「ホンダコレクションホール開館20周年記念展示」の会場から
2018.03.22 画像・写真栃木県のツインリンクもてぎ内にある博物館、ホンダコレクションホールが開館したのは、本田技研工業の設立50周年となった1998年のこと。以来、市販車や汎用(はんよう)品に加え、ホンダの歴史には欠かせない二輪および四輪のレース車をゆっくりと見学できる博物館として多くの人に親しまれている。
その設立20周年を迎えた2018年、ホンダの創世期の歴史を製品とともに振り返る新展示「Honda 夢と挑戦の軌跡」が3月17日より一般公開された。これを記念して、3月17日と18日の2日間、ホンダコレクションホールに動態保存される車両の中から、「スーパーカブC100」や「シビックCVCC」などエポックメーキングなモデルたちのデモンストレーションランを実施。そのもようと、新展示の中身も合わせて紹介する
(文と写真=大音安弘)
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2/46ホンダコレクションホール開館20周年の新展示「Honda 夢と挑戦の軌跡」の公開を記念し、展示内容と結びつきが強いホンダ車のデモンストレーション走行が実施された。
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3/461947年「ホンダA型」。戦後、陸軍が使用していた無線機の発電用エンジンを自転車用補助エンジンに利用するアイデアが大当たりし、入手した500基ものエンジンはすぐに完売。それがホンダ初の自社製エンジンA型の開発へとつながった。
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4/46「ホンダA型」は、エンジン、駆動ベルト、燃料タンクなどがホンダ製で、構造は極めてシンプル。自転車自体は市販のものを使用しており、ブレーキも自転車用のままだった。
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5/46「A型」のベルトドライブ部に刻まれた「H・G・K」は、本田技研工業の頭文字をとったもの。軸部や駆動カバーのデザインは、ホンダ二輪の翼をモチーフにしたエンブレムのものを取り入れているようだ。
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6/461960年「スーパーカブC100」。スーパーカブC100は1958年8月に発売。2017年に誕生60周年を迎え、10月には総生産台数1億台を突破した、日本が誇るベストセラーバイクだ。実用車としての燃費や耐久性、扱いやすさを重視し、当時としては画期的な4ストロークエンジンを当初から搭載した。
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7/46メーターが象徴するように装備や操作系はシンプル。しかしながら、遠心クラッチ付き変速機を搭載するなど、メカニズムは凝っており、誰でも安全に運転できる使いやすさを実現していた。
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8/46フロントの樹脂製カバーも当時としては画期的で、現在に受け継がれる「スーパーカブ」のアイコンでもある。その後、ライト位置がステアリング中央に変更されたが、スーパーカブらしいスタイルそのものは今なお変わらない。
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9/461969年「ドリームCB750 FOUR」。世界初の量産並列4気筒OHCエンジンを搭載。750㏄バイクを“ナナハン”と呼ぶのも、このバイクに由来するもの。日本での大ヒットに加え、日本の大型バイクが世界的に認められるきっかけともなった。
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10/46ボディーサイドの「750」と「ホンダウイング」を組み合わせたエンブレムが誇らしげだ。当時、1ドル=360円の固定相場だったことから、輸出では「スーパーカブ」とともにホンダに莫大(ばくだい)な利益をもたらし、ホンダの四輪事業拡大を陰で支えた。
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11/461964年「ホンダS600」。ホンダ初の市販乗用車「S500」の改良型として投入された。多くの部分をS500と共有するが、最大の違いは、531ccから606㏄までスープアップされたエンジンだ。
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12/46すっきりしているが、実に美しいスタイルを持つ。トランクスペースは意外と広く、床下にはスペアタイヤを収納可能。このスペース確保のために、四輪車では珍しいチェーンアクスルを採用した独立懸架リアサスペンションを備えていた。
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13/46コックピットは、英国ライトウェイトスポーツカーをほうふつさせるもの。トランスミッションは4段MT。オープンカーであることを考慮してか、しっかりとしたグローブボックスなどのふた付き収納を備える。
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14/46「S600」に搭載される「AS285E」エンジン。606㏄の4気筒DOHCで、最高質力57ps/8500rpm、最大トルク5.2kgm/5500rpmを発生した。
