ダイハツ・ミラココアX(FF/CVT)/プラスG(FF/CVT)【試乗速報】
クルマっぽさはいらない 2009.09.01 試乗記 ミラココアX(FF/CVT)/プラスG(FF/CVT)……120万2050円/135万2500円
若い女性をターゲットにオシャレ感を演出した「ダイハツ・ミラココア」にスーザン史子が試乗。今までにない発想で開発に取り組んだという新型はどんなクルマ?
使い勝手を重視
ダイハツから「ミラ」のオシャレ版「ミラココア」が誕生! ターゲットは初めてクルマを買う20代を中心に、独身のマインドを持った女性。“ココア”というネーミングには、女性にとって身近な存在であってほしいという願いが込められているんですって。
「おでかけプチワゴン」をコンセプトに、オフに仲間と一泊旅行に出かけられるような使い勝手を重視。クルマらしさをあえて抑え、家の中にある雑貨や家具の延長線上にあるインテリアを目指したというだけあって、シートに座った瞬間からホッと一息つけるリラックス空間になっています。
基本的なコンポーネンツはミラと同じ。シンプルな四角い箱型のシルエットを持ち、視界の良さは抜群。水平基調のダッシュボードで、運転席からの見切りもいいほか、リアのクォーターウィンドウによって、後方視界もバッチリ。ウェストラインを下げることによって左右の視界も充分に確保しているんです。
また、Aピラーを立てることによって、室内がグッと広く感じられるし、ワンモーションフォルムよりも、ガラス面を減らすことができるから、直射日光の照射率を下げることにも効果アリ。フロントウィンドウは、紫外線を90%カットするIR&UVカットガラスになっているというのも、日焼けが気になる女性にとってはポイント高いですよね〜!
注目は、国内初「バックモニター内蔵ルームミラー」
実際に運転してみると、Aピラーが立った形状ということもあって、風切り音が多少入ってはくるものの、それほど気にならないレベル。足回りはミラよりも少しやわらかめのセッティングになっていて、キビキビというよりはふんわりとした乗り心地。たとえるなら、コシのあるシフォンケーキ。街乗りにぴったりの癒しがあります。
インパネは、シンプルで機能的。アイボリーの文字盤にメッキリングを施したスピードメーターは大きくて文字もハッキリと見やすいし、スイッチ類もわかりやすい配置。タコメーター内に表示される「エコインジケーター」は、アクセルを踏み込み、2500rpmあたりを過ぎると消えるものの、アクセルから足を離すとすぐにまた点灯し、エコドライブをサポート。燃費はミラと同様、クラストップレベルの23.5km/リッターをマークし、自動車取得税と重量税が75%軽減される、エコカー減税対象車なんです。
目玉となるのが、国内初採用となるバックモニター内蔵ルームミラー(ココアプラスGに標準装備。ココアXに「バックモニターパック」としてメーカーオプション)。バックモニターは付けたいけれど、近所での街乗りがメインとなれば、ナビを付けるまでもないと考える人は多いはず。そこで、バックモニターだけ別に付けられないかと考え生まれたのがこのシステム。
シフトポジションを「R(リバース)」にすると、あーら不思議! バックカメラからのカラー映像がルームミラー左側に瞬時に映し出されるんです。モニターの大きさは2.4インチ(48×35.7mm)相当と小さめですが、映像も明るく鮮明で見やすいんです。こんな便利が装備だったら、私も自分のクルマにつけた〜い! ルームミラーだけ別売りで付けらんないかしら……ってバックカメラ装備してないとムリか。さらに、リバース連動ドアミラー(ユースフルドライビングパック)も、バック走行の頼もしい助っ人。助手席側のドアミラーが下向きに角度を変え、左後輪付近の視界を確保してくれるから安心です!
