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第1回:四国遍路ってなんだ?(その1)〜私たちは二度も四国に旅立った

2010.07.12 ニッポン自動車生態系 大川 悠
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第1回:四国遍路ってなんだ?(その1)〜私たちは二度も四国に旅立った

現役時代はクルマにどっぷりつかっていた大川悠(webCG初代エグゼクティブ・ディレクター)が、何を思ったか四国八十八カ所の歩き遍路に挑戦した。しかも2年連続して四国を2周し、合計2400kmを完全に歩き通してきた。長い間クルマの世界に生きてきた人間が、歩く側という立場になったときに、一体何を感じたのか? 日本の自動車をめぐる社会に何を思ったのか? 歩き遍路から見た日本のモータリゼーションをつづる。

金剛づえと菅笠を整え、白衣を着てスタートする。2度目、2010年、一番札所の霊山寺で。
金剛づえと菅笠を整え、白衣を着てスタートする。2度目、2010年、一番札所の霊山寺で。 拡大
遍路とは、果てなく思える道を歩きながら、お寺を巡って納経するという行為だが、歩き疲れたとき、やっと山門が見えてきたときは、いつでもうれしい。44番大宝寺。
遍路とは、果てなく思える道を歩きながら、お寺を巡って納経するという行為だが、歩き疲れたとき、やっと山門が見えてきたときは、いつでもうれしい。44番大宝寺。 拡大

迷故三界城

「迷故三界城・悟故十方空・何処有南北・本来無東西」。四国を歩く遍路がかぶる菅笠(すげがさ)には、こういう文字が書かれている。
迷っていると閉じ込められているように思うけれど、悟ってしまえばすべての世界は空(くう)なのだよ。もともと東西や南北なんていう概念もない。つまり、いったん腹を据えてしまえば、この世は限りなく自由なのだよ、と勝手に解釈できる。

その「空」を求めて四国に出た。2009年3月初旬、私と家内は四国八十八カ所、歩き遍路の旅に出た。
そして52日をかけて1200km少々を完全に歩ききって帰京した後、二人とも何だかちょっと腑(ふ)抜けのようになった。

四国遍路の世界はあまりにも異質だった。私たちはあたかもタイムスリップして、別の時空というか別世界をさまよっているような感じがした。おかげで、東京の日常に戻ったときに、社会適応ができなくなったようでもあった。
東京に戻っても、というか東京に戻るとまた、私たちは三界を城に囲まれているような気持ちになった。

虫のように這いずり回って感じたこと

だから、というわけでもないが、今年2010年の3月になって、性懲りもなくまた私たちは四国に飛んだ。そして再び同じような時間をかけて、あの空間を歩き通してきた。
一度知ったあの世界の魅力に取りつかれてしまったからだが、私としてはもう一つだけ目的があった。1年前、四国を自分の足で歩いたことによって初めて感じたこと、気になったことを、もう一度あの地に行くことで確認し、考え直したかったのだ。

去年歩いたとき、遍路そのものとはまた違った一種のショックを受けた。日本のモータリングの実際を、この年になって初めてストレートに見せつけられたような気がしたのだ。

これまで雑誌やウェブで、モータリングに関してずいぶん、分かったようなことを書き、話してきた私は、四国の道を歩行者として歩き始めたときに、実際は何も知っていなかったことに気がついた。ホント、オレって、60歳をだいぶ過ぎたというのに、これまで一体何やっていたのだろう!

情報や知識としては、一応は分かっていたつもりだった。地方の荒廃や交通弱者のこと、山間部の移動や過疎地における自動車の価値。あるいは地方にとっての高速道路や空港の意味。さらには日本の道路作りや道路標識の問題点など、それなりには考えていたつもりだった。

だが、聞くと見るとでは大違いだった。それもクルマ側の人間としてではなく、歩く遍路から見ると、まったく違って感じられた。地べたを虫のようにはいずり回っている歩行者の立場になって、直接に自動車のある世界を体験、見聞することで、私はまったく新しい目でニッポンモータリングを見、そして考えるようになった。

去年気になった「歩き遍路から見たニッポンモータリングの光と陰」を確認したくて、また今年、また家内とともに、あえてつらく厳しい遍路修行に旅立ったのである。
(続く)

(文と写真=大川悠)

霧の中の五百羅漢像。八十八カ所の寺院の中で、標高900mと一番高いところにある雲辺寺で。
霧の中の五百羅漢像。八十八カ所の寺院の中で、標高900mと一番高いところにある雲辺寺で。
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去年、初めて四国に来て、紅葉マークを付けて働く姿を見たときに、あらためて軽自動車の魅力を知った。これは徳島県で出会ったミツバチの巣箱を運ぶおじいさんのクルマ。
去年、初めて四国に来て、紅葉マークを付けて働く姿を見たときに、あらためて軽自動車の魅力を知った。これは徳島県で出会ったミツバチの巣箱を運ぶおじいさんのクルマ。 拡大
地方はまたエンスーの天国でもある。こんな風景はあちこちで見られる。
地方はまたエンスーの天国でもある。こんな風景はあちこちで見られる。
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大川 悠

大川 悠

1944年生まれ。自動車専門誌『CAR GRAPHIC』編集部に在籍後、自動車専門誌『NAVI』を編集長として創刊。『webCG』の立ち上げにも関わった。現在は隠居生活の傍ら、クルマや建築、都市、デザインなどの雑文書きを楽しんでいる。

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