スマート・フォーツー(RR/5AT)【海外試乗記】
一人前の自動車 2008.03.06 試乗記 スマート・フォーツー(RR/5AT)7年ぶりにフルモデルチェンジされたコンパクトカー「スマート・フォーツー」。ボディサイズ、エンジン排気量が拡大され、各所の意匠変更がされた。カリフォルニアで2代目スマートに試乗した。
初代スマートの特技
実はわが家にはスマートが棲んでいる。現在のようなフォーツーではなく、まだ「シティクーペ」を名乗っていた時代のオリジナルマスク(ウルトラマン顔とも言うらしい)を持つモデルだ。
すでに2回の車検を通したにも関わらずオドメーターの数字はたったの6300km! 週に数度は“稼動”するものの、1トリップの平均はだいたい4〜5km程度。それゆえ、年間走行距離はせいぜい1000km程度しか伸びないのだ。
しかしまぁ、そもそもは雨・風・暑さ・寒さが凌げる4輪の原付バイクというノリで手に入れたこのクルマ。「駐車のイージーさを念頭に置いた使い方もアリでしょう」と個人的にはそう感じている。日本の場合、都市部の道は基本的にすべて“駐禁”なので、本来の小ささのメリットを活かしきれないのは残念至極だが、それでもタイトなスペースの駐車場では、切り返しに苦労する大きなミニバンを尻目に、頭からスッと突っ込める。快感。何しろ、自転車5台ほどがまとまって置けるスペースさえあれば無理なく駐車できるというのが、このクルマの特徴なのだ。
エンジンは1リッターに
それだけに、初めてのフルチェンジを行ったフォーツーのボディが、「全長で180mm、全幅で45mmも大きくなった」と知った時にはちょっとショックだった。そもそも、「2.6mに満たない全長の中で、どんなことができるのか」という崇高な課題にチャレンジしたのがスマートではなかったのか……。
というわけで、そんな「?」マークを抱えたまま降り立ったのが、カリフォルニアの地。スマートは、この新型からついにアメリカでも正式発売されることになったのである。
試乗会場のホテル前の道路に“直角駐車”をされた新型は、相変わらずのキュートなルックスで遥々太平洋を越えてきたボクを迎えてくれた。オムスビのようなプロポーションの“底辺”の前後左右イッパイのところに4つの車輪を配置したスタイリングは、初代モデルに明確な敬意を表したものだ。
縦型から横型へと改められたドアハンドルを引き、従来型と同様、万一の側突時に乗員の肩同士がぶつかり合うことを避ける意味もあって、前後にズラされたドライバー側シートへと乗り込む。各種のスイッチ類を中心に質感が向上したダッシュボード周りのデザインは相変わらずポップな雰囲気。だが、「アメリカの衝突安全基準をクリアするため」と称してS字型のダッシュボードが直線的に改められてしまったのはちょっと残念だ。
「i」用ユニットと兄弟関係にある三菱製のエンジンに火を入れて走り始める。3気筒エンジンゆえの音質は相変わらずだが、そのボリュームがグンと抑えられたのは、従来型に乗る誰もが羨む部分だろう。エンジン排気量が増したことと、ヒルスタートアシストの採用による相乗効果で、上り坂発進でのスムーズさは遥かに向上。ただし、2ペダルMTのシフト時のギクシャク感は相変わらずで、これまでよりもスムーズさが増したとはいえ、アクセル一定開度でのオートモードでの加速では、変速の度に“首振り人形”を演じさせられることは免れない。
一方で、マニュアルモードでの操作レスポンスは大きく向上している。このモデルをスムーズに素早く加速させるためには、こちらのモードを用いつつ、変速時には軽くペダルを戻すという、2ペダル車ながらMT車流儀のアクセルワークが不可欠だ。
RRレイアウトの宿命
荒れた路面でのピッチングモーションはやはり小さいとは言えないものの、それでも従来型と比較すればこちらがずっと快適と感じられる。サスペンションのリファインと、55mmのホイールベース延長の効果が小さくないはず。
一方、コーナーでちょっと無理をすると途端に舵の効きが甘く感じられるようになるのは、先代同様。高速コーナリングでのオーバーステア挙動を回避するための、RRレイアウトゆえの宿命なのだろう。
ちなみに、絶対的な加速力は「フリーウェイのランプを駆け上がり、120〜130km/hの本線の流れに乗るためには何とか不満は感じない」という程度。今回ドライブしたアメリカ仕様車の場合、オクタン価の低いガソリンへの対応のためにエンジン圧縮比が他の地域向けよりも1割ほど下げられているので、日本に上陸するモデルでは、多少は加速力が向上することが予想される。
そんなこんなでフルモデルチェンジを受けた新型は、総じて「より“一人前の自動車”らしくなったナ」というのが率直な感想。一方で、これまで自転車5台分で済んだパーキングスペースが「6台分を必要とするようになった」というのは、そもそものスマートというブランド発祥の根源をも揺るがしかねない、やはり由々しき問題点と個人的にはそうも受け取れるのだが……。
(文=河村康彦/写真=メルセデス・ベンツ日本)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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