ボルボC30 T-5(FF/5AT)【ブリーフテスト】
ボルボC30 T-5(FF/5AT) 2007.10.18 試乗記 ……426万8000円総合評価……★★★★★
ボルボの新型コンパクトクーペ「C30」。ハイプレッシャーターボエンジンを搭載した最速モデル「T-5」に試乗した。
割り切りの良さが魅力
「C30」の一番の魅力は、やはりスタイリング、特にリアビューだ。最初はちょっと大胆過ぎるかも……とも思ったが、見慣れてくると個性があってとても魅力的に映る。ガラス製のリアゲートを開けた姿も軽快でスタイリッシュ。単なる実用車ではなく若々しく颯爽としたライフスタイルを演出する小道具としてのコンパクトカーなのだというアピールが、ここに見事に集約されている。
その分、実用性は犠牲にされている部分もある。ドアは2枚しかないし、乗車定員は4名。ラゲッジスペースの入口は狭いしその容量も小さい。しかし目的がハッキリしたクルマだけに、それも決定的なネガにはならないだろう。というか、そういう割り切りの良さこそが、C30を魅力的に見せているのだ。
上級モデルである「S40」「V50」と多くの部分を共有しているだけに、走りっぷりもライバルと目されるCセグメントのコンパクトカーたちに対して余裕を感じさせる。試乗した「T-5」のエンジンは排気量2.5リッターのターボユニットで、最高出力は230psに達するが、シャシーはパワーを持て余している感はないし、乗り心地の質も高い。
生活のクオリティにこだわりをもった人ならば、老若男女誰にでもオススメと言える。男性にも似合うだろうし、女性にも若いカップルにもいい。あるいは子供が成人して独立した夫婦にとっても良い選択となるのではないだろうか。
個人的には、先代「NEW MINI」に真っ先に手を伸ばし、そしてそろそろ買い替えをと考えつつも、乗り換える対象が見つけられずにいるなんて人、とりわけ僕と同じ30代前後の女性になんてピッタリの1台ではないかと思う。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
2006年9月に行われたパリモーターショーでデビューした、ボルボの4シーター2ドアクーペ。日本での発売は、2007年6月。ガラス製テールゲートをもつユニークなスタイリングが特徴。ボディサイズは、全長×全幅×全高=4250×1780×1430mmで、ホイールベースは2640mm。最もコンパクトなセダンである「S40」より220mm短く、同じくコンパクトなワゴン「V50」と比べると265mm短い。
エンジンは、170psの2.4リッター直5と、230psの2.5リッター直5ターボの2種類。どちらもマニュアルモード付きの電子制御式5段ATと組み合わされ、前輪を駆動する。足まわりは、フロントがマクファーソン・ストラット、リアがマルチリンク式サスペンションだ。
(グレード概要)
ラインナップは、「2.4i Aktiv」「2.4i SE」「T-5」の3グレード。テスト車は、2.5リッターターボエンジンを搭載するスポーティモデル。 装備面でも充実しており、クルーズコントロールやプレミアムサウンド・オーディオシステム、リアルーフスポイラーなどが標準装備される。
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【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★★
デザインは基本的にS40/V50を踏襲するもの。グローブボックスがほとんど使い物にならない以外は小物入れもまずまず揃っている。
特徴であるフリーフローティングセンタースタックと呼ばれるセンターコンソールは、T-5ではアルミニウム仕上げとなる。「2.4i SE」のライトオークもいかにも北欧テイストで捨て難いが、いずれにせよ雰囲気は上々だ。ただし、ボルボの場合、カーナビゲーションシステムの取り付けには大いに悩まされることになる。一時期導入されていたダッシュ上面に付く格納式のものは日本仕様では今は選べない。なので必然的に後付けということになるのだが、デザインされた空間だけに良い取り付け位置が見つけにくいのだ。もはや日本では必需品なだけに、使い勝手とデザインを両立させた良い解決策を示してほしいところである。
オーディオもスイッチ類が小さく使いやすいとは言えない。しかし、T-5が標準装備とするDYNAUDIO製10スピーカーや650Wデジタルアンプなどから構成されるプレミアムサウンド・オーディオシステムの音の良さには驚いた。重低音と高音を強調したいわゆるドンシャリ系が好きな人には物足りないかもしれないが、繊細かつ暖かみのあるサウンドは、ボルボのユーザー層には響く人も多いに違いない。
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(前席)……★★★★★
他のボルボと変わらず、シートはサイズがたっぷりとしていて座り心地に優れる。肉厚なクッション、肩まですっぽりと包み込むシェイプは、このクラスではなかなか望めないものだ。ポジション調整は8ウェイの電動式で、ランバーサポートのみ手動調整となる。
ガラス面積が広く、また圧迫感の少ないインテリアの造形のおかげで開放感は十分。実際の視界にも優れる。もちろん、あればあったで効果的だが、オプションで設定される、両サイドを通過する車両が死角に入ると警告で知らせる「BLIS(ブラインドスポット・インフォメーション・システム)」がなくても周囲の見切りが良いため、非常に運転しやすい。