“やわらかさ”には目がない女性にササるインテリア
インテリアは、アイボリー×ブラックのモダンな印象。なんといっても、女子にササるのがインパネとドアトリム! どちらもハンドバッグをイメージした立体的なラウンドスクエアで、シート同様パイピング処理を施し、インテリアに統一感を持たせています。曲面の処理は、ハンドバッグ独特の膨らみ感が絶妙に表現されていて、つい触れてしまいたくなるほど。ま、実際に触ったら樹脂素材なんで硬いんだけど、見た目は弾力がありそうなやわらかさを表現しているんですね。そこがイイんです。
そしてシート生地もワザありの2タイプからチョイス可能。スエード調で滑らかな肌触りが楽しめる生地(デオドラント効果あり)と、麻素材をざっくりと編んだようなナチュラル系生地とが用意されていて、チョイス次第で室内の雰囲気もガラッと変わっちゃいます。個人的には麻タイプがモダンファニチャー然としていて断然オシャレかな〜。運転席シートヒーター(アップグレードパック)は、冷えが気になる女性にとって、喉から手が出るほど嬉しいアイテム。軽自動車としては、豪華すぎる装備ですよね〜。
収納スペースも基本的な装備を備えながら、カップホルダーは運転席と助手席に2つずつ用意されているなど、なかなか気が利いてます。いつも持ち歩いているミネラルウォーターのほかに、コーヒーなどフレーバー違いの飲み物をキープするのに便利。また、各装備の操作方法も、日常生活の中で馴染みのある動作がヒントになっているんです。たとえば、インパネアッパーボックスのフタはキッチンのロースターが開くような回転方式に。グローブボックスには、スローモーションオープン式を取り入れ、ゆったりとした動きを大切にしています。優雅な所作に通じる工夫って、女性にはたまらない萌えポイントなんですよね。
|
ダイハツの本気を見た!
ミラココアの目新しさは、徹底的にクルマっぽさを排したところといえそうです。ネーミングひとつとってもそう。「こんなクルマっぽくないネーミングでいいのか?」という声もあがる中、開発陣が最後まで“ココア”にこだわったのは、女性とクルマとの距離を縮めるためには、徹底的にクルマらしさをなくすことが必要だと感じていたからなんですって。
本来クルマメーカーなら、優れたメカの部分を訴求していこうとするのが当然。にもかかわらず、クルマらしさをなくす、そう決断したのには、本気で女性目線を採りいれたいと決断したからなんですね。実際、ターゲット層のモニターと繰り返し意見交換を行ったことによって、一応女性として生きている私も、すっかりリラックスできちゃうモデルに仕上がっています。
|
また、今回の取材では、開発陣からの率直な意見を聞けたことも、大きな収穫でした。
ダイハツにはミラココア同様、オシャレ路線を狙った「ムーブラテ」という女性向けモデルがありました。そのぬいぐるみ然とした愛玩系モデルに対して、「男性から見た女性らしさ、かわいらしくあって欲しいといった願望も入って、少し行き過ぎた感が残る」といった発言も飛び出し、「ダイハツは変わった!」と思い、ハッとさせられました。
自分がクルマと関わる仕事をしていても感じるのですが、女性にとってクルマは、洋服や化粧品などと比べると、構造も複雑だし、とっつきにくいモノなんですよ。そういう女性の気持ちを汲みつつ、彼女たちの好みを聞き出し、これまでとは違うアプローチで開発したというところに、ダイハツの本気を見た気がしました。
女性にとってクルマは、あらゆるシーンで、さりげなくサポートしてくれる相棒。だからこそ、あまり個性を主張したものではなく、自然体で付き合えるクルマがいいですよね。
(文=スーザン史子/写真=荒川正幸/撮影協力=東京ドイツ村)

スーザン史子
-
BMW iX3 50 xDrive Mスポーツ(4WD)【海外試乗記】 2025.12.12 「ノイエクラッセ」とはBMWの変革を示す旗印である。その第1弾である新型「iX3」からは、内外装の新しさとともに、乗り味やドライバビリティーさえも刷新しようとしていることが伝わってくる。スペインでドライブした第一報をお届けする。
-
BYDシーライオン6(FF)【試乗記】 2025.12.10 中国のBYDが日本に向けて放つ第5の矢はプラグインハイブリッド車の「シーライオン6」だ。満タン・満充電からの航続距離は1200kmとされており、BYDは「スーパーハイブリッドSUV」と呼称する。もちろん既存の4モデルと同様に法外(!?)な値づけだ。果たしてその仕上がりやいかに?
