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プジョー5008 GTハイブリッド アルカンターラパッケージ(FF/6AT)

本音と建前 2026.04.04 試乗記 渡辺 敏史 プジョーの「5008」がフルモデルチェンジ。デザインがガラリと変わったのはご覧のとおりだが、3列・7シートを並べるシャシーも新設計。パワートレインには1.2リッターのマイルドハイブリッドを選んでいる。果たしてその乗り味やいかに?
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ボディーサイズが拡大

プジョー5008はこの新型で3代目となる。初代はヒンジドアの3列シート・7人乗りピープルムーバーだったが、2代目で兄弟車の「3008」が明確なSUV志向になったことに伴い、そのストレッチ版ともいえる3列・7人乗りSUVへと変貌を遂げた。新型でもこのコンセプトは踏襲している。

が、変わらず兄弟的な位置づけとなる3008がまったく新しいxEV用アーキテクチャーとなる「STLAミディアム」を採用したのに伴い、新型5008もアーキテクチャーから全面刷新された。車格は先代に対してひと回りは大きくなり、「GLC」や「X3」といったプレミアムDセグメントの寸法感にほど近くなった。それに乗じてホイールベースも2900mmと60mm延ばされ、有効室内長も大きくなっている。荷室容量はシートアレンジによって増減があるが、前型と大差ないとみて構わないだろう。

5008は……というよりも欧州車は後席(2列目)の分割が3座同等という仕立てが多いが、新型5008の場合、席幅に明確なプライオリティーが設けられており、分割可倒も4:2:4と標準的な仕様になっている。スライドは6:4の割り付けとなるが、量は最大150mmを確保しており、左右をずらすことにより荷室の使い勝手を高めたり居住性を高めたりとさまざまにアレンジを加えられる。3列目のシートは形状が前型より立体的になりホールド感を高めるなどしているが、それを完全格納して得られる荷室形状は欧州車あるあるで幅方向に広くはないので、キャディーバッグのような長さのあるものをカッチリと収めるというわけにはいかない。

新型「プジョー5008」は第3世代。国内でのラインナップは基本的に「GTハイブリッド」のみで、それにアルカンターラのシート表皮を加えた豪華版が「GTハイブリッド アルカンターラパッケージ」(今回の試乗車)だ。
新型「プジョー5008」は第3世代。国内でのラインナップは基本的に「GTハイブリッド」のみで、それにアルカンターラのシート表皮を加えた豪華版が「GTハイブリッド アルカンターラパッケージ」(今回の試乗車)だ。拡大
ボディーの全長は4710mmで、先代よりも170mmも長くなった。ただしホイールベースの延長分は60mmにとどまる。
ボディーの全長は4710mmで、先代よりも170mmも長くなった。ただしホイールベースの延長分は60mmにとどまる。拡大
シャシーは「3008」と同じ「STLAミディアム」を使う。BEV化前提なので「E-3008」などにも展開できるが、「E-5008」の国内導入予定はないという。
シャシーは「3008」と同じ「STLAミディアム」を使う。BEV化前提なので「E-3008」などにも展開できるが、「E-5008」の国内導入予定はないという。拡大
フロントフェンダーにはフラットデザインのプジョーエンブレムが貼られる。
フロントフェンダーにはフラットデザインのプジョーエンブレムが貼られる。拡大
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排気量ダウンで燃費性能向上

パワートレインは1.2リッター3気筒ターボをベースとする48Vのマイルドハイブリッドとなる。昨今、日本においてはステランティスのコンパクト~ミドルクラスを走らせる中核のユニットだ。エンジン本体は先代「208」から投入されたEB2系の第3世代となり、タイミングベルトもチェーンに置き換わっている。加えてバルブタイミングのコントロールによる簡易的なミラーサイクル化が施されるなど、マイルドハイブリッド仕様に向けてのさまざまな適正化が図られた。

エンジン本体は最高出力136PS/最大トルク230N・mを、48Vモーターは22PS/51N・mを発生し、システム総合出力は145PSとなる。燃費はWLTCモード値で18.4km/リッター。先代5008の後期型ではおなじみの2リッター4気筒ディーゼルを搭載していたが、そのスコアが16.6km/リッターだったことに鑑みれば、額面上の環境性能的な整合性はみてとれる。

前席まわりの内装造作は、多くを3008シリーズと共有している。ハンドル位置によるつくり分けに金を食いそうなアシンメトリックな造形だが、兄弟でシェアしてコスト分散させているのだろう。かなりモダナイズされた印象ながら、意匠そのものは前型からの文脈にあることは見比べてみれば分かる。プジョーは2020年にチーフデザイナーが交代しているが、現任のマティアス・ホッサンは前任の描いた未来志向を否定するのではなく、より先鋭的にエンハンスしているようだ。

