毎日でもフェラーリに乗りたい! 「アマルフィ スパイダー」にみる新時代の“跳ね馬”オーナー像
2026.04.17 デイリーコラム目指すは新世代の顧客の開拓
過日、都内某所で開催された「フェラーリ・アマルフィ スパイダー」発表会(参照)でのことである。フェラーリ本社のプロダクトマーケティングマネジャーや、日本法人社長との質疑応答で発せられた、「『カリフォルニア』から続く、新規顧客向けのエントリーモデルという位置づけに変わりはないか?」という問いに、浅学の記者はいまさら理解した。そうか、FR・V8の2+2モデルって、フェラーリのなかではそういう立ち位置なんだな。
一応補足しておくと、ここでいう“エントリーモデル”とは、ラインナップのボトムレンジを担う車種ではない。文字どおり、それまで顧客ではなかった層をブランドへといざなうためのモデル、という意味だ。そして、いずれにせよ記者は、アマルフィをそうした車種として認識していなかった。
おのが不明を言い訳すると、なんとなくFRのラグジュアリークーペって“上がりの一台”な気配がありませんか? クルマそのものを見ても、アマルフィやその先達(せんだつ)である「ローマ」には、やんちゃな「296」シリーズに対して「酸いも甘いもかみ分けた大人のクルマ」的な趣があって、「これからフェラーリ、始めます」という人へ向けたカジュアルな雰囲気は感じ取れなかったのだ。なんなら昔の2+2グランドツアラーのように、V12を積んでいてもおかしくないと思っていたほどだが、そうか、今となってはその役割が「プロサングエ」なのだな。ううむ、時代よのう。
なお上述の問いに関してだが、アマルフィのポジションに従来車種からの変化はないとのこと。いっぽう興味深かったのが、フェラーリの把握する新規顧客の“像”で、マッティア・メッジョリン プロダクトマーケティングマネジャーいわく、「パフォーマンスを求めつつも、スポーツカーのパイロットというより、いろんなシーンでフェラーリに乗りたいと考える人」とのことだった。「アマルフィは荷室も広いですから」という氏の言と、「日常的に使える初めてのフェラーリに……」というドナート・ロマニエッロ フェラーリ・ジャパン社長の補足に、記者は自身のセンスの古さを認識した。
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今までとは違うフェラーリオーナーの像
そんなアマルフィ スパイダーゆえか、QAセッションの問答も、“走り”よりはその他の部分で盛り上がった。いわく、クーペの流麗なフォルムを保ちたいからハードトップの採用は避けた。ソフトトップには6色ものカラーを用意しているが、ここまでのパーソナライゼーションはハードトップでは無理。ドライブ中にも見て、触ってほしいから、ソフトトップの生地はドアトリムやシートバックなどのインテリアにも使わせてもらった等々……。
もちろんパフォーマンスに関する話題もあったが、数値によらない話や報道資料に載っていない話というと、「『ローマ スパイダー』からのフィードバックから、もっと多様性の幅を持たせようと考えた」「『マネッティーノ』(ドライブモードセレクター)のセッティングをより差別化し、スポーティーなモードでは、よりプッシュしたいという期待に応えられるようにした」「より多くの頻度でフェラーリを楽しんでほしい」……といった感じで、やはり「いろいろなシーンでフェラーリを楽しみたい人のためのモデル」という、アマルフィの狙いにブレはないようだ。
記者などは古いクルマ好きなので、フェラーリのオーナーというと「マラネロから一時的にクルマを預からせていただいている」といったスタンスで、マイレージは極力伸ばさず、日々のお出かけはセカンドカー。ハレの日以外に出陣を乞うなぞ、論外! ……というイメージだった。そしてそれは、自動車メディアの諸先輩や過去に知り合ったフェラーリオーナーの話を思うに、そんなに的外れなものでもなかったはずだ。
メッジョリン氏とロマニエッロ氏が語る、新規オーナー予備軍の「いろいろなシーンをフェラーリで」という自然で豪胆なスタンスには、戸惑いとともに、ちょっと憧憬(しょうけい)を覚えてしまった。
新しいオーナーの新しい要求に応えるべく
さて、そんな新しいオーナー予備軍を本物のオーナーへと格上げするべく、フェラーリではさまざまな施策を準備している。特に日本で注力しているのが、「まずはクルマに触れてもらうこと」だそうで、東京・大阪を中心に試乗に特化したイベントを計画しているという。「以前は、発表の段階では試乗できるクルマはありませんでしたが、アマルフィ スパイダーの場合、すでにクーペがありますからね」(ロマニエッロ氏)。
もうひとつがテーラーメイドセンターの開設で、伊本国とニューヨーク、上海に続いて、2027年をめどに東京(とロサンゼルス)にも拠点がオープンするという。これまで、日本のフェラーリ購入者がマラネロのパーソナライゼーションプログラムを利用しようとすると、本国までお空を飛んでいく必要があったのだ。ところが、日本での要望があまりに多かったことから、拠点の開設が決定したとのこと。ただでさえ高額なフェラーリを買おうというのに、エクストラフィーを払って自分だけのクルマに仕立ててもらおうとは豪胆な。しかも、そんな人が日本にもたくさんいるというのだから、世の中はわからない。
実際、ビジネスとしてわが国のマーケットと向き合うロマニエッロ氏は、「日本でも富裕層は増えていますよ」とはっきり語る。「そうした人々の間では、人生を楽しもうという欲求、特別な体験をしたいという願望が高まっている。それはクルマかもしれないし、食事等といったほかの体験なのかもしれない。幸いなことにフェラーリは、スポーツカーの分野においてリーダーの位置にあり、ショッピングリストに載せてもらっているのです」。
この氏の言に思い出したのが、マセラティ ジャパンの木村隆之前代表が語っていた「イタリアンラグジュアリーの定義」である(参照)。なるほど確かに、“人生を楽しむ”という点において、イタリアンブランドほど信頼のおける存在はなさそうだ。新しいセンスのオーナー予備軍が本当にオーナーになり、テーラーメイドで仕立てられた色とりどりのフェラーリを、今まで以上の頻度で見かけるようになったら……アマルフィとは言わないまでも、東京も今以上に華やかな街になりそうである。
(文=webCG堀田剛資<webCG”Happy”Hotta>/写真=webCG、フェラーリ/編集=堀田剛資)
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堀田 剛資
猫とバイクと文庫本、そして東京多摩地区をこよなく愛するwebCG編集者。好きな言葉は反骨、嫌いな言葉は権威主義。今日もダッジとトライアンフで、奥多摩かいわいをお散歩する。
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