市街地でハンズオフ運転が可能な市販車の登場まであと1年 日産の取り組みを再確認する
2026.01.15 デイリーコラム2027年発売の日産車に自動運転機能を搭載
日産自動車とWayve社は2025年12月10日、現在開発を進めている次世代の運転支援システム「ProPILOT(プロパイロット)」をより幅広い車種に搭載していくための協業契約を締結したと発表した。Wayveは、英国発の自動運転技術のスタートアップ企業。AI分野のリーディングデベロッパーで、自動車向けのエンボディードAI(身体性を持つAI)技術のパイオニアと紹介されている。現在は日本のソフトバンクグループに属す。
日産とWayveのパートナーシップは、ADAS(先進運転支援システム)の強化とポイント・ツー・ポイント(ある一点から目的地となる一点まで)の高度な自動運転の実現を目指している。両社が共同開発する次世代プロパイロットはすでに開発の最終段階に差しかかっており、日産は2027年の新型車に同システムを実装すると発表している(参照)。
日産がWayveとの共同開発を選択したのは、ADASや自動運転の精度を向上させ、いち早い実用化に推進するためであり、それはすなわちより多くのモデルにこのシステムを採用するためでもある。
そうした流れのなか、日産は2025年9月にWayveの最先端エンボディードAI技術を自動運転に適用したソフトウエア「Wayve AI Driver」と、次世代のLiDARを活用する日産の「Ground Truth Perception」技術を組み合わせた、次世代プロパイロットの開発試作車を公開。報道関係者向けのデモンストレーション走行を東京都内で実施した。
その模様は以前のリポートに詳しいので割愛するが、東京・芝公園をスタートし、新橋や銀座といった繁華街を回りふたたび芝公園に戻ってくるという一般公道で体感した電動SUV「アリア」でのハンズフリー走行は、「自動運転の実用が目の前まで迫っている」という現実を実感するに十分であった。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
スムーズで自然な自動運転の走り
今回デモ走行を行った次世代プロパイロットを搭載するアリアには、11個のカメラと5台のレーダーセンサー、次世代のLiDARが1基積まれていた。次世代プロパイロットは自動運転SAEレベル2に相当する運転支援技術とされる。走行状態に応じて即座に手動操作に切り替えられれば、つまり、いつでもステアリングホイールを握れる態勢さえ整えておけば、一般道でも常時ステアリングホイールから手を離したハンズオフ走行が行える。
自動運転という言葉から、ドライバーが運転にかかわることはほとんどなく、居眠りをしていてもクルマが勝手に設定した目的地にまで連れて行ってくれそうなイメージを抱くが、日産が実装するのはあくまで高度なADAS。わかりやすく自動運転と表現されているにすぎず、あくまでも運転支援技術である。
今回はあらかじめハンズオフ走行が行える車両であることが知らされての同乗走行であったが、これがもしも何のインフォメーションもなく単にリアシートに乗せられただけであったのなら、よもや人が運転に携わらない走行とは思わなかっただろう。たしかに、路上駐車のクルマが多く横断歩道がない場所で歩行者が道を横切ろうとするカオスな裏道ではスピードも上がらないので、「注意深く安全運転するドライバーなのかな?」程度には思ったかもしれないが、それほどまでになんともスムーズで自然な走りだったのだ。
こうしたベテランドライバーもかくやと思える洗練された運転を披露した次世代プロパイロットのキモとなるのが、Wayve AI Driverである。
安心で安全な走行にも寄与
WayveのAIは、人間の認知や行動プロセスの洞察に基づき、車両に搭載したカメラの画像データを解析。従来の自動運転で重要とされていた高精度地図に頼ることなく、周囲の状況変化を把握しながら走行する。また、走行過程における学習に重きを置くのも特徴だ。リアルワールドでの走行経験を蓄積し、AIは次に起こることや車両の動きが及ぼす影響を予測しながらスロットルとステアリングをコントロールする。つまり、走れば走るほど経験を積み、予測精度がアップするということである。
初期の自動運転車では、スロットルとステアリングワークがどことなくぎくしゃくし、自動運転以前にスムーズな運転技術を身につけてほしいと思ったこともあるが、アリアに搭載された次世代プロパイロットの車両コントロールは、すでに熟練したベテランドライバーのそれである。
例えば、横断歩道のある交差点で次世代プロパイロットのアリアが右折、前方の対向車両が左折しようとしているシーンでは、横断歩道の歩行者がアリアの後方から前方の左折車両に向かって歩いていることを検知し、歩行者がアリアを通り過ぎ左折車両に近づいたと判断するや、ひと足先に右折を完了させる。また、縁石にホイールをヒットせずに通れるかどうか躊躇(ちゅうちょ)しそうな車両と歩道の間も、車幅以上の間隔を検知するやあっさりと通過する様子などには感心するしかない。
混雑した街なかや複雑な都市の道で、ルートを間違える不安を抱えたり自転車や歩行者を気にしたりしながら走るのであれば、360°の視界を持つクルマに運転を任せたほうがストレスなく安全かもしれないと感じた。高齢者もクルマを移動手段として使い続けられるかもしれない。