フロントマスクはグリルのような部分とボディーをグラデーションでつないだところが秀逸だ。ヘッドランプからはライオンの爪痕がモチーフのデイタイムランニングライトが伸びている。
フロントマスクはグリルのような部分とボディーをグラデーションでつないだところが秀逸だ。ヘッドランプからはライオンの爪痕がモチーフのデイタイムランニングライトが伸びている。拡大
リアセクションは「ハイエース」もかくやの絶壁に切り落とされている。テールゲートオープナーはナンバープレートの上のスリットの奥にあるため、雨の日などはちょっと扱いづらい。
リアセクションは「ハイエース」もかくやの絶壁に切り落とされている。テールゲートオープナーはナンバープレートの上のスリットの奥にあるため、雨の日などはちょっと扱いづらい。拡大
運転席と助手席は高いセンターコンソールで仕切られており、どちらも包まれ感の強い空間だ。プジョーならではの「i-Cockpit」によりステアリングよりもだいぶ高い位置に液晶メーターが据えられる。
運転席と助手席は高いセンターコンソールで仕切られており、どちらも包まれ感の強い空間だ。プジョーならではの「i-Cockpit」によりステアリングよりもだいぶ高い位置に液晶メーターが据えられる。拡大
2つのスクリーンを合わせてプジョーでは21インチパノラミックカーブドディスプレイと呼んでいる。継ぎ目の部分にもアイコンを並べているため、実際に一枚に見える。
2つのスクリーンを合わせてプジョーでは21インチパノラミックカーブドディスプレイと呼んでいる。継ぎ目の部分にもアイコンを並べているため、実際に一枚に見える。拡大

1.2リッターで大丈夫?

いくらマイルドハイブリッドとはいえ、大本は1.2リッター3気筒だ。この車格を引っ張るのはさすがに荷が重いのでは……と思いきや、総じて平時の動力性能に著しい見劣りは感じなかった。同系にして同出力のパワートレインを搭載する「2008ハイブリッド」に対すれば重量は実に400kgほど重い計算になるが、そこはモーターのアシストによるところも大きいのだろう。実際、発進~低速域ではググッと押し出されるようなトルクの太さが伝わってくる。このマイルドハイブリッドシステムの総合トルクはどのモデルでも数値的には公表されていないが、5008の車重に対する力感から推するに、単純な足し算の281N・mとはいわずともほど近いアウトプットは出ている、そんな力感だった。

が、さすがに高速の合流や坂道などではアクセルの踏量が大きくなってしまうのは致し方ない。1.7t余りを145PSで引っ張り倒して上手にスピードを乗せていくというのは、ラテンのクルマ好きな方々にはごちそうプレイだと思うが、大人数に大荷物を載せて余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)と……はさすがに高望みとなる。他メーカーと同様、政治的な思惑に経営計画を振り回されたステランティスは直近でパワートレイン戦略の見直しの真っただ中だが、特に5008のような車格やユーティリティーのクルマに対しては何かしらの策が望まれるだろう。

乗り味についてはいい意味で想像を覆された。というのも、先だって同じSTLAミディアムの「E-3008」(参照)に試乗した際に、そのセンシティブな動きにプジョーらしからぬところを感じていたからだ。5008はマイルドハイブリッド&ロングホイールベースと、剛性的にはE-3008よりも不利な要素が多いわけだが、そこがかえってうまく働いていたのかもしれない。比べれば乗り心地ははっきりと丸くしなやかで、高速巡航でもおおらかな時間を過ごすことができる。「i-Cockpit」コンセプトのインターフェイスはE-3008と変わらずで収まりの悪さは感じるものの、ワインディングロードのようなシチュエーションでも振る舞いにかったるさはみじんもなく、むしろ挙動のニュートラルさなどは明らかにこちらのほうが好印象だ。

