第866回:買った後にもクルマが進化! 「スバル・レヴォーグ」に用意された2つのアップグレードサービスを試す
2026.04.17 エディターから一言スバルが2023年に開始したクルマのアップグレードサービス。その中身が、ついにハードウエアの領域にもおよぶことに。足まわりを強化する「ダイナミックモーションパッケージ」と静粛性を高める「コンフォートクワイエットパッケージ」で、現行型「レヴォーグ」はどのように変わるのか? その効能を確かめた。
購入後にもマイカーを“進化”させられる
「車両購入後も、長きにわたってお客さま一人ひとりに最良の安心と愉(たの)しさを提供し続けたい」という考えから誕生したという「SUBARU UPGRADE SERIVICE(スバル・アップグレードサービス)」。そこに2026年4月17日に追加されたのが、ダイナミックモーションパッケージとコンフォートクワイエットパッケージだ。これらを装着したスバル・レヴォーグに試乗し、その効能を体感する機会を得た。
結論から申し上げると、今回追加された2つのパッケージは、ともにお値段以上の恩恵を感じられるものだった。特にダイナミックモーションパッケージは、現行レヴォーグが純正状態ですでに備えているスポーツワゴンとしての特性をさらに高めたいというユーザーなら、導入を積極的に検討するべきと思われた。
まずは、そのダイナミックモーションパッケージから説明しよう。既報のとおり、このパッケージはVN型(つまり現行)レヴォーグのフロントサスペンションロアアームを、「WRX S4」と同様のピロボールブッシュを用いたタイプに変更するとともに、タイロッドエンドをSTIコンプリートカーにも使われている“力をいなす”湾曲タイプに変更。さらに、ハンドリングに寄与する連結部分の締め付けトルクを最適化し、ホイールアライメントの点検と調整も行うというものだ。これにより、VN型レヴォーグが持つ快適な乗り心地はそのままに、“WRX S4並みのハンドリング”が実現されるというのがうたい文句だ。
まずは、ダイナミックモーションパッケージを装着していない、素のレヴォーグに軽く試乗する。グレードは、1.8リッターターボエンジンに電子制御ではないほうのダンパーを組み合わせた「スマートエディションEX」だ。
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オン・ザ・レールでミズスマシのように旋回する
筆者が私物として乗っている2.4リッターターボのレヴォーグと比べると、1.8リッターターボ車はすべての感触が軽快で、これはこれで、ステアリングの手応えやリニアリティー、および一般道での回頭性にはなんの問題もない。いや「問題ない」というよりは「素晴らしい」というべきレベルであり、正直、ここからなにをどう“アップグレード”できるのか、筆者には皆目わからない。
皆目わからないまま、ダイナミックモーションパッケージ装着車に乗り換えてみる。こちらのグレードは「GT-H」だが、これも先ほどの非装着車と同様、「1.8リッターターボ+電子制御ではないほうのダンパー」という仕様である。走行3万km台の、群馬ナンバー車だ。
東京・恵比寿のスバル本社から出発して10mほども走ると、さっそくステアリングの手応えが大きく異なっていることに気づく。重い、という表現は少し違うが、なにやら重厚な手応えを明確に感じるのだ。そして、一般道での車線変更や交差点での右左折にも、なんというか「スッといく」というニュアンスがある。
市街地での手応えに期待を高めつつ、首都高速に上がる。タウンスピードとは違う次元の車速で、そこそこな湾曲のカーブにアプローチし、必要な減速を行ったうえで回頭を開始すると、そこはまさにオン・ザ・レールの世界だった。ダイナミックモーションパッケージを装着していなくとも、VN型レヴォーグはコーナリング時のオン・ザ・レール感がきわめて強いクルマだが、同パッケージを装着したGT-Hは、イメージ的には3割増しほどのオン・ザ・レール感を、3割増しほどの速度で実現できていたのだ。
「こ、これは……」と、よい意味で絶句しながら、高い車速でのレーンチェンジも試してみる。その際の姿勢、挙動はほとんどミズスマシ。あるいは“ほぼWRX S4”だ。車体の後部に大きく重い荷室があるということ、そしてレヴォーグというクルマが意図的に、WRX S4よりややマイルドに味つけされていることを、試乗中の筆者はほぼ失念し続けていた。確かにこれは、宣伝文句にたがわぬ“WRX S4並みのハンドリング”であり、また“アップグレード”である。
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爪で突いただけでも違いがわかる
もうひとつのパッケージであるコンフォートクワイエットパッケージも、なかなかのモノだった。