ドライバーが寝ていてもスイッチ一つで目的地まで勝手にクルマが走ってくれるような自動運転はまだ先の話だと思うが、身近な走行時に安全性が向上するのなら、まずはそのメリットを歓迎したい。日産とWayveの協業は、こうした先端技術を想像よりも早く普及させる可能性を秘めている。
(文=櫻井健一/写真=日産自動車、webCG/編集=櫻井健一)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |

櫻井 健一
webCG編集。漫画『サーキットの狼』が巻き起こしたスーパーカーブームをリアルタイムで体験。『湾岸ミッドナイト』で愛車のカスタマイズにのめり込み、『頭文字D』で走りに目覚める。当時愛読していたチューニングカー雑誌の編集者を志すが、なぜか輸入車専門誌の編集者を経て、2018年よりwebCG編集部に在籍。
-
間もなく正式発表 ミツオカの新型2シータースポーツカー「LA1」を予測するNEW 2026.10.15 光岡自動車が2026年11月26日に正式発表を予定しているアメリカンスタイルの新型2シータースポーツカー「LA1」。現在公開されているLA1の画像とティーザーサイトに掲載された情報から、その特徴を分析する。
-
「BYDラッコ」「スズキeスカイ」登場で卍どもえに 軽乗用BEVの覇権はどこが握る? 2026.10.14 これまで「日産サクラ/三菱eKクロスEV」と「ホンダN-ONE e:」のみだったところに「BYDラッコ」と「スズキeスカイ」が加わり、軽BEV市場がにわかに盛り上がりを見せている。どれもほぼ同じ床面積を持つBEVだが、比べてみるとその中身は結構違う。今後の覇権を握るのはどの陣営か。
-
電動化された新型「A110」の登場はいつ? 来日したアルピーヌのクリエフCEOに未来戦略を聞く 2026.10.12 アルピーヌのフィリップ・クリエフCEOが来日し、現在推進している戦略を報道関係者に説明した。なかでも気になったのは電動化された新型「A110」と、「A110Rウルティム」に相当する特別な超高性能モデルの存在だ。その内容とは?
-
パナソニックが市販カーナビを終売! 巨人の撤退からカーエレクトロニクスの変化を読み解く 2026.10.9 パナソニックが、市販市場向けカーナビゲーション、ドライブレコーダー、リアビューカメラの終売を発表! カーエレクトロニクス界の巨人は、なぜ市場からの撤退を選んだのか? 変化し続けるマーケットの在りようを振り返り、車載機器の未来を考察した。
-
「アプライドD」で何が変わった? スバルの「インプレッサ」と「クロストレック」の進化を探る 2026.10.8 スバルが「インプレッサ」と「クロストレック」の改良モデル「アプライドD」を発表した。モデルライフの折り返し地点となる今回の改良では、ラインナップの刷新がトピック。その内容とスバルの狙いを、スバリスト玉川ニコ氏が解説する。
-
NEW
「BYDラッコ」「スズキeスカイ」登場で卍どもえに 軽乗用BEVの覇権はどこが握る?
2026.10.14デイリーコラムこれまで「日産サクラ/三菱eKクロスEV」と「ホンダN-ONE e:」のみだったところに「BYDラッコ」と「スズキeスカイ」が加わり、軽BEV市場がにわかに盛り上がりを見せている。どれもほぼ同じ床面積を持つBEVだが、比べてみるとその中身は結構違う。今後の覇権を握るのはどの陣営か。 -
NEW
第132回:軽EVのデザインを考える(前編) ―「スズキeスカイ」にみる“大衆車メーカー”スズキのスゴみ―
2026.10.14カーデザイン曼荼羅希代の凡作か? 実はすべてが計算のうちか? スズキ初の軽乗用電気自動車「eスカイ」の造形を、カーデザインの識者と考察。つかみどころのないイメージの背景にある、“大衆車メーカー”スズキの慧眼(けいがん)に思いをはせた。 -
先進のSUV「エクストレイル」という選択
2026.10.13SUVのフロントランナー 日産エクストレイルの魅力に迫る<AD>4代・四半世紀にわたって進化を重ね、SUVブームのなかでも開拓者であり続けてきた「日産エクストレイル」。その先進技術がもたらす“乗ればわかる喜び”とは? 最新世代の到達点について、詳しくリポートする。 -
自動運転はこの先10年でどこまで進化できる?
2026.10.13あの多田哲哉のクルマQ&A自動車業界において、再び話題になる機会が増えてきた「自動運転」。この先はどのように進化・普及するのか。既存の先進運転支援システムで十分ではないのか? 元トヨタの車両開発者、多田哲哉さんの見解を聞いた。 -
フィアット500トリノ ハイブリッド(FF/6MT)【試乗記】
2026.10.13試乗記電気自動車からエンジン搭載車へと華麗に変身! 日本では珍しい、4代目「フィアット500」のマイルドハイブリッドモデルに試乗。1リッターの自然吸気エンジンを6段MTで駆るイタリアンコンパクトは、今のクルマが忘れてしまった楽しさに満ちていた。 -
ボルボES90ウルトラ ツインモーター パフォーマンス(4WD)【試乗記】
2026.10.12試乗記ボルボの電気自動車(BEV)「ES90」のトップモデル「ウルトラ ツインモーター パフォーマンス」を駆り、東京から初秋の新潟へ。往復700kmを超えるロングドライブで分かった新型5ドアハッチバックモデルの実力と、BEVで気になる充電環境のリアルな今を報告する。









































