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「アルファ・ロメオ・ジュニア」は名門ブランド再興の立役者になれるのか?

2025.11.20 デイリーコラム 櫻井 健一
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アルファ・ロメオ初のBセグSUV

2025年6月24日に日本導入が発表されたアルファ・ロメオの新型コンパクトSUV「ジュニア」。同ブランド初のBセグメントSUVとして期待されたニューモデルは、日本市場でどのような評価を得ているのか。導入から半年がたとうとしている今、あらためて確認してみたい。

ジュニアの名称は、1960年代に登場した「GT 1300ジュニア」に由来する。しかし、今回の新型ジュニアは初めからジュニアであったわけではなく、車名がジュニアになったのは、イタリア政府から物言いがついたからだ。その経緯はイタリア在住のジャーナリスト、大矢アキオさんの連載記事『第856回:「アルファ・ロメオ・ミラノ」から「ジュニア」に改名 本国イタリア人が気にしない理由』(参照)に明るいのでそちらをご覧いただきたいが、当初ステランティスは、アルファ・ロメオブランドの新型コンパクトSUVを「ミラノ」の車名でリリースした。

そしてイタリアの企業およびメイドインイタリー省からの横や……いや、指摘を受けて、2024年4月10日のグローバルデビューからわずか5日でミラノはジュニアになった。ステランティスのポーランド・ティヒ工場で製造されるのに、イタリアを代表する都市名を車名として名乗るのはいかがなものか、というのがイタリア政府の主張であったと聞く。

前述のとおり、日本にはグローバルデビューの翌年となる2025年6月24日に上陸。6月24日はアルファ・ロメオがミラノで創業された記念日で、2025年のこの日は創立115周年記念日にあたった。

随所にアルファ・ロメオの伝統的なデザインを取り入れたと説明されるジュニアのエクステリアは、いかにもモダンなアルファ・ロメオだ。フロントのセンターにはアルファ・ロメオでお約束のスクデット=盾型のグリルが置かれ、リアはコーダトロンカと呼ばれる後端をスパッと断ち切ったようなデザインが特徴的だ。

2025年6月に国内への導入が発表されたアルファ・ロメオの新型コンパクトSUV「ジュニア」。車名は1960年代に登場した「GT 1300ジュニア」に由来する。
2025年6月に国内への導入が発表されたアルファ・ロメオの新型コンパクトSUV「ジュニア」。車名は1960年代に登場した「GT 1300ジュニア」に由来する。拡大
「アルファ・ロメオ・ジュニア」のフロントフェイス。横一列に並んだ三眼ヘッドランプや進化した盾型のフロントグリルなどで、アルファ・ロメオらしい個性を主張する。
「アルファ・ロメオ・ジュニア」のフロントフェイス。横一列に並んだ三眼ヘッドランプや進化した盾型のフロントグリルなどで、アルファ・ロメオらしい個性を主張する。拡大
インストゥルメントパネルのセンターがドライバー側を向くコックピットデザインは、アルファ・ロメオの伝統。10.25インチのタッチ式センターディスプレイに組み込まれたインフォテインメントシステムは、Apple CarPlayおよびAndroid Autoに対応している。
インストゥルメントパネルのセンターがドライバー側を向くコックピットデザインは、アルファ・ロメオの伝統。10.25インチのタッチ式センターディスプレイに組み込まれたインフォテインメントシステムは、Apple CarPlayおよびAndroid Autoに対応している。拡大
リアドアのアウターハンドルをウィンドウ後端に配置。Cピラーには、ビシォーネ(蛇)があしらわれている。エントリーグレードの「コア」を除く車両の外板色は、全車ボディーカラーとブラックルーフのツートンカラーが標準仕様となる。
リアドアのアウターハンドルをウィンドウ後端に配置。Cピラーには、ビシォーネ(蛇)があしらわれている。エントリーグレードの「コア」を除く車両の外板色は、全車ボディーカラーとブラックルーフのツートンカラーが標準仕様となる。拡大
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“らしさ”の表現に欠かせないビジュアル

いっぽうのインテリアは、ドライバーに向けてレイアウトされたインストゥルメントパネルとセンターコンソールの配置がアルファ・ロメオらしさを印象づける。メーターパネルは横長の液晶ディスプレイだが、こちらもアルファ・ロメオでおなじみとなるテレスコープデザインのメーターカバーで覆われている。中心に赤いビシォーネ(蛇)があしらわれた四つ葉のクローバーを模したというエアコンの吹き出し口も、ファンにはうれしいこだわりのアイテムであろう。こうした内外装での“らしさ”の演出にぬかりはない。