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15/46レッドゾーンが9500rpm(!)からという、1万1000rpmまで刻まれたタコメーター。「S600」のエンジンがいかに超高回転型だったかが分かる。メーターには「DENSO JAPAN」の文字が刻まれる。
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16/461973年「ホンダ・シビックCVCC」。当時、最も厳しい米国の排ガス規制「マスキー法」をクリアした最初のモデルとして有名。このエンジンは、若手技術者を中心に開発された。その成果に若手の成長を感じたのか、ホンダ創立25周年を迎えた同年に、社長の本田宗一郎と副社長の藤澤武夫がそろって退任した。
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17/46「シビック」のボディーは、5ドアのハッチバック風だが、「クラシックMINI」と同じくトランクが独立式なのも特徴。この他にテールゲート付きの正統なハッチバックも設定されていた。
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18/46「シビック」の水平基調の実用的なコクピット。トランスミッションは、4段MTだ。
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19/46本革のような、温かみのある色合いのビニールレザーシート。シックなデザインで上品さが感じられる。
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20/46フラットな座面の後席。トランク付きなのでセダン風となっている。運転席シートの背面に、ビルトインスモーカーボックスを備えている。
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21/46「シビック」に搭載された低公害エンジンの「CVCC」は、副燃焼室を採用しているのが特徴。燃料をきれいに燃やすリーンバーンエンジンで、世界的に注目を集めた。
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22/46「A型」のデモラン。バッテリーレスなので、自転車のようにペダルをこぎながらエンジンを始動する。走りはかなりスムーズで速い。ただ、ブレーキはベースの自転車と同じなので、停車時にまずエンジンを止める必要がある。運転には慣れが必要だ。
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23/46「スーパーカブC100」のデモラン。そのライディングスタイルは、世代を超えて変わらない。軽快な心地よいエンジン音を響かせて走っていた。
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24/46「ドリームCB750 FOUR」のデモラン。ゆったりとした走行でも、スポーツバイクらしい力強さを感じさせる。
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25/46「S600」のデモラン。「S800」と比べて愛らしい顔立ちが魅力。エンジンが小さいため、低速走行でも心地よいサウンドが楽しめるそう。当日も軽やかな“ホンダミュージック”を奏でていた。
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26/46懐かしい初代「シビック」は本当に静か。見学に訪れた人たちの中には、当時を知る人がいたようで、シビック談義に花を咲かせていた。
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27/461日に2度行われたデモランには老若男女が集い、カメラやスマホを使って往年の名車たちの走りを収めていた。当時のことを知らない若い世代の観覧者も多く、スタッフに車両やそのメカニズムについて質問する光景も見受けられた。
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28/46ホンダコレクションホール1階北棟では、開館20周年を記念した「Honda 夢と挑戦の軌跡」の新展示コーナーを設置。本田宗一郎と企業としてのホンダおよび製品の歩みが、ひと目で分かるようになっている。写真は、若き本田宗一郎が製作に携わったレーサー「カーチス号」。
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29/46自転車補助エンジンとして発売された「カブ号 F型」の梱包(こんぽう)を再現したもの。当時まだ珍しかった専用段ボール箱の中に、エンジン、燃料タンク、取り付けパーツセットが収められ、全国の自転車店に出荷された。
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30/46ホンダ初の本格二輪車「ドリームD型」。当時一般的だった鋼管フレームではなく、量産性を考慮したプレス鋼板のチャンネルフレームを採用。黒いバイクがほとんどという中、美しいマルーン色の車体も注目された。チェンジペダルのみで変速可能な2段トランスミッションを搭載し、この機構が、のちに「スーパーカブ」に採用される自動遠心クラッチへとつながった。
