ホンダ・シビックe:HEV RS(FF)
間違いのない爽快感 2026.07.25 試乗記 高速道路から山道へとステージを変えながら、「シビック」の追加モデル「e:HEV RS」に試乗。そのキーテクノロジーは、疑似有段ギア制御システム「ホンダS+シフト」だ。ベースとなったハイブリッド車や、同じS+シフトを搭載する「プレリュード」との違いを確かめた。シビックにもホンダS+シフトを搭載
2026年6月、ホンダ・シビックのマイナーチェンジのタイミングで、ハイブリッドのe:HEVにスポーティー仕様のRSが加わった。
現行の11代目シビックのモデルラインナップを簡単に振り返ると、まず2021年のフルモデルチェンジでは1.5リッター直4ガソリンエンジン仕様が設定された。2022年夏に2リッター直4エンジンとハイブリッドシステムを組み合わせたe:HEVが加わり、同年秋に「タイプR」も刷新される。
2024年秋のマイナーチェンジでは、1.5リッター直4ガソリンターボと6段MTを組み合わせた「RS」が追加される。そして今回のマイチェンでe:HEVのRSが加わり、エンジン車でもハイブリッド車でもRSが選べるようになった。
e:HEV版RSの大きなトピックは、プレリュードで好評を得たホンダS+シフトが採用されたこと。乗用車全体だと約6割、シビックに限ると約7割をハイブリッド車が占めるようになった現状を受けて、電動モデルでもスポーティーなドライビングが楽しめるとアピールすることが、ホンダS+シフトを搭載するシビックe:HEV RSの役割だという。
ヘッドランプを囲むリングやバンパー下部のガーニッシュが黒くなり、専用の18インチホイールもマットブラックにペイントされるなど、標準仕様よりも精悍(せいかん)で引き締まった印象を与えるシビックe:HEV RSに乗り込む。アルファベットの「D」を左に90度回転させた形状、つまりボトムがフラットなステアリングホイールはプレリュードと同じアイテムだ。シートやドアの内張りに施された赤いステッチもヤル気にさせてくれる。
シフトセレクターの下にホンダS+シフトのスイッチがシルバーに輝いているのを確認して、試乗をスタートする。
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ナチュラルなステアリングフィール
まずはホンダS+シフトをオフの状態で走り出す。ここで真っ先に気づくのは、足まわりにスポーティーなセッティングを施したRSとはいえ、乗り心地が全然悪くなっていないことだった。資料によれば、ダンパー、スプリング、スタビライザーが強化され、標準モデルに比べるとロール剛性が11%アップしているとのことだけれど、乗り心地は洗練されていて、路面の不整も「タン、タン、タン」と爽やか&軽やかにクリアする。
この報道関係者向け試乗会では、ハイブリッドの標準仕様である「シビックe:HEV EX」とプレリュードも比較参考車両として用意され、ほぼ同じ条件で直接乗り比べることができた。シビックe:HEV EXと乗り比べると、確かにハーシュネスと呼ばれる路面からの突き上げは、少しだけRSのほうが角がとがっている印象だ。いっぽうでRSは、不整を乗り越えた後にスパッと上下動が収まり、ステアリングホイールを通じてタイヤと路面の関係が手のひらにくっきりと伝わってくる。
ほんわかしたEXと、すっきりしたRS。乗り心地のキャラクターははっきりと分かれている。特に速度域が上がったり、ワインディングロードに入ったりするとキャラの違いはさらに明確になり、これは好みの問題でもあるけれど、余分な動きが少ないRSに好感を抱く。RSのほうが、運転していて心地よく感じる。
ハンドリングもRSのほうが正確で、ほんのわずかな操舵に対しても繊細にタイヤが向きを変えてくれる。しかも鋭いハンドリングに見せかけようという、ちょこっと切ったらスパッとタイヤが向きを変えるというあざとい演出ではなく、ごくナチュラルなフィーリングであることもうれしい。
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進化した疑似エンジンサウンド
続いてホンダS+シフトのスイッチをプッシュ。するとプレリュードと同じように、無段変速機である電気式CVTが、仮想の8段トランスミッションに変身する。なぜ仮想かといえば、基本モーター駆動であり、
ホンダS+シフトを起動すると、シフトパドルを操作しなくても疑似的なシフトアップとシフトダウンを行う。この変速時に車内に響くエンジン音の変化は、どこかで聞き覚えがある……と記憶をたどると、難なく思い出した。つい数日前もプレーした、「プレイステーション」のドライビングゲームっぽい音なのだ。
こう書くと、おもちゃっぽいのか、と思われる方も多いかもしれない。いや、初めて聞いた瞬間は率直に言って、ちょっとおもちゃっぽいと感じた。けれども5分とたたないうちに、そうした違和感は消えて、音を聞くのが楽しくなっていった。
理由のひとつは、アクティブサウンドコントロールによる音づくりが、よく練られているからだろう。標準仕様にあたるシビックe:HEV EXのアクティブサウンドコントロールでは、左右のフロントドアにスピーカーを設置している。対してRSは、そこにダッシュボード中央スピーカーとリアのウーハーを加えて、マルチスピーカー化している。結果として、低回転域から中回転域を経て高回転域へと至る過程の音の盛り上がり、言い換えればドラマ感が、RSのほうがリニアに感じられるのだ。
