クラシックカーイベント「横浜ヒストリックカーデイ9th」の会場から
2020.11.11 画像・写真2020年11月7日、神奈川県横浜市の横浜赤レンガ倉庫イベント広場で、「横浜ヒストリックカーデイ 9th」が開かれた。「一日限りの青空展覧会」とうたったこのイベントは、歴史遺産である赤レンガ倉庫を舞台にヒストリックカーを展示することで、その魅力や文化を次世代に伝えたいという思いから、横浜在住の旧車愛好家が2012年に始めたもの。以来、有志による非営利イベントとして回を重ねてきた。今回は新型コロナウイルス感染症の影響から、当然ながら中止も検討されたが、最終的に開催の運びとなった。
初回以来不変の参加規定は、1974年までに生産された、オリジナルの雰囲気を損なっていない国内外の車両(特認車両あり)。今回のエントリーはリストによれば例年とほぼ同じ152台だったが、やはり時節柄1割前後の参加キャンセルがあったようである。それでも今回のテーマカーであるセダンをはじめ、生産国やタイプ、サイズなどバラエティーに富んだクラシックカーが100台以上並んだ会場に寂しさはみじんも感じられず、居合わせた人々の目を楽しませた。
不可抗力により中止せざるを得ず、準備に要した時間と労力が無駄になり、経済的負担がのしかかるかもしれない……というリスクを覚悟の上で開催を実現した主催スタッフに感謝しつつ、会場に集まった車両の一部を紹介しよう。
(文と写真=沼田 亨)
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1/40会場中央付近には、今回のテーマカーであるセダンが並べられた。前列は1950~70年代のメルセデス・ベンツ車。
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2/40会場への誘導路を進む1933年「MG J2」。847ccの直4 OHVクロスフローエンジンを積んだ、ライトウェイトスポーツの原点ともいえるモデル。
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3/401952年「ダットサン・スポーツDC3」。日本で初めて車名に「スポーツ」を冠した、「フェアレディ」のルーツとなるモデル。お手本としたのは前出のMGだが、トラックと共通のシャシーを使っているため腰高だ。
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4/401955年「ジャガーXK120」。スポーツカーメイクとしてのジャガーの名を確立したハイパフォーマンスモデル。3.4リッター直6 DOHCのXKユニットを搭載。
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5/401969年「ロータス・セブンSr3」。ケータハムではなく本家ロータスのセブン。この個体は通称“ケント・ユニット”こと英国フォードのOHVではなく、ロータス・ツインカムを積んでいた。
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6/401963年「フォード・アングリア スーパー」。1959年にデビューし、初代「エスコート」が登場する68年まで英国フォードのボトムレンジを担ったモデル。この個体はニューエンパイヤモーター(当時のインポーター)による正規輸入車である。
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7/401963年「アルファ・ロメオ・ジュリア スパイダー」。「ジュリエッタ スパイダー」のボディーに1.6リッターエンジンを積んだジュリア版スパイダー。ジュリエッタとの識別点はボンネットのエアスクープ。
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8/401969年「アルファ・ロメオ1750GTV」。右ハンドルにフェンダーミラーということは、インポーターだった伊藤忠自動車による正規輸入車であろう。
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9/401969年「アウトビアンキ・ビアンキーナ カブリオレ」。“ヌオーバチンクエチェント”こと2代目「フィアット500」のシャシーに独自のボディーを載せた高級ミニカー。このカブリオレのほか「クアトロポスティ」(4人乗りベルリーナ)と「パノラミカ」(ワゴン)も存在する。
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10/401957年「フォルクスワーゲン・タイプ1カブリオレ」。上品なベージュをまとったオーバルウィンドウ時代のカブリオレ。
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11/40前出の「タイプ1カブリオレ」のインテリア。籐(とう)のトレイと季節に合わせてどんぐりを挿した花瓶がオシャレ。
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12/401970年代にはやった、1940年フォード風の顔つきにカスタムされた1974年「フォルクスワーゲン・タイプ1」。ほかに1937年フォード風などのキットも存在した。
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13/401955年「フォード・サンダーバード」。俗に“ベビーバード”と呼ばれる初代サンダーバード。4.8リッターV8搭載の2座コンバーチブルだった。
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14/401963年「フォード・フェアレーン500」。インターミディエート(中間サイズ)のモデルで、この個体はかつてアメリカ人が好きだった2ドアセダンである。
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15/40前出の「フェアレーン500」に施されたアメリカンな演出。ドライブインシアターで供された体のハンバーガー&ポテトとA&Wのルートビア。
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16/401968年「ダッジ・コロネット」。インターミディエートの2ドアハードトップ。中間サイズとはいえ全長は5.2m近く、全幅は1.9m以上。
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17/40エクステリア同様、グリーン系でまとめられた前出の「ダッジ・コロネット」のインテリア。2ドアハードトップでも前席ベンチシート(後席の乗降のためバックレストは分割して前傾するが)+コラムシフトであるところがアメリカン。
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18/401970年「プリマス・クーダ440-6」。2バレルのキャブレターを3連装して6バレル=シックスパックの440立方インチ(7.2リッター)のV8エンジンを積んだ強烈なマッスルカー。
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19/401959年「日産オースチンA50ケンブリッジ」。日産がライセンス生産していた英国オースチンの1.5リッター級サルーン。この顔つきを見て「『Mini』のマネしてる!」と叫んだ若い女性がいたとか。気持ちはわかるが、こちらが兄貴。
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20/401967年「トヨタ・パブリカ800デラックス」。フロントグリルに空冷エンジンのオーバークール防止用のジャケットを装着。スポーティーなヘッドライトカバーも備わるが、これはヘッドライトの前に雪が積もることを防ぐ寒冷地用の純正オプション。