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31/46本田宗一郎の「ホンダの技術で農家の負担を軽減させたい」との思いから汎用(はんよう)エンジンも開発された。写真は1958年に発売された、空冷4ストロークの「VNC」エンジン。小型軽量で耕うん機などに簡単に取り付けられた。
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32/46ホンダは、二輪で培った技術を農機具にも応用。当時、小型耕うん機には、2ストロークエンジンが一般的だったのに対して、長時間の酷使にも耐える4ストローク80cc単気筒エンジンを搭載した「F60」を1961年に発売。操作系にも「スーパーカブ」など実用バイクの技術を投入し、扱いやすいものとしていた。
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33/461959年「ホンダRC142」は、ロードレース世界選手権の中で最もメジャーなマン島TTレースに送り込まれたモデル。初挑戦で6位に輝き、メーカーチーム賞を獲得。これが、ホンダの名を世界にとどろかせたロードレース世界選手権へのフル参戦につながった。
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34/461962年「スーパーカブCA100」。この輸出仕様のスーパーカブは、アメリカでの「バイクは無法者の乗りもの」というイメージを一変させる大ヒット。人気バンドのビーチボーイズが、CA100をテーマにした『リトルホンダ』という人気曲を生み出した。
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35/461962年「ホンダ・スポーツ360」。ホンダ初の四輪車として、1962年開催の第9回全日本自動車ショーに出展された。当時の軽規格に収まるモデルで、エンジンはレーシングカー並みの直列4気筒DOHCということで話題となった。その後、発展型となる「S500」が発売され、S360はお蔵入りとなったが、2013年に復元車を作成。一部パーツは、保存されていた当時の部品が使われているという。
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36/46「S600」とは違った雰囲気が漂う「スポーツ360」のコクピット。見比べてみると、やはり軽規格であるS360の方が、タイトなデザインとなっているのが分かる。
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37/46開館20周年記念リクエスト展示の様子。第1弾の「群雄割拠 SUPER GTの覇者たち」は、2018年6月13日(水)まで開催され、ホンダコレクションホールでのSUPER GT展示企画は、今回が初となる。
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38/463階のフロア中央には、「レクサスZENT CERUMO SC430」(2008年・手前側)と「ホンダRAYBRIG HSV-010」(2013年・中央側)が展示されていた。
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39/463階のフロア中央には、「レクサスZENT CERUMO SC430」(2008年・手前側)と「ホンダRAYBRIG HSV-010」(2013年・中央側)が展示されていた。
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40/46同じく3階には、「NISMO MOTUL AUTECH日産GT-R」(2013年・手前側)と「LEXUS PETRONAS TOM'S SC430」(2013年・奥側)が飾られ、計4台のSUPER GT参戦車両を見ることができる。
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41/462階北棟には、四輪市販車と汎用(はんよう)製品が展示される。「S800」の心臓を持つ珍しい商用トラック「ホンダP800」など珍しい車種の姿も。
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42/46チャンピオンシップホワイトのボディーがまぶしい、第1世代の「タイプR」3兄弟。
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43/462階南棟には、二輪市販車が展示される。スポーツバイクだけでなく、「スーパーカブ」などの実用車も並んでいる。さらに、当時のライバル車たちも同席している。
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44/463F北棟は四輪競技車コーナー。ホンダのF1の歴史に加え、“ハコ車”レースへの取り組みを振り返ることができる。
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45/46ホンダの世界進出の原点ともいえる二輪競技車の展示も充実。レーサーからモトクロスまで幅広くそろう。
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46/462018年で開館20周年を迎えたホンダコレクションホール。入館は無料だが、ツインリンクもてぎへの入場料は必要となる。営業時間は9時半~17時。休館日などはツインリンクもてぎのオフィシャルWEBサイトでご確認を。