レクサスIS F(FR/8AT)【ブリーフテスト】
レクサスIS F(FR/8AT) 2008.03.20 試乗記 ……848万50円総合評価……★★★
日本の4ドアセダンに稀有な、423psの心臓をもつ「IS F」。スペックで見えない実際の乗り味はどうなのか? 一般道を中心に試した。
真のヒーローを目指せ!
「日産GT-R」の対抗車として期待は大きいが、現実の「レクサスIS F」には、まだ物足りないところがある。GT-Rが完成途上にある間に追い越す好機とも言えるが……
本来、IS Fの目指すところは「最高峰のスポーツセダン」。すなわち、現状よりも遥かにパワー感に満ち、ドライバーの意思どおりに運転を楽しめるクルマであるはずなのだ。
現状では“トヨタ的ヒーロー”にはなれても、「レクサス」というブランドの志に見合っていないだろう。いうなれば、カスタマイズカーのレベルであり、メーカーの仕事としては少々……というのが正直な感想だ。作り手が恐る恐る開発していて、最終的な方向性をしっかり見極めていないようにも見える。
動力性能に対してブレーキ能力が追いつかないのもその一例。この手のクルマは、サラリーマン的な作業で作ったのでは、決して魅力的なものにならない。コンポーネンツの寄せ集めでも、チューニング次第でより面白く仕上げることは可能。ましてレクサスであれば、最高性能を目指して独自の投資もできるはず。たとえもっと高価格になっても、でき次第でユーザーは納得するだろう。
スポーツタイプ車の頂点に立つクルマとして、トヨタファンの期待はもっともっと大きいはずだ。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
「レクサスIS」は、1998年にデビューしたコンパクトFRセダン「トヨタ・アルテッツァ」の後継となるモデル。トヨタ自動車の高級ブランド「レクサス」が日本で開業(2005年8月30日)するにあたり、フルモデルチェンジした。同ブランドでは、LS、GSらに続くエントリーモデルの位置付けである。
全長×全幅×全高は4575×1795×1430mmで、ホイールベースは2730mm。心臓部は318psの3.5リッターと215psの2.5リッター、直噴V6の2種類で、パドルシフトできる6段ATを合わせる。ボディサイズのアップもさることながら、390.0万円から525.0万円までと、価格も高級ブランドレベルになった。
(グレード概要)
試乗車の「IS F」は、2007年10月4日にデビュー。トヨタのホームサーキット「富士スピードウェイ」の頭文字“F”をいただくとおり、ISをベースとしたスペシャルモデルである。「BMW M3クーペ」や「アウディRS4セダン」など、欧州のハイパフォーマンスセダンが仮想敵だ。
レクサスのフラッグシップ「LS」の心臓を元にした、423psの5リッターV8エンジンを搭載。トルコン式の8段ATを介し、後輪を駆動する。専用サスペンションや大型ブレーキなども与えられた。
見た目でも、大排気量エンジンを納めるべく盛り上がったボンネットフード、大きく張り出したフェンダー、さらに、リアバンパー左右で縦に並ぶ4本のエグゾーストパイプなど、特徴的な外観を纏う。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
フィニッシュは上々。キチンとそつなく作られている。ただ、高級オモチャ的なメーター類は、性能をウリにするならもっと簡素であっていいし、内容相応の凄味も欲しい。高性能V8エンジンに相応しいボンネットの膨らみはなかなかの迫力だ。が、この動力性能を誇示するような、特別なクルマとしての造形やデザイン的な迫力は、もう少し欲しい。
(前席)……★★
シートは要再考。表皮レザーの白黒配色は、見た目に綺麗であるが、骨格は普通の乗用車の考え方であり、クッションの硬さの配分などには無頓着だ。しっくり馴染まないから、このクルマの性能を楽しむには不向き。背中の中央が押される感じで肩は離れ、ヘッドレストは遠い。肘も当たる。シートに対してハンドルは左に向いているし、ペダル類は右に向いている。シフトレバーは近過ぎる。ゆえに、ドライビングポジションを決めにくい。自力で自製する考えは立派だと思うが、一流品を凌駕するだけの努力も必要。見習うべき良品もあるのでは?
(後席)……★★★
2座への割り切りはいいが、横方向の広々感を演出する技も見せて欲しい。ベルトアンカーは3人がけの位置にあり、腿への当たりが気になる。ヘッドクリアランスはまずまず。背面の角度は寝過ぎ、高さはぎりぎりで包まれている感じは薄い。クッションは反発性が強めでしっとりとフィットする革の滑らかさは感じにくい。乗り心地は上下動が絶えず、G的にもゴツゴツして不快。フラット感が無いため、酔いやすい子供には向かないだろう。
(荷室)……★★★
広さとしては、ごく一般的といえる。FR車のトランクとして特別広くもないし狭くもない。リッドはバンパーの高さから開くので、開口部の広さはまずまずだ。ステーは長く高い位置まで上がるので、頭をぶつけることもなさそうだ。
内張りも並。開閉は、コクピット内部からか、センサー内蔵型キーを身に付けて外側から行う。ロックしてさえいなければ、外から通常の方法で開けられるほうが、便利で好ましい。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
このエンジンは、5000rpm から上が気持ちいい。5000-7000rpm の加速は圧巻だ。一方、そのパワーに対してATの許容量に不安があるのか、1速2速の加速は期待外れ。意識的に絞ってあるようでレスポンス悪く、パンチが感じられない。街なかの普通使いでは、5リッターV8の迫力は感じにくい。
各ギアのステップアップはきめ細かで、2000rpm以下でも軽負荷なら順次上にあがってゆく。そうした意味では、アクセルの踏み方次第で車速をコントロールできる“楽チン車”だ。なお、Dのままで乗っても、呆れるほど速い。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
たとえ足まわりが硬くても、姿勢がフラットであれば乗り心地は決して悪くないもの。今やそんな例はたくさんある。その点、このクルマの乗り味は「ちょっと古め」であり、G的な上下動も大きく感じられる。ボディやタイヤに対してサスペンション剛性が低く、足元が華奢な印象は拭えない。
ハンドリングも、タイヤのグリップへの依存度が大きく、サスペンションの存在感は相対的に薄い。もっと積極的にパワーを味わいつつ操縦性を楽しむ気にさせて欲しいものだ。
(写真=峰昌宏)
【テストデータ】
報告者:笹目二朗
テスト日:2008年2月5日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2008年型
テスト車の走行距離:2365km
タイヤ:(前)225/40R19(後)255/35R19(いずれも、ミシュラン・パイロットスポーツ)
オプション装備:BBS製フロント・リア19インチ鍛造アルミイール(8万7150円)/室内パネル・シルバリースターリングファイバー(3万9900円)/プリクラッシュセーフティシステム+レーダークルーズコントロール(27万3000円)/ムーンルーフ(9万4500円)/クリアランスソナー(4万2000円)/“マークレビンソン”プレミアムサラウンドサウンドシステム(28万3500円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(6):高速道路(4)
テスト距離:330.7km
使用燃料:55.58リッター
参考燃費:5.95km/リッター

笹目 二朗
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