ルノー・ルーテシア ルノースポール(FF/6MT)【試乗速報】
今のホットハッチの頂点 2009.10.19 試乗記 ルノー・ルーテシア ルノースポール(FF/6MT)……314.0万円
「ルーテシア」に、ファン待望のスポーティバージョン「ルノースポール」が登場。モータースポーツのノウハウがたっぷり注ぎ込まれた、最新ホットハッチの走りを試す。
日本仕様はシャシースポール
新型「ルーテシア・ルノースポール(RS)」に初めて乗ったのは今年7月。場所はフランスだった。日本では同時に発表された「トゥインゴRS」とともに、5日間で1500kmを走破した。予想以上に快適で、しかも楽しく移動できたので、最後は名残り惜しい気持ちになったのだが、だからこそ日本の道でも好印象を抱けるのかという不安を持ちつつ、今回の試乗に臨むことになった。
わが国では3年ぶりの復活となるルーテシアRS、3ドアボディに2リッター自然吸気エンジンを積んだ前輪駆動という基本構成は不変だ。しかしエンジンは連続可変インテークバルブタイミングの採用などにより、最高出力202ps、最大トルク21.9kgmをマーク。リッター100psの壁を突破してしまった。おまけにマニュアルトランスミッションは5段から6段に進化してもいる。
シャシーでは、ハブキャリアをストラットから切り離したダブルアクスルタイプのフロントサスペンションをメガーヌRSに続き導入したことがトピックになる。トレッドを前後とも1520mmと、スタンダードのルーテシアより60/65mmも広げたことも特徴だ。
このシャシーは他のRS同様、快適性を考慮した「シャシースポール」と運動性能優先の「シャシーカップ」の2種類のチューニングが用意される。フランスでは両方に乗ることができたが、その時点でスポールのほうがキャラクターに合っていると思ったので、日本仕様がこちらのみとなるのは納得だ。
フツーじゃないフツーのクルマ
目の覚めるようなグリーンのボディは、グリル内のF1ウイング風スプリッター、ルーバーまで開けたワイドフェンダー、リアディフューザーなど、スーパースポーツ顔負けのディテールが挑戦的。他のホットハッチが一気に色褪せてしまいそうだ。ところがキャビンは、ステアリングのセンターマークとタコメーターのイエロー以外はモノトーンで、クオリティともどもおとなっぽい。
右ハンドルのポジションは違和感なし。ペダル間の段差は左より少なく、より理想的に思えた。それにしてもこのシート、ほんとにスポーツモデル用なのだろうか。完璧なサポートを提供しつつ、座面の厚みはスタンダードのルーテシアを凌ぐほど。歴代RS同様、座り心地でも合格点がつけられる。
そのシートに座り、走り始めた瞬間に思ったのは、いい意味でフツーのクルマというものだった。フランスより流れが遅い日本の道でさえ、乗り心地がすばらしく上質だ。街なかを流していてもサスペンションが自在にストロークし、ショックを丸め込んでしまう。そして速度を上げれば、磐石のフラットライドを届けてくれる。2000rpm以下からでも不満なく加速するエンジンの柔軟性もありがたかった。でも前が開いたところでアクセルを踏み込むと、ルーテシアRSは本性を露にした。
自在に向きを変えられる
自然吸気ならではの抜けのいいサウンドを響かせながら、1240kgのボディをぐんぐん加速させていく。おまけに5000rpmあたりで吹け上がりが鋭くなり、ローギアではその瞬間ホイールスピンを起こすというドラマまで秘めている。上も7500rpmからのレッドゾーンに簡単に飛び込んでしまうので、レブリミットを知らせるアラームとインジケーターに何度もお世話になってしまった。
その勢いのまま箱根の山道でペースを上げたら、雨中の移動がほとんどだったフランスでは味わえなかった、真の魅力がじわじわ押し寄せてきた。
ステアリングはシャシーカップほどクイックではないけれど、正確にインに向いてくれるので不満はない。その後はペースを上げても操舵に対してきっちり反応し、アクセルを開けても外へふくらむことはなく、旋回を続けたまま加速していく。前輪駆動なのに、踏んだまま曲がっていけるのである。
「メガーヌRS」ではターボの爆発力を押さえ込むために存在していたようなダブルアクスルサスペンションが、自然吸気エンジンとのコンビでその真価を発揮したような感じだ。しかも自在に動く足は圧倒的なロードホールディングを見せつけるのに、アクセル操作によっておだやかにスライドし、ドライバーの気持ちどおりに向きを変えてもくれる。
そのときはドライビングに夢中だったので考えもしなかったけれど、冷静になったいま思うのは、現時点でのホットハッチの頂点はこのクルマかもしれないということだ。それが300万円以下で買える。クリスマスプレゼントにしては、ちょっと早すぎじゃないだろうか。