こちらは要するに、カーオーディオ専門店などに依頼して施工してもらう、いわゆる“デッドニング”のワークス版(?)だ。車体各所に吸音材と制振材を追加することで、車内に入り込む騒音を低減させ、オーディオの音響特性も改善させる。違うのは、同パッケージではそれがワークスチューン的に行われることだ。
街の専門家や市井のオーナーが、経験則だけで制振材等を配置するのではなく、レヴォーグというクルマをつくったメーカー自身がシミュレーション解析を行い、最も効果的な部位に吸音材と制振材を配置している。そのため、当然ながら吸音・制振効果が高く、なおかつ車両重量増加も最小限に抑えられる……というのが売りなのだ。
なるほど確かに、同パッケージ装着車のルーフを爪や指関節などでコンコンとたたいてみると、車内で聞こえる音は非装着車とはまるで別物だ。軽量化がいき過ぎた近ごろのクルマは、レヴォーグに限らず、ルーフに雨粒が当たるとカンカン、ガンガンと盛大な音を立てるものだ。しかし、これであれば雨の日の信号待ちでも興ざめせずに済みそうである。
走りだしても、タイヤが発するロードノイズや高速走行時の風切り音が、非装着の試乗車や筆者のマイカーと比べて、明確に小さい。定量化は難しいが、イメージとしては2~3割減といったところだろうか。
加えてカーオーディオの、特に低音がまったく異なって聞こえるのも実感できた。非装着車で音源を再生した際には、バスドラムの音が「ぼわんっ、ぼわんっ」という具合にやや弛緩(しかん)して聞こえたが、コンフォートクワイエットパッケージ装着車では、「ドッ、ドッ」というタイトでソリッドな低音がそのまま聞こえてきたのだ。
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この値段でこの効能はスゴい
VN型レヴォーグを対象車種とするコンフォートクワイエットパッケージの料金は、税込み8万0300円(部品代3万0800円+標準工賃4万9500円)。後述するダイナミックモーションパッケージよりはお値段が手ごろなこともあってか、発表1カ月での申込件数は、こちらが2倍ほどとのことだ。確かに、約8万円でこれだけコンフォート&クワイエットな環境が手に入るのなら、「やってみたい」と考えるユーザーは多いだろう。そして筆者としては、多くの人が「やってよかった!」という感想になるのではないかと推測する。
いっぽう、WRX S4並みのハンドリングを実現させるダイナミックモーションパッケージの施工料は、税込み13万2000円(部品代8万8000円+標準工賃4万4000円)。このほかに車検証記載変更届費用がかかる。
こちらに関しては、レヴォーグという万能車のなかのスポーツワゴンとしての特性を、より先鋭化させたいと考えるユーザーなら、13万円以上のコストをかけてでも行う価値があると考える。これだけのオン・ザ・レール感とミズスマシ感を、自動車メーカーがワークス的な立場で仕立ててくれる料金としては、このお値段は破格といっていい。
ただそのいっぽうで、WRX S4と同じピロボールブッシュを用いたフロントサスペンションは、「硬さ」を感じさせるわけでは決してないが、タウンスピードや幹線道路程度のスピードでは、よくも悪くも路面からの入力をコツコツと正直に拾う。そのため、万能車であるレヴォーグのなかでも“快適なステーションワゴン”としての側面は、若干ながらスポイルされることになる(念のため書き添えておくと、高速道路ではコツコツ感はほとんどなくなり、きわめてフラットかつ快適な走りに変わる)。
そこをどうとらえるかは、現役ユーザーまたはユーザー予備軍であるアナタ次第である。スバルも、だからこそ「あくまでも選択肢のひとつ」として今回のパッケージをリリースしたのだ。
とにかく、価値観やクルマの楽しみ方は人それぞれではあるものの、「自分はVN型レヴォーグのなかの“スポーツワゴンとしての側面”こそが大好きなのだ!」という方には猛烈におすすめできるのが、今回のダイナミックモーションパッケージである。
(文=玉川ニコ/写真=郡大二郎/編集=堀田剛資)
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玉川 ニコ
自動車ライター。外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、自動車出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。愛車は「スバル・レヴォーグSTI Sport R EX Black Interior Selection」。
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