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第26回:大矢アキオの独断的 イタリア&フランス「特別仕様車オブ・ザ・イヤー」!

2008.02.05 マッキナ あらモーダ! 大矢 アキオ
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第26回:大矢アキオの独断的イタリア&フランス「特別仕様車オブ・ザ・イヤー」!

ヨーロッパにだって、ある

ボクは、昔から特別仕様車が好きである。
トヨタの初代「ターセル/コルサ」に存在した伝説の「百恵セレクション」はもちろん、「日産Y30グロリア」の「ジャック・ニクラウス」や「日産ローレル・ジバンシィ」などなど 1980年代日本に存在した有名人系特別仕様車を、担任教師の顔よりもボクは鮮明に覚えている。

現われてはすぐに消えてゆく、線香花火の如くというか、桜の花の如くというか、そのはかなさが心の琴線に触れるのである。

ところで「かのヨーロッパに、そんな安易な特別仕様はない」などとお思いの外国車原理主義者のアナタ、実はあるんです。
その横綱は90年代の3代目「フォルクーワーゲン・ゴルフ」である。「ボン・ジョヴィ」「ピンクフロイド」と、バンド名を冠したスペシャルエディションが次々と発表された。
「ボン・ジョヴィ」仕様は日本でも発売され、ボクは東京で発表会に行った覚えがある。さすがに本物のボン・ジョヴィは呼べなかったらしく、かわりに「プリンセス天功マジックショー」が余興に盛り込まれていた。ちなみにボクとしては、ボン・ジョヴィが来なくてもプリンセス天功で充分満足だった。
なお3代目ゴルフには、その前後にも「ジョーカー」「ヨーロッパ」などと題した特別仕様車たちが次々誕生した。

特別仕様車を乱発した「フォルクスワーゲン・ゴルフ3」の、これは「ジョーカー」。
特別仕様車を乱発した「フォルクスワーゲン・ゴルフ3」の、これは「ジョーカー」。
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アルファ147 ドゥカティ・コルセ
アルファ147 ドゥカティ・コルセ 拡大

アルファ147の「ドゥカティ」と「マーフィ&ナイ」

かわって最近ヨーロッパで特別仕様車が元気なのは、フランスとイタリアである。
そこで今回は、昨2007年に両国で発売されたものから優秀作を決定する、大矢アキオ流「伊仏特別仕様車オブ・ザ・イヤー」としよう。

まずは、2007年11月に発表されたアルファ147「ドゥカティ・コルセ」である。アルファ・ロメオは2002年からドゥカティのレース部門とパートナーシップを結び、チーム用車両などを提供している。したがってその御縁で誕生した特別バージョンだ。
イタリア国内仕様は「1.9JTD-Mターボディーゼル Q2」をベースに、スポーツ系パーツをふんだんに盛り込んだものだ。アルファ・ロメオによれば、欧州以外に日本やオーストリアでも発売予定という。

アルファ147には、それ以前に6月にも特別仕様車が追加されている。ヨット用セイル/アパレルメーカー「マーフィ&ナイ」との共作である。こちらは「1.9JTD-M」をベースにしたものだが、ご覧のとおり室内は各所に赤のロープを配した粋なものである。
そこでまずは「伊仏特別仕様車オブ・ザ・イヤー」内装部門賞は、このマーフィ&ナイに贈呈したい。もはやモデル末期となったアルファ147の販売にとって、それなりの起爆剤となったことを祈ろう。

「アルファ147 マーフィ&ナイ」の内装。
「アルファ147 マーフィ&ナイ」の内装。 拡大
「フィアット・グランデプント オレンジ」の広告。
「フィアット・グランデプント オレンジ」の広告。 拡大

テクノ感覚の裏の切なさ

いっぽうフランスでは昨年、従来例がなかった業種とのコラボレーションが続々お目見えした。ひとつめは、フィアットが仏市場限定で年初に発売した「グランデプント オレンジ」である。
オレンジはフランステレコム系の携帯通信会社だ。したがって、日本でいえぱ「NTTドコモ仕様のクルマ」ができたようなものである。実車はサイドのウィンカー下に「orange」のロゴが入り、ブルートゥース対応ハンズフリーフォン機能や、USBポートが標準装備される。

それに対してシトロエンは春先、「C2」「C3」および「C4」の「ヴァージンメガ」仕様を発表した。こちらはMP3/CDプレイヤーを装備し、「ヴァージンメガのサイトからの50曲ダウンロード権」というおまけ付きだ。
ちなみにイタリアに話が戻るが、シトロエンのイタリア法人は、人気FMラジオ局の名前を冠した「Deejey」なる特別仕様も設定している。

ルノーも負けていない。10月、新型「トゥインゴ」に設定した「ノキア」を発表した。トゥインゴとノキア製モバイル「6110」をセットにしたものだ。両者を連携させてハンズフリーフォン、音楽、カーナビといったさまざまな機能を提供する企画である。
しかし、ボクが注目したいのは、「ノキア」のBピラーである。プリント基盤をモティーフにしたデザインがなんとも格好いい。

動力性能にまったく関係ないと笑うなかれ。
かの東京都庁も、集積回路をイメージした疑似テクノである。
思えばかのジウジアーロだって1988年、軍用機の操作盤を模したダミーをボディサイドにあしらったではないか。
ということで、2007年「伊仏特別仕様車オブ・ザ・イヤー」は、「トゥインゴ・ノキア」に贈呈することにした。

しかしこの携帯・音楽配信系エデションブーム、クルマに関心を持たぬ若者への、自動車メーカーからのラブコールと見ると少々切なくなるのも事実である。

(文=大矢アキオ Akio Lorenzo OYA/写真=Fiat Group Automobiles、Citroen、Renault、大矢アキオ)

シトロエンC2 ヴァージンメガ
シトロエンC2 ヴァージンメガ 拡大
ルノー・トゥインゴ ノキア
ルノー・トゥインゴ ノキア 拡大
テクノ感覚溢れる「ノキア」のBピラー。
テクノ感覚溢れる「ノキア」のBピラー。 拡大
大矢 アキオ

大矢 アキオ

Akio Lorenzo OYA 在イタリアジャーナリスト/コラムニスト。日本の音大でバイオリンを専攻、大学院で芸術学、イタリアの大学院で文化史を修める。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとしてシエナに在住。NHKのイタリア語およびフランス語テキストや、デザイン誌等で執筆活動を展開。NHK『ラジオ深夜便』では、24年間にわたってリポーターを務めている。『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり』(コスミック出版)など著書・訳書多数。近著は『シトロエン2CV、DSを手掛けた自動車デザイナー ベルトーニのデザイン活動の軌跡』(三樹書房)。イタリア自動車歴史協会会員。

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