第81回:「日産プリメーラ」の勇壮で知的なかたち
2007.09.01 広告のススメ第81回:「日産プリメーラ」の勇壮で知的なかたち
知性のカタチ
自動車の広告によく見られる、美しい風景とともにあるイメージ広告。郊外の明るい陽射しをキラキラあびながら、あるいは木漏れ日を艶やかなボディに映して、ゆうゆうと走る……。そんな映像が思い浮かぶ。そこは日常の雑事などない、ゴージャスな世界だ。クルマはいつも、豊かさのシンボル、あこがれの対象として、美しく描かれてきた。
日産プリメーラの広告も、そういった線上にあるものだが、タダの自然風景ではないのが特徴だ。まるで海の上を走るかのように、イルカが波をけたててクルマを追いかけてくる。背景のクラシカルな街並みの効果もあり、日常をくつがえし、想像力で楽しませてくれる。
ところで、なぜイルカなのか? といぶかる人がいるかもしれない。もちろん、その勇壮な姿をクルマと重ね合わせたかったこともあろうが、もう1つの答えと思われる言葉が、コピーにある。
「A NEW FORM OF INTELLIGENCE.」〜新しい知性のかたち〜
どうやら、知性のアイコンとして、イルカを起用したようだ。
たしかに、イルカはほ乳類のなかでも高い知性をもち、脳みそも大きくて記憶力がいい。いろんな芸も見せてくれる。そんなイルカたちと走らせることで、プリメーラの「知性」を感じさせようとする広告なのだ。ちなみに、ターゲットは「組織のなかにいながらも、個人の生き方を模索する人々」だという。あなたはいかがでしょう?
豊かさのシンボルであったクルマに、さらに知性のシンボルも加えようとするプリメーラ。それはともかく、この広告は、知性をくすぐる楽しい広告表現だといえよう。
制作:TBWA/Paris
(文=金子秀之/2004年2月14日)

金子 秀之
早稲田大学商学部卒業。資生堂のアートディレクターとして前田美波里のサマーキャンペーンを担当。1973年博報堂のクリエイティブ・ディレクターとして、サントリーの「ブランディ水で割ったらアメリカン」キャンペーンを手がける。1993年(有)クエスターを設立。広告製作及び海外広告の紹介をして現在にいたる。
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