フォルクスワーゲン・ゴルフ/シャラン ブルーモーションモデル試乗会【試乗記】
控えめなのも味のうち 2012.02.22 試乗記 フォルクスワーゲン・ゴルフTSIトレンドライン ブルーモーション テクノロジー(FF/7AT)/シャランTSIコンフォートライン ブルーモーション テクノロジー(FF/6AT)……292万円/424万1500円
フォルクスワーゲンのエコブランド「ブルーモーション」モデルを集めた試乗会が開かれた。人気の「ゴルフ」と「シャラン」を連れ出し、その走りっぷりを試した。
フォルクスワーゲンの強さ
フォルクスワーゲンが絶好調だ。2011年のグループトータルの世界販売は、目標の大台を突破して816万台を記録した。フォルクスワーゲンブランド単体でも2010年の450万台を大きく超えて509万台に達した。そのなかで、日本の台数は5万とんで631台、と聞くと、日本市場のプレゼンスの低さに驚く。ちなみに中国は225万台。まあ、向こうは国内でつくっているわけだから事情は違うが、ドイツ本国と比べてもすでに2倍近いマーケットに成長している。
しかし、5万台あまりの日本だって成長市場には違いない。2010年は4万6704台だった。東日本大震災があっても、2011年は1割近く販売台数を伸ばしたのである。
さらに2011年の“フォルクスワーゲン・セールス・イン・ジャパン”で目を見張るべきは、全体の85%を占める4万3000台あまりがエコカー減税車だったことである。減税車しか売れなかった、とも言えるが、だからこそこのご時世に伸びたのだ。世界全体からみたら、たった1%にも満たない泡沫(ほうまつ)市場のために、レギュレーションに合ったクルマを迅速に開発して投入できるというのが今のフォルクスワーゲンの強さなのだろう。かたや、オレらの国のクルマが売れないから、軽自動車カテゴリーを撤廃しろ、なんて言ってる国もあるのである。
フォルクスワーゲン車のなかでも、いま最高の環境性能を持つ技術パッケージが“ブルーモーション・テクノロジー”(以下BMT)である。2012年2月21日現在、BMT装備モデルをそろえるフォルクスワーゲンは、「ゴルフ」「パサート」「シャラン」「トゥアレグ」の4車種。このうち、最新のゴルフと、初の装備車として最もBMT歴の長いシャランに試乗してみた。
数値以上のパワー感
日本仕様ゴルフ初のブルーモーション(BMT)は、最もベーシックな1.2リッターの「TSIトレンドライン」に設定された。おさらいすると、BMTパッケージとは、アイドリングストップ機構とブレーキエネルギー回生システムのことである。このふたつを備えるフォルクスワーゲンにはBMTのハンコが押されることになっている。
試乗会場にはスターターとオルタネーター(発電機)とバッテリーが展示されていた。いずれもBMT化のために採用された専用部品である。スターターは、アイドリングストップ機構による頻繁なエンジン再始動に備えて、強化されている。減速エネルギーを効率よく電気に変える新しいオルタネーターは、加速時にはフリーホイールを働かせて発電を控え、パワーロスを減らす。バッテリーも電気の出し入れ能力にすぐれたヘビーデューティー型で、安さに目がくらんで純正品以外に付け替えるなんて、ご法度である。
さて、そのブルーモーション・ゴルフ、乗ってはこれまでのTSIトレンドラインと変わらなかった。もちろんアイドリングストップはゴルフ初お目見えだが、エンジン停止も再始動もごく自然に行われるため、昔からゴルフに付いていたみたいに違和感がなかった。
出力やトルクを始め、エンジンのカタログデータに変化はない。厳密に言うと、オルタネーターを回す負荷が減って、加速時のパワーは向上しているはずだが、体感できるほどではない。そんなことに関係なく、1.2リッター4気筒ターボは、あいかわらず105psという数値が信じられないほど十分に力強い。
BMT化で10・15モード燃費は17.4km/リッターから18.4km/リッターへと約6%向上し、ゴルフ史上最良の燃料経済性を誇る。だが、今回は短時間の試乗だったため、実用燃費を測ることはできなかった。
乗り心地は世界一?
日本仕様のフォルクスワーゲンでBMTを初めて採用したのが7人乗りミニバンのシャランである。1.4リッターのツインチャージャーを共用する「コンフォートライン」と「トレンドライン」、いずれもBMT。車重1.8tを超すミニバンにいち早くBMTを取り入れることで、新しい環境テクノロジー・パッケージのアピールを狙ったのだろうが、コンフォートラインの試乗車に乗ってみると、まず感心するのが乗り心地の良さである。ストローク感たっぷりのサスペンションが、床下でなんともしなやかに、うれしそうに動く。世界一乗り心地の快適なミニバンかもしれない。
ボディー全高は「トヨタ・アルファード」より14cmも低いが、全長はほぼ同じ。1910mmに達する全幅は8cm上回る。「ゴルフトゥーラン」のサードシートは子ども用だが、このサイズともなると掛け値なく大人7人が座れる。
そんなフルサイズミニバンが、ターボ+スーパーチャージャーの二刀流とはいえ、たかだか1.4リッターの4気筒で動くのだから痛快だ。ゼロ発進からグワッと一気にスピードにのせる力強さは、フォルクスワーゲンの1.4リッター直噴過給ユニットに共通で、150psのこれもパワーに不足はない。運転していて、ボディーサイズほど大きさを感じさせないのも、レスポンスの速いこのパワーユニットなればこそだろう。
しかし、外観に押し出しの強さや派手さは一切ない。ビーチに「スーツで来ちゃったのォ!?」みたいなカタチだ。けれども、これだけ中身がいいと、控えめなスタイリングもかえって“味”かもしれない。
(文=下野康史/写真=高橋信宏)
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下野 康史
自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。
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