ルノー・コレオス プレミアム グラスルーフ(4WD/CVT)【試乗記】
藍より出でて藍より青し 2009.07.03 試乗記 ルノー・コレオス プレミアム グラスルーフ(4WD/CVT)……365万3440円
「ルノー・コレオス」が日本上陸。日産の売れっ子SUVとイトコ同士にあたる同社初のクロスオーバーモデルは、どんな走りを見せるのか?
ベースは本場の人気者
このサイト、クルマ好きなら毎日見てる……とは思うのだが、なかでもこのページを積極的にクリックしたアナタは、おそらく「ルノー・コレオス」のデザインに何かしら心惹かれるところがあったのではないだろうか。
試乗の依頼を受けて、僕は楽しみだった。なにせ、実用を重んじるルノーが初めて手を出したSUV風のニューモデルだから。パッと見からして、これまでのSUVにはないセンスが漂っているじゃないか。
いま欧州ではこの手のコンパクトSUVが人気で、ここ数年は「日産エクストレイル」や「ホンダCR-V」などが大きなシェアを占めている。それにつられてフォルクスワーゲンも「ティグアン」を出し、アウディも「Q5」を登場させた。
日本ではまだまだ「お洒落カー」程度の認識でしかないコンパクトSUVが、欧州では完全に「ファミリーセダンの次のカタチ」になっている。ヨーロッパには豊かな自然が沢山あり、それを楽しむバカンスもたっぷりとある。本格的なクロカンの走破性までは要らないが、岩場でフロアを打たない程度のクリアランスと、ぬかるんだ道をストレスなく走れる程度の性能は欲しい、という部分が、見事にクロスオーバーしている。だから、ルノーもそこへ行こうということなのだろう。
渡りに船というべきか、ルノーは欧州シェアでトップを走るそのエクストレイルの基本コンポーネンツが使えるのだ。
先にも述べたとおり、コレオスは日産エクストレイル/デュアリスをベースとしている。ルノー・日産アライアンスの兄弟モデルはほかにもあるが、個人的にはコレオスが、初めてその合理性を実現したモデルではないか? という印象を受けた。「日産の技術的信頼性」をベースに、「ルノーのセンス」で仕上がったクルマだから。これこそ古くからクルマ好きが口にしてきた、「見た目ガイシャで、中身コクサン」そのものだからである。
スミまでシミてる「ルノー味」
実際に走り始めると、想像とは違った。
1シリンダーあたり622ccもある2.5リッター直列4気筒エンジンは、170psという平凡な出力ながら1750kgの巨体を楽々走らせるだけのトルクを有した「アンコ型エンジン」だ。
が、アクセルを踏み込むとこのエンジンは高回転までスムーズに回り過ぎ、それが低速トルクが足りない気分にさせる。高回転まで回るから、ノイズも結構キャビンに入り込んできてしまうのだ。トランスミッションに CVTを採用しているせいもあるだろうけれど、このあたりは欧州の“実用的なトルク”志向と日本の“高性能高出力”志向の違いなのかもしれない。
ただしその透過音が、ルノーっぽいかも……と感じ、いやではなかったのも事実。またタウンスピードではそこまでエンジンを回すこともないだろうから、普段乗りでのうるささはそれほど感じないだろう。高速道路の合流や追い越し、今日のようなワインディングステージでひと踏みしたときに、わかってもらえるかもしれない。
日産デュアリスと同じザックスダンパーを使ってはいても、デュアリスのようなメリハリもなければ、ラフロードを完璧に視野に入れたエクストレイルほどの大きななストローク量もないが、ルノーらしい素朴な乗り心地。メーカー自身は「フレンチタッチ」と呼んでいる。
ただ、ステアリングの操舵感は電動アシストが強過ぎて、それなりにスピードを上げたときのノーズの切れ込み量とマッチしていない気がする。ダンパーの持つロールスピードの穏やかさと照らし合わせると、少しばかり軽々しい操舵感なのだ。
いっぽう、撮影で訪れた漁港の狭い駐車場スペースで、大きな巨体をするするッとターンさせたときなど、極低速ではこの電動アシストが素晴らしいと思えた。これは普段は飛ばさないママにとって実にありがたいだろう。できれば速度感応式にして、休日のハイウェイを担当するパパにもグッとくるルノーらしい味付けに仕上げてほしい。
もっと簡素でいいくらい
今回はオンロードでのみ試乗したので、コレオスが持つ4WD性能の評価はできなかったが、エクストレイルの評価をそのままスライドすることができるならば、それはかなり満足できる内容といえる。
「オールモード4×4i」システムは、徹頭徹尾アンダーステアをキープさせて横滑りを防ぐ特性だから、アクティブなイメージのあるエクストレイルには物足りなく感じられることもあったが、ルノーの実用車然としたキャラクターにはピッタリくる。
都市部のユーザーがHDC(ヒルダウンコントロール機能)やHSS(ヒルスタートサポート機能)を年に何度使うかはわからないが、寒冷地ユーザーにとっては有用だし、アプローチおよびデパーチャーアングルをタップリ取りながらもそれを感じさせない前後バンパーのデザインは、まさに、水陸両用ならぬ街山両用のスタイリッシュさ。懐の深さを感じさせる。
個人的には都市部でボディが大きすぎると思うこともある。シートもモケットのほうが、よりルノーらしいと思う。駆動方式もFF(エクストレイルにはラインナップされている!)があってほしい。でも、比較的高価なイメージのある輸入車でありながら、そんなふうに「簡素な仕様でOK!」と胸を張りたくなるなんて、ルノーくらいのものである。
(文=山田弘樹/写真=峰昌宏)

山田 弘樹
ワンメイクレースやスーパー耐久に参戦経験をもつ、実践派のモータージャーナリスト。動力性能や運動性能、およびそれに関連するメカニズムの批評を得意とする。愛車は1995年式「ポルシェ911カレラ」と1986年式の「トヨタ・スプリンター トレノ」(AE86)。
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