シトロエンDS3 スポーツシック(FF/6MT)【試乗速報】
艶やかコンパクト 2010.05.31 試乗記 シトロエンDS3 スポーツシック(FF/6MT)……273万7250円
「C3」をベースに個性を強く打ち出したスペシャリティカー「DS3」。「DSライン」シリーズ第1弾となる3ドアコンパクトハッチに試乗した。
「DS」へのオマージュ
「シトロエンDS3」は、2009年11月に欧州でデビューしたコンパクトハッチ「C3」のいわば3ドア版。「DS」は、「Déesse(女神)」ならぬ「Different Spirit」を意味するという。「Surprise(驚き)」「Appeal(魅力)」「Vitality(活力)」が開発時のキーワードだったとか。もともとパーソナルな性格が強い3ドアモデルだが、シトロエンでは新たに「DSライン」と名付けてスペシャル感を強調、別の車種にもDSラインを展開していく予定だ。
DS3のボディサイズは、全長3965mm、全幅1715mm、全高1455mm。5ドアのC3よりわずかに長く(+10mm)、広く(+15mm)、スポーティさを強調するためか全高は75mmも低い。ホイールベースも10mm短縮され2455mmと、スペシャルモデルとしての性格付けは本格的だ。外寸だけで比較すると、マーケットで真っ向からぶつかる「MINI」(全長3700×全幅1685×全高1430mm)が、すっぽり入る大きさだ。
大きく口を開けたグリルの左右には、縦に並べられた6個のLEDライトが点灯する。実用上の必要性は感じられないが、プジョーとのコンポーネンツの共有化が進む昨今のシトロエンゆえ、できるだけ新奇なことに挑戦したほうがいい。このLEDライトは常時オンだが、車幅灯やヘッドランプが点灯すると消える。
C3が「ゼニスフロントウィンドウ」と呼ばれる、前席乗員の頭上を越えて広がるフロントガラスを採用した一方、DS3もウィンドウグラフィックに凝っていて、Bピラーは「シャークフィン」と呼ばれる形状が採られた。しかも上部3分の1はブラックアウトされているので、あたかもルーフが浮揚しているように見える。しかもDS3は、ルーフの色をボディカラーと違った色から選ぶことができる。ルーフを白く塗ってユニオンジャックを描いたMINIを連想する人がいるかもしれないが、新型シトロエンのそれは、もちろん「DS」へのオマージュである。
![]() |
![]() |
![]() |
楽しい色選び
日本のコンパクトカー市場は、97%が国産車。輸入車は、残り3%を分け合っているのが現状だ。その3%のうち39%が「MINI」、26%が「フォルクスワーゲン・ポロ」、11%が「フィアット500」、そして「プジョー207」(9%)、「アルファ・ロメオ ミト」(2%)が後を追う。
プジョー・シトロエン・ジャポンとしては、先代C3の販売がしばらく途絶えていたから、このセグメントへの再参入となる。DS3のようにインパクトがあるモデルは、願ってもないアイテムだろう。実際、C3/DS3が気になってディーラーに足を運ぶユーザーの数が増えているそうだ。
従来のシトロエンディーラーに加え、プジョー販売店の助けも借りて、販売・サービス網の拡充に努めている。C3/DS3の両モデルで、かつての「プジョー206」のような成功を再現させたいところだ。
日本でのDS3の発売は、2010年5月6日。「1.6リッター(120ps、16.3kgm)+4段AT」の「Chic(シック)」と、「1.6リッターターボ(156ps、24.5kgm)+6段MT」の「Sport Chic(スポーツシック)」の2車種で構成される。価格は、前者が249万円、後者が269万円。ライバルと目される「MINIクーパー(6AT)」は270万円、「クーパーS(6MT)」が297万円である。
DS3の楽しいところがカラーバリエーションの豊富さで、ボディ、ルーフ、ドアミラー、さらにアロイホイールやダッシュパネル、シートカラーにもバリエーションが用意される。当初は19種類の組み合わせが提案されるが、受注生産扱いでよりパーソナルなオーダーにも対応するという。
![]() |
若やいだ運転感覚
この日試乗できたのは、1.6リッターターボを積んだ「スポーツシック」。バケット調のスポーティな運転席に座ると、足元にはレーシィな雰囲気のアルミペダルが3つ並ぶ。革巻きのハンドルは、5ドアのC3より小径なタイプ。大きめのシフトノブを握って走り始めると、過給器付きらしい太いトルクで1190kgのボディを力強く動かす。
ツインスクロール式ターボを備えた1.6リッターは、燃料を直接シリンダーに吹くダイレクトインジェクション。連続可変バルブタイミング機構を備え156ps/6000rpmの最高出力と、24.5kgmの最大トルクを1400-3500rpmの広い範囲で発生する。1000rpmから過給が始まり、劇的なターボバンでドライバーを驚かすのではなく、アウトプットをじんわりと加勢するタイプだ。
ダイレクト感が強いマニュアルギアとの組み合わせは痛快で、スタイリッシュな3ドアハッチを運転している高揚感と併せ、なんというか若やいだ気分になる。子供たちが手を離れ、クルマのダウンサイジングを図りたい年配の方にも、ぜひ乗ってみていただきたい。