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21/401967年「トヨタ・カローラ1100 4ドアデラックス」。初代カローラは1966年11月にまず2ドアセダンがデビュー、翌67年5月に4ドアセダンが加わった。つまりこの個体は最初期のカローラ4ドアである。
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22/401963年「トヨペット・クラウン デラックス」。1962年にデビューした2代目クラウンの初期型の、トヨグライドと名乗る2段セミAT仕様。2ペダルではあるが、1速と2速の変速は自動ではなく手動で行う必要がある。
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23/40前出の「クラウン デラックス」のシート。ラメ入りの虎柄のような生地は、見ようによってはヤンキー系カスタムのようだが、純正である。それはともかく、破れやほつれがまったくなく、すばらしい状態を保っている。
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24/401966年「プリンス・グロリア6ワゴン」。名称はワゴンだが、実は4ナンバーの商用バン(この個体は5ナンバーで再登録されているが)。ちなみに5ナンバーのワゴン仕様もあり、そちらの名称は「グロリア6エステート」。
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25/401965年「日産セドリック エステートワゴン」。前出の「オースチンA50」のライセンス生産から得たノウハウをベースに生まれた初代セドリックの最終型の乗用ワゴン。1.9リッター直4 OHVエンジンを搭載。
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26/40「セドリック エステートワゴン」は後ろ向きのサードシートを備えた3列シート(3+3+2)の8人乗りだった。リアウィンドウは電動開閉式で、下方開き式のテールゲートに収まる(ウィンドウを下げないとテールゲートは開かない)。
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27/401971年「日産セドリック ハードトップ2000GL」。「グロリア」と双子車となった3代目、230型の2ドアハードトップ。翌72年にセドリック/グロリアには日本初の4ドアハードトップが追加設定され、そちらに人気が移行したため、2ドアの残存車両は少ない。
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28/401966年「プリンス・スカイライン2000GT-B」。ファンの間ではS54Bの型式名で呼ばれる初代スカG。「スカイライン1500」のノーズを20cm延ばし、ウエーバーのツインチョークキャブを3連装した「グロリア」用の2リッター直6 SOHCエンジンを無理やり押し込んでいる。
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29/401967年「三菱コルト1100デラックス」。質実剛健でシャレっ気が皆無だったころの三菱のセダン。残存車両は非常に希少である。
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30/40会場に並んだ前出の「コルト1100デラックス」と「スカイライン2000GT-B」。前者のベースとなった「コルト1000デラックス」と後者のベースとなった「スカイライン1500デラックス」はそろって1963年にデビューしたが、ご覧のように後ろ姿がよく似ていた。
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31/402台並んだ1965年「ダットサン・ブルーバード1600SSS」(R411)。“Super Sport Sedan”の頭文字だった、ブルーバードの高性能グレードの名称である“SSS”を最初に冠したモデル。その初期型が並んだ貴重な光景。
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32/40ラリー仕様風に仕立てられた「ブルーバード1600SSS」のインパネ。タコメーターを含む3連円形メーターを収めたメーターナセルは1600SSS専用だが、(中央の「SSS」エンブレムを除き)ステアリングホイールはノーマルのセダンと共通。
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33/401962年「ダットサン・ブルーバード エステートワゴン」(WP312)。初代ブルーバードに設定された5ナンバーの乗用ワゴン。1950年代から対米輸出を意識していた日産は、ワゴンづくりの先駆的存在だった。
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34/40手前は1973年「日産フェアレディ240ZG」、隣の2台は75年と77年の「フェアレディZ 2by2」。2シーターと2by2のルーフラインの違いがおわかりいただけるだろう。
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35/402台並んだ「メルセデス・ベンツ200」(W115)。左はSAE規格のヘッドライトを持つ(異形ライトは許されなかった)北米仕様(1968年)で、右は欧州仕様(1970年)。現在の「Eクラス」のルーツだが、「190E」(W201)の出現以前はコンパクトと呼ばれていた。
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36/40数多く参加した「Mini」の中で異彩を放っていた2台の「イノチェンティMini」。イタリアでライセンス生産されたモデルで、本国版とは異なる独自のディテールを持つ。左は1973年「Mini 1001エクスポート」、右は同じく73年「Miniクーパー1300」。
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37/40「イノチェンティMIni 1001エクスポート」の室内。ウッドリムのステアリングホイールや木目化粧板張りのメーターパネルなど、本国版より高級な仕立て。
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38/40通りに面した最前列にはアメリカンテイストなクルマが数多く並んでいた。手前はビンテージのスキーをキャリアに積んだ、珍しい「タイプ3」ベースの1969年「フォルクスワーゲン・カルマンギア1600」。奥は1970年「シボレー・エルカミーノSS396」。エルカミーノはフルサイズのシボレー(乗用車)がベースのピックアップだが、これは396立方インチ(6.5リッター)のV8を積んだハイパフォーマンス仕様。
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39/40「MGミジェット」「トライアンフ・スピットファイア」「トライアンフTR4」などの英国製ライトウェイトオープンスポーツが並んだ一角。
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40/40手前から「ローバー110」、3台の「ジャガーMk2」と1960年代の英国製アッパーミドルサルーンが並ぶ。
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