ディフェンダー110ハードトップX-DYNAMIC SE D350(4WD/8AT)
一番ぜいたくなディフェンダー 2026.06.13 試乗記 写真を見ていつもの「ディフェンダー」とはどこか違うと思われた方は鋭い。このクルマは1ナンバー、つまり商用車登録の「ディフェンダー・ハードトップ」である。全長約5mのボディーに備わるシートは前の2座のみ。広大な荷室を使いこなす生活を思い描いてみた。1ナンバーのディフェンダー
見た目では違いが分からない。筋骨隆々の堂々たるボディーと、どこか愛嬌(あいきょう)のある表情を持つ超人ハルクのようなおなじみのディフェンダーである。だがバックドアを開ければ、ぽっかりと大きな洞穴のような荷物室が広がるのみ。フロントシートとの間は天井までの壁で区切られており(小さな格子窓付き)、いわゆるアルパインウィンドウ(天窓)は残されているが、リアドアガラスの内側もパネルでふさがれているために薄暗く、倉庫あるいは護送車の雰囲気である。ディフェンダーシリーズに追加されたハードトップは定員2人、最大積載量400kgの商用車登録(1ナンバー)となることが最大の特徴である。
定評のある悪路走破性のみならず、オンロードでの快適性も併せ持つ高級SUVに生まれ変わったディフェンダーだが、そもそもは第2次大戦直後の物資不足のなかで、あらゆる過酷な場所でさまざまな用途に応えるための質実剛健なワークホースとして誕生したことはご存じのとおり。ランドローバー一族のなかで最も忠実にその遺伝子を受け継いでいたディフェンダーながら、2019年にモデルチェンジした現行型は兄貴分の「レンジローバー」さながらに洗練されており、さらに今では「オクタ」という超高性能モデルまでラインナップしており、働くクルマの泥臭さはまるで感じられないが、やはりこういう仕様を必要とする人もいるということなのだろう。
このスペースをどう使う?
「ハードトップ」といわれてもピンとこない人がほとんどだと思うが、大昔の「ランドローバー」(ディフェンダーの名前がつくずっと前から)には同じ名前の商用モデルが設定されており(ダブルキャブピックアップもほろ仕様もあった)、それに倣ったものという。実態は真っすぐな商用「バン」である。外観は通常の「110」シリーズと変わりないが、前述のとおりシートはフロントの2席のみで、ボディー後部はしっかり区切られた荷室となっている。
ただし、荷物室の容量の数字だけを見ると、ハードトップの2059リッター(ウエット。ドライでは1719リッター)は普通の5人乗り110の最大2277リッター(ドライ1875リッター)よりむしろ小さい。おそらくいかにも頑丈そうなパーティションというか隔壁が後方に湾曲しているためと思われるが(そのぶん前席シートの背後には物を置ける余裕がある)、床がまっ平で四角い倉庫のような空間のおかげで実際に荷物を詰め込む際には便利そうだ。ちなみに、ランドローバーがいうウエットとは液体を満たした場合の容量で、ドライはVDA式同様1リッターのボックスを積み重ねて測った数値である。
さらに本来2列目シートのフロアにあたる部分には鍵付きのアンダーフロアボックス(155リッター)が設けられており、その上に荷物が積んである状態でも、サイドのリッドがあるおかげてリアドアを開けて出し入れすることができる。また最後部にもアンダーフロアボックス(58リッター)が備わる。
ディーゼルの110のみ
ディフェンダー・ハードトップは5ドアの110ボディーのみ(本国には「90」のハードトップもあり)。パワートレインは自慢の3リッター6気筒ディーゼルターボ+マイルドハイブリッドに8段ATの組み合わせ。350PS/4000rpmと700N・m/1500-3000rpmの最高出力と最大トルクなど基本スペックは他のモデルとまったく同じである。ちなみに「インジニウム」6気筒ディーゼルターボは2025年モデルからパワーアップされ(それまでは300PSと650N・m)、「D350」と名づけられた。
これまでも繰り返してきたが、このエンジンは直6ディーゼルターボのお手本ともいうべき滑らかさを備えている。スムーズでたくましく、打てば響くピックアップも申し分ない。しかも48Vのマイルドハイブリッドシステムも備わっているから、アイドリングストップからの再始動も静かで滑らかなうえに、動きだしも当然素早い。ずうたいのでかい4WDを動かすディーゼルターボだからしょうがないよ、と普通なら諦めなければならない振動や騒音、レスポンスの鈍さ等々、その種の我慢がまったく必要ない。
