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第3回:四国遍路ってなんだ?(その3)〜どうして私たちは遍路道に出たのか?

2010.07.26 ニッポン自動車生態系 大川 悠
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第3回:四国遍路ってなんだ?(その3)〜どうして私たちは遍路道に出たのか?

歩き遍路は楽じゃない。雨が降ろうが風が吹こうが、毎日毎日20kmも30kmも歩くというのは、ひどく辛い。でも大川悠は、どうしてそんなことを始めたのだろうか?

2009年徳島県鮎食川で休む。
2009年徳島県鮎食川で休む。 拡大
里山に踏み入れる遍路道。
里山に踏み入れる遍路道。 拡大
サンチアゴ・デ・コンポステーラへと向かうスペインの巡礼道。
サンチアゴ・デ・コンポステーラへと向かうスペインの巡礼道。 拡大

人生、次のステージに行ってみよう

「一体どうしてお遍路なんて始めたの?」、先日も、旧知の方々に聞かれた。そのときはそれなりに分かったような返事をしていたが、でも私は本当に、どうしてあんなことを始めたのだろうか?
それは一口では答えにくいし、今でも完全に自分の中で整理できていない。

実は、本当のきっかけは、家内の方がお遍路に行きたいと言い出したからだ。つまり、「牛に引かれて善光寺」ならぬ「カミサンに引かれてお四国へ」というわけだ。最初は、「そんなことイヤだ」と、なんだかんだと抵抗しながらも、結局は一緒に付き合うにいたるまでには、それなりの理由があった。

一番大きな理由は、人生、切り替えてみたい、というか、次のステージに行ってみたいということだと思う。要するに、クルマのライター、エディターとして20代から40年以上続いた人生を、一線から引退をしたのを機に、違った道に送り込んでもいいかなと思ったからだ。

人生一度なら、いろいろなことをやった方が面白い。実は引退をする1年前ぐらい、つまり2005年ぐらいからランニングを始めていた。

40年以上クルマ一筋の生活。仕事での移動はむろん、通勤もちょっとした外出も、何もかもクルマ。都内に住んでいても地下鉄の乗り方も知らない。そんな人間にとって、走ったり歩いたりするなんて、まったく無縁のことだった。

それなのに、60歳になったころ、突如ランニングを始めた。足腰鍛えるにはウォーキングがいいのは知っていたが、あれって何となく年寄り臭くてイヤだった(年寄りだけどね)。それに内心、ランニングがブームになるのではないかという予感があった。はたして、その1年後の東京マラソン開催をきっかけに、ブームは起きるのだけど、それはまた別の話。

今は月に平均150kmほど走り、ランニングをきっかけにできた若い友人たちと一緒に駅伝に出たりもしている。2008年には、家内とローマのフルマラソンも完走して、現役時代とまったく違った世界を知るようになった。足にも自信がついてきた。

歩き遍路への挑戦は、そんな生活の変化の課程で出てきたものだ。

サンチアゴを訪れて

だが、一日で終わるフルマラソンとは違って、歩き遍路ははるかにきつい。来る日も来る日も、40〜50日間は一日25km平均で歩き続けなくてはならない。
でもどうせなら、新しい人生、これに踏み切るにあたっては、生半可なものじゃなくて、高い壁に挑んだ方が面白いのじゃないかと思った。

弘法大師こと空海の本を読んで、その人間の大きさに惹かれた。話に聞くお遍路の魅力にも興味をもった。お遍路経験者が語る四国の自然や、その土地の人たちのやさしさにも触れたかった。

そして2年前、ローママラソンから2ヶ月もたったころ、バスツアーに参加して、世界のもう一つの有名な巡礼道、スペインのサンチアゴ・デ・コンポステーラを訪ねてみた。
スペインでは数多くの巡礼者の姿を目にした。あらゆる国から来た老若男女たち、多くは歩き、また自転車でこの聖なる土地を目指している。その人たちと直接触れ、そして目的地の大聖堂での儀式に参列したとき、巡礼というものの行為に、心を動かされた。

むろん、心の理由もある。誰もがそうであるように、私なりに心の中にはいくつもの課題も願いも抱えていた。60数年間で溜まってしまった汚れも少しは落としたかった。
そう考えると、家内と一緒に、これからの老後生活に踏み切るための、一種の通過儀礼がお遍路挑戦だったのだろう。

かくて2008年秋ぐらいから、半年後の出発を目指して、私たちの四国への用意が始まった。

(文と写真=大川悠)

スペインの巡礼者たち
スペインの巡礼者たち 拡大
スペイン巡礼道の最後の目的がここ。サンチアゴの大聖堂。
スペイン巡礼道の最後の目的がここ。サンチアゴの大聖堂。 拡大
四国遍路の八十八カ所目は、この大窪寺。
四国遍路の八十八カ所目は、この大窪寺。 拡大
大川 悠

大川 悠

1944年生まれ。自動車専門誌『CAR GRAPHIC』編集部に在籍後、自動車専門誌『NAVI』を編集長として創刊。『webCG』の立ち上げにも関わった。現在は隠居生活の傍ら、クルマや建築、都市、デザインなどの雑文書きを楽しんでいる。

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