日本導入イベントでアルファ・ロメオチェントロスティーレのチーフエクステリアデザイナー、ボブ・ロムケス氏は、「エモーショナルでストレートでもある(ジュニアのエクステリア)デザインは、クルマのある生活の喜びやスピード、美しさを表現。若々しく俊敏で革新にあふれています」と、その特徴を紹介した。

「三眼ヘッドランプや盾型のグリルとった伝統の意匠はアルファ・ロメオらしさの表現には欠かせないキービジュアルです。それともうひとつ。日本仕様の場合は(向かって)右側にオフセットしたライセンスプレートのポジションも、アルファ・ロメオをアルファ・ロメオらしくみせる要素のひとつ。これらがそろって、ブランニューモデルのジュニアがだれの目にもアルファ・ロメオとして映るのです」と、ロムケス氏。ちなみに欧州仕様車では、フロントスポイラーのかなり低い位置に横長のライセンスプレートが備わる。

2種類の異なるグリルデザインが採用されているのもジュニアの特徴だ。ロムケス氏は、「電動化の時代に向けた新たな主張」とそのデザインを説明する。ミラノ市の紋章に由来する赤十字とビシォーネをシンプルに解釈し、彫刻的に仕上げたのが電気自動車の「エレットリカ」と台数200台の導入記念モデル「イブリダ スペチアーレ」に採用された「プログレッソ」と呼ばれるデザイン。メッシュグリルに筆記体で「Alfa Romeo」のロゴが並んだ「レジェンダ」は、クラシカルな趣をイブリダにトッピングする。

「イブリダのスクデットは伝統を、エレットリカは革新を表現しています。アルファ・ロメオの歴史に敬意を払いながら、前に進むことを、この異なるスクデットで示しました」とロムケス氏は述べる。

「アルファ・ロメオ・ジュニア」のデザインスケッチ。リアエンドはイタリア語で「切り落とされた尾」を意味するコーダトロンカと呼ばれる特徴的なデザインが採用された。
「アルファ・ロメオ・ジュニア」のデザインスケッチ。リアエンドはイタリア語で「切り落とされた尾」を意味するコーダトロンカと呼ばれる特徴的なデザインが採用された。拡大
「ジュニア」の日本導入イベントで、デザインのポイントを紹介するアルファ・ロメオチェントロスティーレのチーフエクステリアデザイナー、ボブ・ロムケス氏。
「ジュニア」の日本導入イベントで、デザインのポイントを紹介するアルファ・ロメオチェントロスティーレのチーフエクステリアデザイナー、ボブ・ロムケス氏。拡大
ボブ・ロムケス氏は「三眼ヘッドランプや盾型のグリルとった伝統の意匠はアルファ・ロメオらしさの表現には欠かせないキービジュアルです」と「ジュニア」のデザインを説明。デザインスケッチでは、台形のフォルムやワイドなスタンスが強調されている。
ボブ・ロムケス氏は「三眼ヘッドランプや盾型のグリルとった伝統の意匠はアルファ・ロメオらしさの表現には欠かせないキービジュアルです」と「ジュニア」のデザインを説明。デザインスケッチでは、台形のフォルムやワイドなスタンスが強調されている。拡大
インテリアのデザインスケッチ。水平基調のダッシュボードパネルから突き出た、ふたつのメーターカバーが確認できる。これもアルファ・ロメオをよりそれらしく印象づけるポイントだ。
インテリアのデザインスケッチ。水平基調のダッシュボードパネルから突き出た、ふたつのメーターカバーが確認できる。これもアルファ・ロメオをよりそれらしく印象づけるポイントだ。拡大
テレホンダイヤルをモチーフとした意匠が現代風にアレンジされた「ジュニア」の18インチホイール。リム部にまで及ぶ5つの円が、均等に重なるよう配置されている。
テレホンダイヤルをモチーフとした意匠が現代風にアレンジされた「ジュニア」の18インチホイール。リム部にまで及ぶ5つの円が、均等に重なるよう配置されている。拡大

戦略的な価格も大きな武器に

ジュニアはすでに38カ国で販売され、4万5000台以上を受注したという(2025年8月時点での実績)。そのうちの17%が電気自動車のエリットリカだという事実はなかなか興味深い。日本やオーストラリアに続き、今後はアジア・太平洋地域の主要市場にもジュニアを投入し、さらなる販売拡大を目指すとしている。

アルファ・ロメオブランドは、地元欧州でも好調だ。2024年の上半期との比較ではフランスで51%増、イギリスで50%増、本国イタリアで35%増、オランダではなんと200%増を記録。主要市場での好調な業績を背景に、欧州での登録台数は前年比の33.3%増で推移している。グローバルにおいては、20%増の成長と説明される。