実際に走ると同じD350のディフェンダー110よりも何だか身軽で加速レスポンスも若干鋭いように感じたのだが、あらためて車重を見比べてみるとそれほどの違いがあるわけではなかった。カタログ値の車重はハードトップが2410kg、いっぽう110の5人乗りエアサスペンション仕様は2450kgとわずかに違うだけである。ご承知のようにディフェンダーには豊富なオプションが用意されており、その有無によって車重もかなり変わる。このハードトップにもエアサスペンションパック(35.2万円)をはじめ、ヘッドアップディスプレイ(12.1万円)やオフロードパック(23.7万円)、固定式サイドステップ(ディーラーオプション/約24万円)など総額162万円余りのオプションが備わっており、重量だけでなく金額(車両本体価格は1028万円)も当然かさむ。
使いこなす生活に憧れる
巨大な荷物室が付いてくるハードトップでも走行性能や乗り心地などは決して商用車然としているわけではなく、それどころかこの種のSUVのなかでは他の110と変わらずトップレベルである。とはいえ、2人乗りで1000万円オーバー、しかも繰り返すがハードトップは普通貨物車登録の1ナンバーである。1ナンバーは税金が安い代わりに車検は初回2年、以降は毎年受けなければならず、高速道路料金も乗用車に比べて割高になるから、一般人が自家用として日常使用するにはハードルが高いと思われる。
付け加えると、ボディー全周を捉えるカメラは完備しているとはいえ、後部サイドの窓はすべてふさがれているので斜め後方視界はなし、格子窓を通して見るルームミラー(カメラ映像に切り替え可能)の後方視界も絶望的だからその点は注意が必要だ。広大な領地か山林でも所有していれば別だが、普通に考えればこのクルマを使いこなせる人はごく限られるだろう。
それでも、このハードトップを泥だらけにして乗り回すカントリーライフには素直に憧れる。ディフェンダーが一番カッコいいのは野山の中である。
(文=高平高輝/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝/車両協力=ジャガー・ランドローバー・ジャパン)
テスト車のデータ
ディフェンダー110ハードトップX-DYNAMIC SE D350
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4945×1995×1970mm
ホイールベース:3020mm
車重:2410kg
駆動方式:4WD
エンジン:3リッター直6 DOHC 24バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:8段AT
エンジン最高出力:350PS(258kW)/4000rpm
エンジン最大トルク:700N・m(71.4kgf・m)/1500-3000rpm
モーター最高出力:17.7PS(13kW)/5000rpm
モーター最大トルク:42N・m(4.3kgf・m)/2000rpm
タイヤ:(前)255/55R19 114H M+S XL/(後)255/55R19 114H M+S XL(グッドイヤー・ラングラー オールテレインアドベンチャー)
燃費:--km/リッター
価格:1028万円/テスト車=1190万7390円
オプション装備:ボディーカラー<ウールストーングリーン>(0円)/エアサスペンションパック(35万2000円)/Wi-Fi接続<データプラン付き>(3万8000円)/ワイヤレス充電なし(0円)/19インチフルサイズスペアホイール(0円)/19インチ“スタイル6010”ホイール<グロススパークルシルバーフィニッシュ>(10万7000円)/ヘッドアップディスプレイ(12万1000円)/キャビンウオークスルー<センターコンソールなし>(0円)/スペアホイールロック<3スポーク>(1万8000円)/ホイールロックナット(1万円)/コールドクライメートパック(11万3000円)/オフロードパック(23万7000円)/コントラストルーフ<ホワイト>(0円)/ドライバーアテンションモニター(4万2000円)/アダプティブオフロードクルーズコントロール(6万9000円)/12ウェイ電動フロントシート<ヒーター&クーラー、メモリー、2ウェイマニュアルヘッドレスト付き>(13万6000円)/スペアホイールカバー<ボディー同色>(8万2000円) ※以下、販売店オプション ドライブレコーダー(6万1710円)/ブラックフィクスドサイドステップ110用一式(24万0680円)
テスト車の年式:2026年型
テスト開始時の走行距離:771km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:238.7km
使用燃料:25.1リッター(軽油)
参考燃費:9.5km/リッター(満タン法)/9.8km/リッター(車載燃費計計測値)

高平 高輝
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