(文=森口将之/写真=郡大二郎)

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
-
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】 2026.3.3 「GRヤリス」の新仕様として設定された「エアロパフォーマンスパッケージ」装着車に試乗。レースフィールドでの知見を交え開発したというエアロパーツの空力・冷却性能は、リアルワールドでも体感可能なのか。高速道路を経由し、郊外のワインディングロードを目指した。
-
ドゥカティ・モンスター(6MT)【海外試乗記】 2026.3.2 ドゥカティのネイキッドスポーツ「モンスター」が5代目にモデルチェンジ。無駄をそぎ、必要なものを突き詰めてきた歴代モデルの哲学は、この新型にも受け継がれているのか? 「パニガーレV2」ゆずりのエンジンで175kgの車体を走らせる、ピュアな一台の魅力に触れた。
-
フォルクスワーゲンID.4プロ(RWD)【試乗記】 2026.2.28 フォルクスワーゲンのミッドサイズ電気自動車(BEV)「ID.4」の一部仕様変更モデルが上陸。初期導入モデルのオーナーでもあるリポーターは、その改良メニューをマイナーチェンジに匹敵するほどの内容と評価する。果たしてアップデートされた走りやいかに。
-
スズキ・キャリイKX(4WD/5MT)【試乗記】 2026.2.27 今日も日本の津々浦々で活躍する軽トラック「スズキ・キャリイ」。私たちにとって、最も身近な“働くクルマ”は、実際にはどれほどの実力を秘めているのか? タフが身上の5段MT+4WD仕様を借り出し、そのパフォーマンスを解き放ってみた。
-
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(4WD)【試乗記】 2026.2.26 日本で久々の復活を遂げた「ホンダCR-V」の新型に、北海道のテストコースで試乗。雪上・氷上での“ひとクラス上”の振る舞いに感嘆しつつも、筆者がドン! と太鼓判を押せなかった理由とは? デビューから30年をむかえたCR-Vの、実力と課題を報告する。
-
NEW
メルセデス・マイバッハSL680モノグラムシリーズ(4WD/9AT)【試乗記】
2026.3.4試乗記メルセデス・マイバッハから「SL680モノグラムシリーズ」が登場。ただでさえ目立つワイド&ローなボディーに、マイバッハならではのあしらいをたっぷりと加えたオープントップモデルだ。身も心もとろける「マイバッハ」モードの乗り味をリポートする。 -
NEW
始まりはジウジアーロデザイン、終着点は広島ベンツ? 二転三転した日本版「ルーチェ」の道のり
2026.3.4デイリーコラムフェラーリ初の電気自動車が「ルーチェ」と名乗ることが発表された。それはそれで楽しみな新型車だが、日本のファンにとってルーチェといえばマツダに決まっている。デザインが二転三転した孤高のフラッグシップモデルのストーリーをお届けする。 -
第863回:3モーター式4WDの実力やいかに!? 「ランボルギーニ・テメラリオ」で雪道を目指す
2026.3.3エディターから一言電動化に向けて大きく舵を切ったランボルギーニは、「ウラカン」の後継たる「テメラリオ」をプラグインハイブリッド車としてリリースした。前に2基、リアに1基のモーターを積む4WDシステムの実力を試すべく、北の大地へと向かったのだが……。 -
F1で絶体絶命!? アストンマーティン・ホンダになにが起きているのか?
2026.3.3デイリーコラム2026年のF1開催を前に、早くも苦戦が伝えられるアストンマーティン・ホンダ。プレシーズンテストでの大不振はなぜ起きたのか? ここから復活する可能性はあるのか? 栄光と挫折を繰り返してきたホンダが、ふたたびF1で輝くために必要なものを探った。 -
電動式と機械式のパーキングブレーキ、それぞれメリットは?
2026.3.3あの多田哲哉のクルマQ&A一般化された感のある電動パーキングブレーキだが、一方で、従来型の機械式パーキングブレーキを好む声もある。では、電動式にはどんなメリットがあって普及したのか? 車両開発者の多田哲哉さんに話を聞いた。 -
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】
2026.3.3試乗記「GRヤリス」の新仕様として設定された「エアロパフォーマンスパッケージ」装着車に試乗。レースフィールドでの知見を交え開発したというエアロパーツの空力・冷却性能は、リアルワールドでも体感可能なのか。高速道路を経由し、郊外のワインディングロードを目指した。







































