第19回:赤ビキニに思わずドッキリ? ドライバーを幻惑する巨大ポスター
2007.12.01 マッキナ あらモーダ!第19回:赤ビキニに思わずドッキリ?ドライバーを幻惑する巨大ポスター
勝負ランジェリーの季節だ!
東京では11月に入るか入らないかのうちにクリスマスのデコレーションを見かけるようになる。
イタリアでは、クリスマスムードは11月も終わろうという頃からだ。それも本格的に盛り上がるのは、12月に入ってキリスト教暦のアドベントが始まってからである。
ただしスタートすると、その規模はすさまじい。商業団体コンフェゼルチェンティが先日発表した市場予測によれば、今年もイタリア人全体で、180億ユーロ(2兆8980億円)をクリスマスのために消費するという。
そんな季節、クルマを走らせていて気になるのは、街のあちこちに現れる、派手なランジェリーの巨大ポスターである。
もちろん、クリスマスの勝負下着特需を煽るためだろう。だがもうひとつ、イタリアでは「大晦日に赤い下着を着用して寝ると、運がいい」という言い伝えがあるのも事実だ。つまり文化的背景も存在するのである。
こうした女性の巨大ポスターが現れるシーズンは、ほかにもある。ヴァカンスシーズンを直後に控えた春で、それは秋口まで続く。
そしてバトンタッチするように、今度は前述のクリスマス広告が始まるのだ。つまり、ほぼ1年に2回、美女たちが現れる。
英紙に指摘されたものの……
大型ポスターは長さ5メートル、高さ2メートルを超えるから、街行く人々の目に入らないわけがない。アウトストラーダ1号線「太陽の道」における北部区間を走っていても、こうした女性のポスターが次々と現れる。
イタリアを代表する自動車誌「クアトロルオーテ」誌は、数年前から、ドライバーが脇見運転する危険があると警鐘を鳴らしてきた。
それ自体は、あまり一般に知られるに至らなかったが、今年7月、英紙「The Sunday Times」が「イタリアでは裸まがいの女性を使用した広告やテレビ番組が、氾濫している」と一面で指摘したときは、イタリアのマスコミがこぞって反応した。
同紙は「(イタリアの)女性は、モデルになるか専業主婦になるかを選択させられる、男尊女卑の社会である」と、ボクが見ても明らかに挑発的誇大表現ともいえる論も展開していた。
それに対してイタリアのマスコミでは、「私たちの国は、時代の趨勢に遅れている」と賛意を表した媒体や、「私たちはヌード好きの国民というわけではない」と異議を唱えるテレビなど、さまざな議論が展開された。
一方、ボクの周囲にいるイタリアの一般女性からは、こうした露出系女性ポスターを批判する声は聞かれなかった。大半は「モデルがきれいだから、別にいいんじゃない?」といった反応で、それ以前に特に関心を示す人は少ない、というのが正直なところだ。大らかなのである。
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「男版も欲しいワ」
この冬街行く人の目をひいているのは、サンタ風ビキニを着た女性の巨大ポスターだ。こちらの人気タレント&女優、エリザベッタ・カナリスである。ボクが縦列で路上駐車している通りにも出現した。
ビキニといっても水着や下着の宣伝ではない。携帯電話だ。イタリアではモデルがそういう格好になる必然性がない商品まで、こんな感じのものが多い。
かのフィアットもしかり。最近でこそ洒落たCMばかりになったが、数年前まで夏の点検キャンペーン「フィアット・サマー」といえば、ビキニの女性というのが定番だった。寝そべる女性の上をCGのカニたちが、見て見ぬふりをして通り過ぎる、といった具合である。
どうでもいいが、そのカニは続編があった。その冬の点検キャンペーンのCMだった。今度は暖炉の横でくつろぐ女性の服の中に入ろうと試みるものだった。
「なんでも女性に頼るとは、クリエイターの発想力の欠如だッ!」と怒りながらも、先日はカナリス嬢に気をとられ、縦列の角度を間違えて壁にクルマをぶつけそうになった。インテリジェント・パーキングアシストなら、こんな幻惑はされまい。情けなくなった。
本稿を書くにあたり、ボクはもういちど、良識あるイタリア女性に見解を伺ってみることにした。かかりつけの歯医者さんである。診察が終わったあと、さっそく聞いてみる。
しかし彼女もたいしてこの問題に関心を示さなかった。そればかりか「どうせなら、男の下着姿や水着姿のポスターも貼り出してほしいワ」と言って、ガハハと笑った。
もちろん脇見運転は困る。だが彼女の言うとおり、女性ドライバーが駐車時に気をとられて壁にぶつけるくらいのイケメンモデル下着ポスターが登場すれば、それはそれであっ晴れであろう。
(文=大矢アキオAkio Lorenzo OYA/写真=大矢アキオ、FIAT)

大矢 アキオ
Akio Lorenzo OYA 在イタリアジャーナリスト/コラムニスト。日本の音大でバイオリンを専攻、大学院で芸術学、イタリアの大学院で文化史を修める。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとしてシエナに在住。NHKのイタリア語およびフランス語テキストや、デザイン誌等で執筆活動を展開。NHK『ラジオ深夜便』では、25年間にわたってリポーターを務めあげる。『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり』(コスミック出版)など著書・訳書多数。近著は『シトロエン2CV、DSを手掛けた自動車デザイナー ベルトーニのデザイン活動の軌跡』(三樹書房)。イタリア自動車歴史協会会員。
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