あるいは、最初に「おもちゃっぽい」と感じたのは、つくられた音だという先入観があったせいかもしれない。ホンダの開発陣によれば、音量やシフトダウン時のブリッピングの大小についてはそれぞれに好みがあり、試行錯誤しながら丁寧に開発を行ったという。
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ワンアクションで戦闘態勢
ホンダS+シフトの操作が楽しいと思えたのは、音が織りなすドラマのほかに、当然ながら素早くキレのよい変速にも理由があった。シフトアップにしろシフトダウンにしろ、エンジンだけでなくモーターでも駆動するハイブリッドの特徴を最大限に生かして、シームレスに変速するのだ。
クールな手ざわりの金属製シフトパドルを操作すると、“電光石火で疑似変速”する。特に、コーナーに進入する際に「バフン、バフン」というシフトダウンで減速すると、エンジン回転が跳ね上がるのと同時に明瞭な減速Gが立ち上がって、テンションが上がる。この音と減速Gのコラボによる興奮は、ドライビングゲームでは経験できないものだ。
興味深いのは、シフトパドルを操作しない通常走行時のDレンジにおけるホンダS+シフトの働きだ。ドライバーがどんな運転をするのかを察知して変速のアルゴリズムを調整する「スポーツアダプティブ制御」が、予想よりはるかに巧みに機能している。
例えばワインディングロードで少しアグレッシブに走らせると、車速、前後左右のG、アクセル開度などからドライバーのヤル気を判断して、シフトダウン時のブリッピングを大胆に演出。コーナーの途中でシフトアップを行わず、低いギアをホールドして走るようになる。逆にのんびり走ると、ブリッピングは控えめになり、むやみに低いギアで引っ張るのではなく、タン、タン、タンとスムーズにシフトアップするようになる。
比較車両として用意されたプレリュードとのDレンジにおけるセッティングの違いは明確で、シビックe:HEV RSの場合は、「INDIVIDUAL」「SPORT」「NORMAL」「ECON」のどの走行モードで走っていても、ホンダS+シフトのスイッチを押すと「SPORT」モードに切り替わり、ホンダS+シフトがオンの状態になる。いっぽうのプレリュードは、その時点で選択している「INDIVIDUAL」「SPORT」「GT」「ECON」それぞれの走行モードで、ホンダS+シフトがオンになる。
つまりシビックe:HEV RSはワンアクションで戦闘態勢に入るということである。プレリュードは、約150万円の価格差は考慮しなければならないものの、走行モードによっては穏やかな乗り心地のままホンダS+シフトを楽しめる。選択肢の幅が広いのは断然プレリュードのほうだ。
価格の話を続けると、シビックe:HEV RSが465万9600円であるのに対して、シビックe:HEV EXは444万8400円と、20万円ちょっとしか変わらない。乗り心地の好き嫌いはあるにせよ、これだけの内容でこの価格差を考えると、RSはお値打ちといって間違いないだろう。
(文=サトータケシ/写真=花村英典/編集=櫻井健一)
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テスト車のデータ
ホンダ・シビックe:HEV RS
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4560×1800×1415mm
ホイールベース:2735mm
車重:1470kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
エンジン最高出力:141PS(104kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:182N・m(18.6kgf・m)/4500pm
モーター最高出力:184PS(135kW)/5000-6000rpm
モーター最大トルク:315N・m(32.1kgf・m)/0-2000rpm
タイヤ:(前)235/40R18 95Y XL/(後)235/40R18 95Y XL(グッドイヤー・イーグルF1アシンメトリック6)
燃費:24.0m/リッター(WLTCモード)
価格:465万9600円/テスト車=480万8100円
オプション装備:ボディーカラー<ソニックグレー・パール>(3万8500円) ※以下、販売店オプション フロアカーペットマット<プレミアム>(5万2800円)/ドライブレコーダー<前後カメラセット>(5万7200円)
テスト車の年式:2026年型
テスト開始時の走行距離:1668km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター

サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
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