-
フェラーリ12チリンドリ(FR/8AT)【試乗記】 2025.12.9 フェラーリのフラッグシップモデルが刷新。フロントに伝統のV12ユニットを積むニューマシンは、ずばり「12チリンドリ」、つまり12気筒を名乗る。最高出力830PSを生み出すその能力(のごく一部)を日本の公道で味わってみた。
-
アウディS6スポーツバックe-tron(4WD)【試乗記】 2025.12.8 アウディの最新電気自動車「A6 e-tron」シリーズのなかでも、サルーンボディーの高性能モデルである「S6スポーツバックe-tron」に試乗。ベーシックな「A6スポーツバックe-tron」とのちがいを、両車を試した佐野弘宗が報告する。
-
トヨタ・アクアZ(FF/CVT)【試乗記】 2025.12.6 マイナーチェンジした「トヨタ・アクア」はフロントデザインがガラリと変わり、“小さなプリウス風”に生まれ変わった。機能や装備面も強化され、まさにトヨタらしいかゆいところに手が届く進化を遂げている。最上級グレード「Z」の仕上がりをリポートする。
-
NEW
ホンダ・プレリュード(前編)
2025.12.14思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が新型「ホンダ・プレリュード」に試乗。ホンダ党にとっては待ち望んだビッグネームの復活であり、長い休眠期間を経て最新のテクノロジーを満載したスポーツクーペへと進化している。山野のジャッジやいかに!? -
アストンマーティン・ヴァンテージ ロードスター(FR/8AT)【試乗記】
2025.12.13試乗記「アストンマーティン・ヴァンテージ ロードスター」はマイナーチェンジで4リッターV8エンジンのパワーとトルクが大幅に引き上げられた。これをリア2輪で操るある種の危うさこそが、人々を引き付けてやまないのだろう。初冬のワインディングロードでの印象を報告する。 -
BMW iX3 50 xDrive Mスポーツ(4WD)【海外試乗記】
2025.12.12試乗記「ノイエクラッセ」とはBMWの変革を示す旗印である。その第1弾である新型「iX3」からは、内外装の新しさとともに、乗り味やドライバビリティーさえも刷新しようとしていることが伝わってくる。スペインでドライブした第一報をお届けする。 -
高齢者だって運転を続けたい! ボルボが語る「ヘルシーなモービルライフ」のすゝめ
2025.12.12デイリーコラム日本でもスウェーデンでも大きな問題となって久しい、シニアドライバーによる交通事故。高齢者の移動の権利を守り、誰もが安心して過ごせる交通社会を実現するにはどうすればよいのか? 長年、ボルボで安全技術の開発に携わってきた第一人者が語る。 -
第940回:宮川秀之氏を悼む ―在イタリア日本人の誇るべき先達―
2025.12.11マッキナ あらモーダ!イタリアを拠点に実業家として活躍し、かのイタルデザインの設立にも貢献した宮川秀之氏が逝去。日本とイタリアの架け橋となり、美しいイタリアンデザインを日本に広めた故人の功績を、イタリア在住の大矢アキオが懐かしい思い出とともに振り返る。 -
走るほどにCO2を減らす? マツダが発表した「モバイルカーボンキャプチャー」の可能性を探る
2025.12.11デイリーコラムマツダがジャパンモビリティショー2025で発表した「モバイルカーボンキャプチャー」は、走るほどにCO2を減らすという車両搭載用のCO2回収装置だ。この装置の仕組みと、低炭素社会の実現に向けたマツダの取り組みに迫る。
































