ホンダがコンセプトモデル「アキュラ・ネクセラ ビジョン」を発表 次世代デザインを読み解く
2026.09.03 デイリーコラム次世代アキュラのデザイン言語を提案
自動車における「デザイン言語」とは、ブランドごとに共有する共通の造形ルールやモチーフを指す。例えばレクサスは、長らく上下に台形を組み合わせた紡錘(ぼうすい)形状の「スピンドルグリル」をデザイン言語として受け継いできた。これが「レクサスLBX」あたりから変化。グローバルでは通算5世代目にあたる「RX」からは、完全に従来のフロントグリルとは一線を画す、スピンドルグリルからメッキ枠をなくしグリルとボディーパネルがグラデーションのように一体化したデザインに進化した。最新の「RZ」や「ES」もこの延長線上にあり、レクサスの新しいデザイン言語を受け継いでいることが分かる。
リアでは「L」マークのエンブレムを廃止し、中央に「LEXUS」のバラ文字を配置するのが新世代デザインの特徴だ。これに横一文字のリアコンビネーションランプを組み合わせるのが、最新のレクサス流である。
ホンダが北米を中心に展開しているプレミアムブランドのアキュラは2026年8月13日、同ブランドの次世代デザインの方向性を示すコンセプトモデル「アキュラ・ネクセラ ビジョン」を世界初公開した。開発は米国カリフォルニア州のアキュラデザインスタジオで行われた。プレスリリースによると、ネクセラ ビジョンは「ブランドの基本理念であるチャレンジングスピリットに着想を得て、普遍的な美しさに先進性を融合させた次世代アキュラのデザイン言語を提案するコンセプトモデル」ということになる。細かく見ていこう。
2ドアクーペのボディー形状を持つネクセラ ビジョンは、非点灯時はボディーラインに溶け込み、点灯時にのみランプが現れる「ファントムライティング」を採用している。極薄のヘッドランプおよびテールランプは、アキュラの頭文字である「A」をモチーフにしたライティングシグネチャーだ。AというよりもΛ(ラムダ)を横倒しにした格好である。このライティングシグネチャーは、アキュラ初となる2モーターハイブリッドを搭載し数年以内に発売予定の次期「RDX」を皮切りに、アキュラの次世代ラインナップに採用していくという。
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バタフライドアの採用はある?
エクステリアはワイド&ローのスタンスに加え、ダッシュ・トゥ・アクスル(フロントタイヤの中心からダッシュボードまでの距離)を長くとることで、キャビンを後方に配置したハイパフォーマンスカーならではの伸びやかなプロポーションを実現。ミドシップになる前の「シボレー・コルベット」や「ジャガーEタイプ」などを想起させる、スポーツカーの古典的なプロポーションである。
「デュアルヒンジ式バタフライドアがアキュラのパフォーマンスDNAを大胆に印象づけている」とプレスリリースではアナウンスしているが、実車で採用されるかどうかは半信半疑でいたほうがいいだろう。リアにははやりのバラ文字エンブレムが確認できる。
インテリアは「ドライバーとの一体感と広がり感の融合」がコンセプト。ブラック&ホワイトのカラーを基調に、鮮やかなピンクを差し色に使っている。プレミアムブランドのデザイン提案らしく、製品をつくる段階から再利用を前提に開発を行う「サーキュラーエコノミー」に寄与するサステイナブル素材を採用しているのも特徴だ。
ネクセラ ビジョンのデザインをリードしたのは、ホンダ・ディベロップメント・アンド・マニュファクチャリング・オブ・アメリカのアキュラ・クリエイティブディレクター兼オートデザイン担当副社長 土田康剛氏である。土田氏は「(アキュラの)新たなデザインの方向性では、普遍的な美しさと先進技術を融合。アキュラらしい美しさとパフォーマンスを、新たなかたちで表現することを目指しました」とコメントしている。
デザインがデザイナーについて回る
土田康剛と聞いてピンと来た人がいるかもしれない。筆者もその口で、土田氏はかつてマツダに在籍していたデザイナーである。マツダ時代は2017年の東京モーターショーに出展した「魁コンセプト」や、2019年にデビューした「マツダ3」のチーフデザイナーを務めた人物だ。
フロント中央部のランプやリア中央部のバックフォグ風(あるいはレーシングカーのレインライト風)ランプ、キャラクターラインではなく面の抑揚でグラマラスに見せる表現などは、土田氏がデザインをリードしたとは限らないが、近年のマツダのコンセプトカーを連想させなくもない。フロントノーズに大胆に設けられたスリットは、土田氏とは無関係だろうが1995年の東京モーターショーで公開されたロータリースポーツの「RX-01」を想起させる(「フェラーリ・ルーチェ」よりもむしろ)。
デザインをリードするポジションの人間が変われば、そのブランドのデザインが変わるのは世の常である。良くも悪くも、デザインがデザイナーについて回る事例は、とくに欧州のブランドで顕著。初代「Z4」や初代「1シリーズ」のデザインを指揮したクリス・バングルに替わってBMWのデザインを統括する立場に就任したアドリアン・ファン・ホーイドンクは大型キドニーグリルを推進もしたが、一転、“ノイエクラッセ”の「i3」では横長のグリルにスマートな形でキドニーグリルを統合。「Less, but better(より少なく、しかしより良く)」をテーマにクロームメッキの装飾や物理的なエンブレムを廃止している……。
ネクセラ ビジョンで表現されたデザインがどこまで忠実に量産モデルに反映されるかは実車を見てのお楽しみになる。ただ、アキュラの次世代モデルが、本来ならマツダで花開いていたかもしれない土田テイストに変わるのは間違いない。日本で生活している限りその美しさに触れるチャンスが少ないのは残念だが、土田ファンのひとりとしてはとくに楽しみな動きである。
(文=世良耕太/写真=アメリカン・ホンダモーター/編集=櫻井健一)
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世良 耕太
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