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みんなが楽しめる乗り物大博覧会! 「ジャパンモビリティショー2025」を振り返る

2025.11.21 デイリーコラム 堀田 剛資
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印象的だった展示の充実ぶり

11日の会期を終え、2025年11月9日に無事閉幕した「ジャパンモビリティショー2025」。早くも思い出となりつつある、2年に一度の自動車……もといモビリティーの祭典だが、結論から申し上げると、今回はとてもステキな博覧会となったのではないでしょうか。

来場者数は101万人で、これはドイツで催された「IAAモビリティー2025」(7日間で50万人以上)の約2倍。まぁこれでも前回の2023年より1割減ったというのだが(参照)、このご時世に100万人超を集めたインパクトは素直にスゴい。かつて、したり顔で「リアルイベントはオワコン」とか言っていた社会学者やコメンテーターに、見解を聞いてみたいもんである(笑)。

また展示の内容も、以前にも増して充実していた印象がある。圧倒的物量で横綱相撲を見せたトヨタダイハツ連合に、東館の一角を科学博物館にしてしまったホンダスズキカワサキ参照)。漫画の世界を再現した日産ブースの仕掛けには、個人的にアイデア賞を差し上げたい。いっぽうで、マツダ三菱あたりは毎度おなじみ・通常営業だったが(笑)、前回、大迷走して方々から総ツッコミを受けていたスバルは、スポーティーでワイルドな自身の持ち味を取り戻していてうれしかった。

「ジャパンモビリティショー2025」の開場より、来場者にスマホを向けられる「センチュリークーペ」。センチュリーのブースはプレスデーも一般公開日も高い注目度で、平日の昼間でも入場は30分待ちだった。
「ジャパンモビリティショー2025」の開場より、来場者にスマホを向けられる「センチュリークーペ」。センチュリーのブースはプレスデーも一般公開日も高い注目度で、平日の昼間でも入場は30分待ちだった。拡大
一般公開日の東京ビッグサイトの様子。この日(2025年11月6日)は平日だったが、会場には立ち止まるのがはばかられるほどの人が詰めかけていた。
一般公開日の東京ビッグサイトの様子。この日(2025年11月6日)は平日だったが、会場には立ち止まるのがはばかられるほどの人が詰めかけていた。拡大
ホンダのブースにそそり立っていた「サステナブルロケット」。巨大なスクリーンで流される飛行試験の映像にウルっときたアナタは、記者と同じ『プロジェクトX』世代でしょう。
ホンダのブースにそそり立っていた「サステナブルロケット」。巨大なスクリーンで流される飛行試験の映像にウルっときたアナタは、記者と同じ『プロジェクトX』世代でしょう。拡大

来場者の気持ちをアゲた展示車両の数々

充実した印象は、個々のショーカーも同じである。どいつもこいつも、つくり手のメッセージと前のめりなパワーがみなぎっていて、人混みをかき分けてきた来場者をゲンナリさせる、気の抜けたハリボテは皆無。完成車メーカーのブースはもちろん、企画展示「Tokyo Future Tour 2035」や、サプライヤーやスタートアップの展示エリアも実に気合が入っていた。……が、方々で耳にした「これは万博にも出したものなんですよ!」「大阪じゃ〇分待ちの展示です」という説明を思うに、そちらについては「2025年日本国際博覧会」と開催が重なったことによる、ブースト効果もあるのかもしれない。

それはさておき、展示車といえば、市販化が明言されたモデルの多さも、今回のショーを盛り上げた一因だろう。既発表のものを除いても、「トヨタ・ランドクルーザー“FJ”」「日産エルグランド」「BYDラッコ」、そして「ホンダ・スーパーONE プロトタイプ」の市販版が2026年の発売とされ、またスズキも、「ビジョンeスカイ」をベースとしたプロダクトモデルの上市をアナウンスした。さらにホンダは、これが世界初公開となる「Honda 0 α」も2027年に発売すると宣言。また、こちらの登場は当分先だろうが、新型「ダイハツ・コペン」についても計画の進行が明らかにされた。