標準のシート地は、「T-Tec」と呼ばれる、変わった風合いの合成繊維を使ったもの。すべすべとしていながらサラッともしていて、しかも滑りやすいわけでもない。これもカジュアルな雰囲気で悪くないが、予算に余裕があればぜひオプションのレザーシートを選びたいところ。こちらの革の質感も上々で、クラスを超えた高級感が味わえる。
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(後席)……★★★
2名用と割り切り左右席を独立させた後席は、さすがに広さもサポート性も十分。前席シートバックを抉ってあるため膝の周辺も余裕があるし、座面が高く、またリアクウォーターウインドウが前後に長いため、見晴らしもとても良い。それでいて頭上空間にも、とりたてて不足は感じなかった。
ドアが開かない分、外側のアームレストや物入れも大きいが、欲を言えばしっかり固定できるドリンク専用のホルダーが欲しいところ。また、せっかく2名乗車としたのに、荷室をフルフラットにした時に邪魔にならないようにセンターアームレストの位置を低くし過ぎていて、これが事実上使い物にならないのは残念なところだ。アシストグリップも用意されておらず、空間に余裕がある分、身体が左右に動いてしまうことがあった。ちょっと惜しい感じである。
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(荷室)……★★
デザイン上の特徴になっているガラス製リアゲートを開けると現れるラゲッジスペースは本国仕様の数値で233リッターとかなり小さめ。面積が大きくない上に、下段に小物をしまっておけるよう二重フロア化したことで床が高いせいだろう。開口部自体も下端が高いし幅も狭いが、個性的な外観との引き換えということでガマンするしかない。
もし広いスペースが必要な時には後席シートバックを前倒しすればフルフラットなスペースが生まれる。実際、3人以上での乗車をメインに考えてC30を買う人は少数派だろうから、このあたりは潔く割り切ったということだろう。ただし、それでもラゲッジカバーは標準装備にしてほしいところ。高いフロアの上に置いた荷物が、スモークされているとはいえガラス製のリアゲートを通して見えてしまうのはあまり嬉しくないし、防犯上も好ましくないと思う。
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【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
最高出力230psと高出力のエンジンを積んでいるのに、クルマを受け取ってしばらくの間は、自分が乗っているのって本当にT-5だったっけ? と、自問してしまった。それぐらい、いわゆるターボらしさの薄い自然なフィーリングを実現しているという意味である。
32.6mkgという最大トルクを1500〜5000rpmという幅広い回転域で発生すると謳われているが、低速域での力感はもう少し欲しいと感じた。しかし唐突な飛び出しでパワフル感を演出するよりは何倍もマシというもの。要は必要ならばアクセルを踏み込めばいいだけの話で、ドライバビリティは非常に高い。そうやって回してやれば、やはりさすが230ps。加速の伸びは心地良く、流れをリードするのはたやすい。高速道路でも余裕たっぷりだ。
トランスミッションは5段AT。シーケンシャルモードもついているが、そういうエンジン特性であり、またDレンジでも不満のない変速ぶりを見せてくれるため、ほとんど出番はなかった。
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(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
乗り心地はとてもしなやか。ボルボらしい懐深いストローク感をこのサイズでも味わえるのは高ポイントだ。ただし、T-5は17インチのタイヤを履くため、バネ下重量も軽くはないのだろう。大きな入力に対しては時に抑えが足りずドコドコと突き上げてくる感触もある。このあたりがもうすこし洗練されれば、文句なく上質と表現できる乗り味となるに違いない。
フットワークはホットハッチ的な軽快さこそないものの、エンジン同様スムーズで穏やかなフィーリング。17インチタイヤとはいえ、幅を205サイズに抑えたのもプラスに働いているのだろう。ステアリングフィールもナチュラルで質の高さを感じさせる。
不満はブレーキ。初期制動が甘く、ある一定のところから制動力が立ち上がるため、思ったように減速できないことがあった。もうすこし、踏み始めからリニアに効きが立ち上がってくれたほうが、特に街なかなどでは運転しやすさが増すと思う。
このように、いくつか気になるところはあるが、このC30、走りは総じてコンパクトカーらしからぬ上質さを感じさせるものに仕上がっていると言える。
(写真=荒川正幸)
【テストデータ】
報告者:島下泰久
テスト日:2007年8月11日〜12日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2007年型
テスト車の走行距離:3432km
タイヤ:(前)205/50R17(後)同じ(いずれも、コンチネンタルスポーツコンタクト2)
オプション装備:ベーシックパッケージ(39万8000円)
走行状態:--
テスト距離:--
使用燃料:--
参考燃費:--

島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
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