パワーユニットはシステム全体で最高出力145PSを発生するマイルドハイブリッドの1.2リッター3気筒ターボエンジン。パワフルではないが、街乗りではさほど問題は感じられなかった。
パワーユニットはシステム全体で最高出力145PSを発生するマイルドハイブリッドの1.2リッター3気筒ターボエンジン。パワフルではないが、街乗りではさほど問題は感じられなかった。拡大
「アルカンターラパッケージ」のシート表皮はテップレザーとアルカンターラの組み合わせ。沈み込みが少なく、着座感はちょっと固めだ。
「アルカンターラパッケージ」のシート表皮はテップレザーとアルカンターラの組み合わせ。沈み込みが少なく、着座感はちょっと固めだ。拡大
「アルカンターラパッケージ」では後席にもシートヒーターを装備。写真は座面のスライド機構によって奥を一番前に、手前を一番後ろにしたところ。前席との兼ね合いにもよるが、一番前にすると大人が座るのは難しい。
「アルカンターラパッケージ」では後席にもシートヒーターを装備。写真は座面のスライド機構によって奥を一番前に、手前を一番後ろにしたところ。前席との兼ね合いにもよるが、一番前にすると大人が座るのは難しい。拡大
3列目は2人乗り。サイズ自体はミニマムながら、きちんと前の2列と同じ表皮を使っている。
3列目は2人乗り。サイズ自体はミニマムながら、きちんと前の2列と同じ表皮を使っている。拡大

決断が難しい時代だけど

E-3008に乗った際に抱いた、われわれが思い描くオールドスクールなフランス車らしさやプジョーらしさというのは、この先はっきりとシトロエンが担うことになる、そして当の本人にとってその期待値は重荷でしかないのかもしれない……というもやもやした思いは、この5008に乗って霧散とまではいかずともちょっと晴らされた感がある。

時のダイムラー会長だったディーター・ツェッチェが電動化や先進運転支援など次の10年の要素技術を「CASE」と称したのが2016年のこと。そしてトヨタの豊田章男社長(当時)が自動車業界を鳥瞰(ちょうかん)して100年に一度の大変革期と称してから8年がたつ。個別の答え合わせをするまでもなく、両者の唱えた予報は肌感として読者の方々にも伝わるところだろう。

OEMはそういう建前と自我を貫くという本音とをうまいこと両建てしていかなければならない。5008もまた、そういう苦悩の上にある。でもどちらかといえば本音が勝っているかなと思えるところに、好感を抱くことができた。

(文=渡辺敏史/写真=郡大二郎/編集=藤沢 勝/車両協力=ステランティス ジャパン)

足まわりはフロントがストラットでリアがトーションビーム。こんなワインディングロードで走らせても印象はよかった。
足まわりはフロントがストラットでリアがトーションビーム。こんなワインディングロードで走らせても印象はよかった。拡大
ダッシュボードの「i-Toggle」と呼ばれる小さなタッチスクリーンには好みの機能のショートカットを登録できる。アイコンが大きく、操作に対する反応も素早い。
ダッシュボードの「i-Toggle」と呼ばれる小さなタッチスクリーンには好みの機能のショートカットを登録できる。アイコンが大きく、操作に対する反応も素早い。拡大
3列目使用時の荷室容量は259リッター。サイドシルが広いシャシーのため、同車格のモデルに比べると横幅が物足りない。
3列目使用時の荷室容量は259リッター。サイドシルが広いシャシーのため、同車格のモデルに比べると横幅が物足りない。拡大
3列目シートは床下に格納できる。この状態の荷室容量は748リッターとされる(2列目のスライド次第で変わる)。
3列目シートは床下に格納できる。この状態の荷室容量は748リッターとされる(2列目のスライド次第で変わる)。拡大

テスト車のデータ

プジョー5008 GTハイブリッド アルカンターラパッケージ

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4810×1895×1735mm
ホイールベース:2730mm
車重:1740kg
駆動方式:FF
エンジン:1.2リッター直3 DOHC 12バルブ
トランスミッション:6段AT
エンジン最高出力:136PS(100kW)/5500rpm
エンジン最大トルク:230N・m(23.5kgf・m)/1750rpm
モーター最高出力:22PS(16kW)/4264rpm
モーター最大トルク:51N・m(5.2kgf・m)/750-2499rpm
システム最高出力:145PS(107kW)
タイヤ:(前)225/55R19 103V XL/(後)225/55R19 103V XL(ミシュランeプライマシー)
燃費:18.4km/リッター(WLTCモード)
価格:599万円/テスト車=607万3670円
オプション装備:なし ※以下、販売店オプション サードシート用フロアマット(5600円)/ドライブレコーダー<V263A>(5万9950円)/ETC1.0車載器(1万6060円)/電源ハーネス(2060円)

テスト車の年式:2026年型
テスト開始時の走行距離:1239km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(6)/山岳路(2)
テスト距離:349.0km
使用燃料:30.9リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:11.3km/リッター(満タン法)/11.6km/リッター(車載燃費計計測値)

プジョー5008 GTハイブリッド アルカンターラパッケージ
プジョー5008 GTハイブリッド アルカンターラパッケージ拡大
 
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渡辺 敏史

渡辺 敏史

自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。

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