フィアット・プント エヴォ(FF/5AT)【試乗記】
21世紀型エヴォリューション 2010.07.29 試乗記 フィアット・プント エヴォ(FF/5AT)……210.0万円
フィアットのハッチバック「プント」の進化版、その名も「プント エヴォ」が登場。はたして、どこがどれほど良くなったのか?
環境性能の進化
「プント エヴォ」と聞いて、高出力&大トルクのエンジンを搭載したハイパフォーマンスモデルを想像したクルマ好きは、時代の流れを痛感するかもしれない。昨2009年のフランクフルトショーで発表された新しいプントは、「テクノロジー、ドライバビリティ、環境性能などに対して高まるユーザーの要求を満足させるための進化(EVOLUTION)レベル」を表すために「エヴォ」を付けたのだという。エヴォはエヴォでも、“カッ飛び”方向より燃費向上に軸足を置いたエヴォリューションである。
2010年6月1日から販売が開始された日本仕様は、8バルブの1.4リッター(77ps、11.7kgm)に、オートマチックモードをもつ2ペダル式5段MT「デュアロジック」を組み合わせたおとなしいもの。注目の新機能は、停車のたびにエンジンを切って燃費を稼ぐ「スタート&ストップ」システムで、これは欧州の新しい環境基準「ユーロ5」に適合するための工夫のひとつだ。かの地の市街地走行モードでは、最大15%の燃費向上を果たしている。わが国の10・15モードでは、旧型より10%ほどアップした15.7km/リッターがうたわれる。
カタログに「黒」「赤」「白」「青」と4色のボディカラーが載るうち、今回は「アシッド・ジャズブルー」ことブルーメタリックの試乗車が用意された。
ややデコラティブに
新型プントのボディサイズは、全長×全幅×全高=4080×1685×1495mm。旧型比3cm長くなっただけだから実質同寸だ。2510mmのホイールベースも変わらない。「フォルクスワーゲン・ゴルフ」よりやや小ぶりな5ドアハッチである。
新型は、好調の「500(チンクエチェント)」にならって(?)ノーズにメッキのオーナメントが貼られ、少々デコラティブな印象になった。クルマの骨格をいじれないとなるとデザイナーは表面的な変化に頼らざるをえないから、むしろ「よくココでとどまった」というべきか。一方、ブラックアウトされたバンパーで上下に分かれたグリルを視覚的に一体化し、「大口」ばやりのデザイントレンドにニューモデルを乗せている。慣れない目には「豪華」と「スポーティ」の不思議な混合に見えるが、これもまた「新しさの演出」といわれれば、そうなのだろう。
日本市場では、装備によって「プント エヴォ」(205万円)と「プント エヴォ ダイナミック」(230万円)の2グレードがラインナップされる。今回の試乗車はエントリーグレードたる前者だが、「ダイナミック」になるとボディの前後にフォグランプが装備され、リアガラスはプライバシーガラスとなる。ハロゲンヘッドランプの取り付け部が黒く塗られているのも、ダイナミックの特徴だ。ホイール径は標準車と同じ15インチながらアロイホイールとなり、65扁平のタイヤは175から185へと太くなる。
いざ、サイドシルをまたいで、運転席へ。
地道な改良のたまもの
「エヴォ」のシートは、グレーのファブリックに黒のラインが入った地味派手なもの。
走り出すと、電動パワーアシストらしい手応えの足りないステアリングフィールが当初ちょっと気になったが、すぐ慣れた(なお、プント エヴォにも先代同様さらにハンドルが軽くなる「CITYモード」が備わるが、以前ほど極端な軽さではなくなっている)。
感心したのが「デュアロジック」のオートマチックモードで、ドライバーの意思に反することなく順当にギアをチェンジしていき、クラッチのつながりもスムーズだ。デュアルクラッチ式のトランスミッションが登場した際には、こうしたロボタイズド式MTの前途が案じられたが、開発陣の地道な改良が実っている。ストップ&ゴーの多い日本の街中でも、違和感なく運転できる。
ストップ&ゴーならぬスタート&ストップ、注目のアイドリングストップ機構のほうは、もちろん十分に実用的だが、厳しい日本の消費者には「あと一歩のブラッシュアップが必要」と感じられるのではないか。アイドリングが止まった状態でブレーキペダルから足を離す、またはシフトレバーを操作すると即座にエンジンがかかるのだが、アクセルを踏んで発進するときにほんの一瞬出遅れるので、停車/発進が多い路地などでは、気持ちのなかで前につんのめることが多かった。搭載される8バルブ1.4リッターが穏やかなエンジンだから、運転者も心落ち着けたドライブが求められる。
スタート&ストップは、渋滞中10km/h以下での低速運転時や後退時には停車してもエンジンを切らないし、水温やエアコン、バッテリーの状態などをモニターして、システムを稼働するかどうかを判断している。人為的にオフにすることも可能だ。「デュアロジック」同様、今後さらに改良されていくだろう。
スタート&ストップ機構からクルマ全体に目を転じれば、過不足ない動力性能と、それに見合ったソフトな、乗り心地を重視したアシを与えられた実用ハッチである。いかにも「21世紀のエヴォ」と、いえばいえる。ヨーロッパでリリースされている新開発の1.4リッター“マルチエア”エンジン搭載車、もしくはそのターボ版が、20世紀的な価値観によったエヴォかどうかは、まだわからない。それはそれで大いに期待したい。
(文=細川 進(Office Henschel)/写真=D.A)
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細川 進
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