ビモータKB998リミニ(6MT)
サーキットの至宝 2026.07.31 試乗記 ビモータのスーパースポーツ「KB998リミニ」にサーキットで試乗! イタリア職人の手によるフレームに、カワサキの強心臓を搭載した一台は、いかなる走りを見せてくれるのか? クローズドコースだからこそ体験できたマシンの真価に迫る。ビモータ復活の象徴
イタリアの名門ビモータが、本気で世界の頂点を目指して送り出したKB998リミニ。スーパーバイク世界選手権(WSBK)を戦うファクトリーマシンを、そのまま公道仕様に仕立てたような世界限定500台の特別なモデルだ。その国内試乗会が、千葉県の袖ケ浦フォレストレースウェイで開催された。
ビモータは、1970年代にイタリアで誕生したシャシーメーカーで、自社製エンジンを持たず、日本の4メーカーやドゥカティ、BMWなどの高性能エンジンを独創的な車体に組み合わせることで数々の名車を送り出してきた。「BIMOTA」という社名は3人の創業者、ヴァレリオ・ビアンキ、ジュゼッペ・モリ、マッシモ・タンブリーニの姓に由来する。ロードレース世界選手権やマン島TTレースなどで活躍し、先述したタンブリーニを含め、多くの名フレームビルダーを輩出したことでも知られる。
しかし、その歴史は順風満帆ではなかった。何度も経営危機を経験し、ブランドの存続が危ぶまれた時期もある。そんなビモータがふたたび世界へ挑戦する転機となったのが、2019年に発表されたカワサキとの資本提携だった。その象徴として誕生したのがKB998リミニである。「K」はカワサキ、「B」はビモータ、「リミニ」は創業の地を意味し、その車名には復活への強い思いが込められている。
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「ニンジャZX-10RR」をビモータ流に昇華
心臓部を担うのは、「カワサキ・ニンジャZX-10RR」譲りの998cc水冷DOHC直列4気筒エンジンだ。世界最高峰のレースで鍛えられたユニットだけに、低中速の力強さと高回転まで鋭く吹け上がる爽快感を高い次元で両立している。ライディングモードやトラクションコントロール、コーナリングABS、ウイリーコントロール、クイックシフターなど、最新の電子制御もフル装備だ。
一方で、車体は完全なビモータオリジナル。アルミ削り出しプレートとクロモリ鋼トレリスフレームを組み合わせた可変剛性フレームを採用し、剛性としなやかさを絶妙なバランスで両立している。サーキットに合わせて特性を変更できるという凝った設計も見どころだ。
さらに、走行状況に応じて角度を自動制御する可変ウイングレットや、専用アルミスイングアーム、SHOWAのフルアジャスタブルサスペンション、そしてブレンボのハイエンドブレーキと、装備は徹底して本格派。ドライカーボン製の外装やアルミの削り出しパーツ、美しい溶接まで、細部からもビモータらしいクラフトマンシップが伝わってくる。
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1周で「これは普通じゃない」と分かる
ピットロードを出た瞬間から、このマシンが普通ではないことが伝わってくる。ライディングポジションはレーシーながら窮屈さはなく、自然にフロントへ荷重が乗る。タンクまわりとの一体感も高く、「もっと走らせてほしい」とバイクが語りかけてくるようだ。
ウオームアップを終えてメインストレートでアクセルを全開にすると、7000rpmあたりから一気に加速が鋭さを増し、1万rpmを超えると景色が一変する。吸排気音が重なり合う迫力は圧倒的で、クイックシフターも失速感ゼロのまま次の加速へつないでくれる。200PSの最高出力を誇る直4エンジンの実力はもちろんだが、それ以上に印象的だったのは、強烈なパワーを違和感なく受け止める車体との一体感だ。
高速コーナーでは倒し込みが驚くほど自然で、狙ったラインへと吸い込まれていく。フロントタイヤの接地感や路面のグリップも分かりやすく、安心してバンク角を深められる。走行中にウイングレットを見る余裕はないが、その効果は確実に感じられた。旋回中にアクセルを開けても姿勢は乱れず、リアタイヤがしっかり路面を蹴って立ち上がる。電子制御が優秀なのはもちろんだが、それ以上にシャシーそのものの完成度が高く、余計な修正舵をほとんど必要としない。攻めるほど安心感が増していくあたりに、長年にわたりフレームづくりを磨いてきたビモータらしさを感じた。
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珠玉のサーキット体験を味わえる
周回を重ねるうちに、700万円近い価格を忘れるほど走りに夢中になっていく。フルバンクから立ち上がり、鋭く減速して次のコーナーへ向かう一連の流れが自然で、ついつい右手が大きく動いてしまう。確かに性能だけで言えばZX-10RRも世界最高峰の一台だ。しかしKB998リミニは、その卓越した性能をビモータならではの感性で磨き上げている。速さだけでなく、曲がる楽しさ、操る喜び、そして所有する満足感までが高いレベルで融合しているのだ。
エンジンの刺激も強烈で、レスポンスが非常にダイレクト。一方でタイトコーナーではライダーの技量がそのまま表れる繊細さも併せ持っている。乗り手次第でさらに奥深い魅力を引き出せるところも、ハンドメイドビルダーであるビモータらしい。ちなみに、以前試乗した「ZX-10R」(残念ながらRRではない)は、高速域で抜群の安定感を見せる一方、タイトコーナーではやや大柄な印象も受けた。それに対してKB998リミニは、同じ系統のエンジンを積みながら、ハンドリングはだいぶ異なる味つけになっている。
カワサキが磨き上げたパワーユニットと、ビモータが半世紀かけて培ってきた車体づくりの哲学。その見事な融合は、サーキットで走らせてこそ真価を発揮する。ビモータ復活の狼煙(のろし)として、これほどふさわしいモデルはないだろう。ヘルメットを脱いだ後も、高回転で響き続けた直4サウンドと、狙ったラインを寸分違わず駆け抜けた感触が、しばらくは体に残っていた。
(文=佐川健太郎<ケニー佐川>/写真=望月勇輝/編集=堀田剛資)
【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=2085×862×1205mm
ホイールベース:1455mm
シート高:830mm
重量:207kg
エンジン:998cc 水冷4ストローク直列4気筒DOHC 4バルブ(1気筒あたり)
最高出力:200PS(147.1kW)/1万3600rpm
最大トルク:111N・m(11.3kgf・m)/1万1700rpm
トランスミッション:6MT
燃費:--km/リッター
価格:693万円

佐川 健太郎(ケニー佐川)
モーターサイクルジャーナリスト。広告出版会社、雑誌編集者を経て現在は二輪専門誌やウェブメディアで活躍。そのかたわら、ライディングスクールの講師を務めるなど安全運転普及にも注力する。国内外でのニューモデル試乗のほか、メーカーやディーラーのアドバイザーとしても活動中。(株)モト・マニアックス代表。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。
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