目を引くのは51%増を記録したフランス市場。同国では血縁関係にある「プジョー2008」や「シトロエンC3」を差し置いて、ジュニアがセグメントリーダーに躍り出たというから、その人気は本物と判断してもよさそうだ。

ただ日本では、「ジュニアの在庫がない」「納車まで時間がかかる」「最近よく街で見かける」といった人気車にあって当たり前の話題は聞こえてこない。ステランティスはブランド別の販売データは公表しているが、車種別の情報を明らかにしていないので、導入からこれまでに何台ジュニアが販売されたのかは不明だ。そこで日本自動車輸入組合のデータを見ると、アルファ・ロメオの2025年上半期(4月~9月)は、前年同月比で倍近い865台の販売実績であったことがわかる。

その詳細を調べると、販売台数は2025年4月が49台、同年5月が63台、以下、ジュニアの導入が発表された6月が158台、7月が142台、8月が162台、9月が291台、10月が149台と続く。安定した3ケタの販売台数の立役者が、ジュニアであることは疑う余地もない。

爆発的ではないが、静かに売り上げを伸ばしているジュニア。割高と言われることが多い輸入車にあって「本国と半年近く折衝し、戦略的な値づけを実現した」(ステランティス ジャパン アルファ・ロメオ事業部 事業部長 黒川進一氏)というその価格も、大きな武器になっているのかもしれない。

(文=櫻井健一/写真=ステランティス ジャパン、webCG/編集=櫻井健一)

「ジュニア」のボディーサイズは全長×全幅×全高=4195×1780×1585mm、ホイールベースは2560mm。サイズ感は「トヨタ・ヤリス クロス」や「フォルクスワーゲンTクロス」に近い。
「ジュニア」のボディーサイズは全長×全幅×全高=4195×1780×1585mm、ホイールベースは2560mm。サイズ感は「トヨタ・ヤリス クロス」や「フォルクスワーゲンTクロス」に近い。拡大
電気自動車の「エレットリカ」(写真)と台数200台の導入記念モデル「イブリダ スペチアーレ」には、ミラノ市の紋章に由来する赤十字とビシォーネをシンプルに解釈し、彫刻的に仕上げた「プログレッソ」と呼ばれるデザインのフロントグリルが採用される。
電気自動車の「エレットリカ」(写真)と台数200台の導入記念モデル「イブリダ スペチアーレ」には、ミラノ市の紋章に由来する赤十字とビシォーネをシンプルに解釈し、彫刻的に仕上げた「プログレッソ」と呼ばれるデザインのフロントグリルが採用される。拡大
マイルドハイブリッド車の「イブリダ プレミアム」と「イブリダ コア」には、戦前のアルファ・ロメオ車のグリルをモチーフにしたと説明されるグリルを採用。「レジェンダ」と呼ばれるそのデザインは、メッシュグリルに斜めに取り付けられたクラシカルな「Alfa Romeo」のロゴが特徴だ。
マイルドハイブリッド車の「イブリダ プレミアム」と「イブリダ コア」には、戦前のアルファ・ロメオ車のグリルをモチーフにしたと説明されるグリルを採用。「レジェンダ」と呼ばれるそのデザインは、メッシュグリルに斜めに取り付けられたクラシカルな「Alfa Romeo」のロゴが特徴だ。拡大
ブラックを基調としたシートバックに赤い差し色が入る「ジュニア エレットリカ プレミアム」のフロントシート。ヘッドレストには、おなじみのロゴマークが備わる。
ブラックを基調としたシートバックに赤い差し色が入る「ジュニア エレットリカ プレミアム」のフロントシート。ヘッドレストには、おなじみのロゴマークが備わる。拡大
「ジュニア」の価格はエントリーグレード「イブリダ コア」の420万円から電気自動車「エレットリカ プレミアム」の556万円まで。欧州市場よりも割安といえる戦略的な価格に設定されている。
「ジュニア」の価格はエントリーグレード「イブリダ コア」の420万円から電気自動車「エレットリカ プレミアム」の556万円まで。欧州市場よりも割安といえる戦略的な価格に設定されている。拡大
櫻井 健一

櫻井 健一

webCG編集。漫画『サーキットの狼』が巻き起こしたスーパーカーブームをリアルタイムで体験。『湾岸ミッドナイト』で愛車のカスタマイズにのめり込み、『頭文字D』で走りに目覚める。当時愛読していたチューニングカー雑誌の編集者を志すが、なぜか輸入車専門誌の編集者を経て、2018年よりwebCG編集部に在籍。

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