式発表 ミツオカの新型2シータースポーツカー「LA1」を予測する
2026.10.15デイリーコラム光岡自動車が2026年11月26日に正式発表を予定しているアメリカンスタイルの新型2シータースポーツカー「LA1」。現在公開されているLA1の画像とティーザーサイトに掲載された情報から、その特徴を分析する。 -
「BYDラッコ」「スズキeスカイ」登場で卍どもえに 軽乗用BEVの覇権はどこが握る?
2026.10.14デイリーコラムこれまで「日産サクラ/三菱eKクロスEV」と「ホンダN-ONE e:」のみだったところに「BYDラッコ」と「スズキeスカイ」が加わり、軽BEV市場がにわかに盛り上がりを見せている。どれもほぼ同じ床面積を持つBEVだが、比べてみるとその中身は結構違う。今後の覇権を握るのはどの陣営か。





