マクファーソンストラット(前)、トーションビーム(後)というコンベンショナルな形式をもつ足まわりは、5ドアモデルと比較すると明確に硬めだが、快適性を損なうレベルではまったくない。ロールは漸進的で、速めの旋回ではじんわり傾くさまが心地よい。オシャレさんを狙った男性誌なら「艶やかコンパクト」とでも名付けるであろうニューシトロエンである。
(文=細川 進(Office Henschel)/写真=河野敦樹)

細川 進
-
スズキ・エブリイJリミテッド(MR/CVT)【試乗記】 2025.10.18 「スズキ・エブリイ」にアウトドアテイストをグッと高めた特別仕様車「Jリミテッド」が登場。ボディーカラーとデカールで“フツーの軽バン”ではないことは伝わると思うが、果たしてその内部はどうなっているのだろうか。400km余りをドライブした印象をお届けする。
-
ホンダN-ONE e:L(FWD)【試乗記】 2025.10.17 「N-VAN e:」に続き登場したホンダのフル電動軽自動車「N-ONE e:」。ガソリン車の「N-ONE」をベースにしつつも電気自動車ならではのクリーンなイメージを強調した内外装や、ライバルをしのぐ295kmの一充電走行距離が特徴だ。その走りやいかに。
-
スバル・ソルテラET-HS プロトタイプ(4WD)/ソルテラET-SS プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2025.10.15 スバルとトヨタの協業によって生まれた電気自動車「ソルテラ」と「bZ4X」が、デビューから3年を機に大幅改良。スバル版であるソルテラに試乗し、パワーにドライバビリティー、快適性……と、全方位的に進化したという走りを確かめた。
-
トヨタ・スープラRZ(FR/6MT)【試乗記】 2025.10.14 2019年の熱狂がつい先日のことのようだが、5代目「トヨタ・スープラ」が間もなく生産終了を迎える。寂しさはあるものの、最後の最後まできっちり改良の手を入れ、“完成形”に仕上げて送り出すのが今のトヨタらしいところだ。「RZ」の6段MTモデルを試す。
-
BMW R1300GS(6MT)/F900GS(6MT)【試乗記】 2025.10.13 BMWが擁するビッグオフローダー「R1300GS」と「F900GS」に、本領であるオフロードコースで試乗。豪快なジャンプを繰り返し、テールスライドで土ぼこりを巻き上げ、大型アドベンチャーバイクのパイオニアである、BMWの本気に感じ入った。
-
NEW
MINIジョンクーパーワークス コンバーチブル(前編)
2025.10.19思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「MINIジョンクーパーワークス コンバーチブル」に試乗。小さなボディーにハイパワーエンジンを押し込み、オープンエアドライブも可能というクルマ好きのツボを押さえたぜいたくなモデルだ。箱根の山道での印象を聞いた。 -
スズキ・エブリイJリミテッド(MR/CVT)【試乗記】
2025.10.18試乗記「スズキ・エブリイ」にアウトドアテイストをグッと高めた特別仕様車「Jリミテッド」が登場。ボディーカラーとデカールで“フツーの軽バン”ではないことは伝わると思うが、果たしてその内部はどうなっているのだろうか。400km余りをドライブした印象をお届けする。 -
ホンダN-ONE e:L(FWD)【試乗記】
2025.10.17試乗記「N-VAN e:」に続き登場したホンダのフル電動軽自動車「N-ONE e:」。ガソリン車の「N-ONE」をベースにしつつも電気自動車ならではのクリーンなイメージを強調した内外装や、ライバルをしのぐ295kmの一充電走行距離が特徴だ。その走りやいかに。 -
スバルのBEV戦略を大解剖! 4台の次世代モデルの全容と日本導入予定を解説する
2025.10.17デイリーコラム改良型「ソルテラ」に新型車「トレイルシーカー」と、ジャパンモビリティショーに2台の電気自動車(BEV)を出展すると発表したスバル。しかし、彼らの次世代BEVはこれだけではない。4台を数える将来のラインナップと、日本導入予定モデルの概要を解説する。 -
アウディQ5 TDIクワトロ150kWアドバンスト(4WD/7AT)【試乗記】
2025.10.16試乗記今やアウディの基幹車種の一台となっているミドルサイズSUV「Q5」が、新型にフルモデルチェンジ。新たな車台と新たなハイブリッドシステムを得た3代目は、過去のモデルからいかなる進化を遂げているのか? 4WDのディーゼルエンジン搭載車で確かめた。 -
第932回:参加者9000人! レトロ自転車イベントが教えてくれるもの
2025.10.16マッキナ あらモーダ!イタリア・シエナで9000人もの愛好家が集うレトロ自転車の走行会「Eroica(エロイカ)」が開催された。未舗装路も走るこの過酷なイベントが、人々を引きつけてやまない理由とは? 最新のモデルにはないレトロな自転車の魅力とは? 大矢アキオがリポートする。