これら魅惑の展示のおかげで、自動車ユーザーの期待はパンパン。各完成車メーカーにおかれましては、ぜひ上述のモデルの開発にまい進していただきたい。あと、こちらは「発売します!」とは言ってなかったけど、スバルも「Performance-B STIコンセプト」の市販化を、ぜひお願いしますヨ。

「Tokyo Future Tour 2035」より、岩谷技研が出展した宇宙遊覧用のゴンドラ。上昇にはガス気球を用いる。岩谷技研では世界初の商用運航を目指し、研究開発を進めている。
「Tokyo Future Tour 2035」より、岩谷技研が出展した宇宙遊覧用のゴンドラ。上昇にはガス気球を用いる。岩谷技研では世界初の商用運航を目指し、研究開発を進めている。拡大
こちらは住友グループのSCSKが出展した、その名も「SCSKカー」。AIエージェントやエンタメアプリなどの技術が満載されており、ブース内ではそれらの機能を体験することもできた。
こちらは住友グループのSCSKが出展した、その名も「SCSKカー」。AIエージェントやエンタメアプリなどの技術が満載されており、ブース内ではそれらの機能を体験することもできた。拡大
16年ぶりのフルモデルチェンジということで、大いに注目を集めている新型「日産エルグランド」。発売は2026年夏とされている。
16年ぶりのフルモデルチェンジということで、大いに注目を集めている新型「日産エルグランド」。発売は2026年夏とされている。拡大
今回のジャパンモビリティショーで、最も“クルマ好き”の注目を集めたであろう「ダイハツK-OPEN(コペン)」。新型「コペン」は軽規格を保ったままFRになる! ……かもしれない。
今回のジャパンモビリティショーで、最も“クルマ好き”の注目を集めたであろう「ダイハツK-OPEN(コペン)」。新型「コペン」は軽規格を保ったままFRになる! ……かもしれない。拡大

家族で楽しめてなにが悪い?

ところで、こうした博覧会では、プレスデーと一般公開日で会場の様相が変わるのはよくある話。今回のジャパンモビリティショーも同様で、一般公開日に再訪した記者は、(毎度のことながら)プレスデーとは全然違うその雰囲気に戸惑ってしまった。東京ビッグサイトがバンザイして、若いカップルやファミリーを朗らかに迎えているのである。とくに子供向けのパーソナルモビリティーを出展し、ド派手なステージショーを開いてみせたトヨタや、ピクサーよろしくデフォルメされた出展車両のキャラクター(なんなら鈴木俊宏社長もキャラ化されていた!)で展示の解説をしていたスズキのブースでは、独り身のロンリーウルフは痛切な疎外感を覚えた(笑)。

しかしそれでも、ポケモンやうんこ先生、初音ミクまで総動員して会場を盛り上げた各出展者の取り組みを、記者は大いに支持したい。世をすねた独身野郎より、未来ある若者や家族連れを大事にするのは、開かれたショーとして当然のこと。体験型コンテンツを前にキャッキャと目を輝かせる子供をしり目に、「大人の品評にたえない」などと言う無粋者におもねる必要はないのである。糸井重里のキャッチコピーじゃないけれど、大人も子供も、おねーさんも楽しめる。これはもう、一部カーマニアのためのイベントではないのである。

トヨタが出展した「Kids Mobi(キッズモビ)」は、実際に子供が乗り込んでの記念撮影も受け付けていた。
トヨタが出展した「Kids Mobi(キッズモビ)」は、実際に子供が乗り込んでの記念撮影も受け付けていた。拡大
スズキのブースでは展示車をデフォルメしたキャラクターを用意。解説に活用していた。
スズキのブースでは展示車をデフォルメしたキャラクターを用意。解説に活用していた。拡大
「Tokyo Future Tour 2035」より、ポケモンとのコラボによる「ホンダコライドン」(写真左)と「トヨタミライドン」(同右)。ゲームソフト『ポケットモンスター バイオレット』に登場したキャラクター(?)を、実寸大で再現したものだ。
「Tokyo Future Tour 2035」より、ポケモンとのコラボによる「ホンダコライドン」(写真左)と「トヨタミライドン」(同右)。ゲームソフト『ポケットモンスター バイオレット』に登場したキャラクター(?)を、実寸大で再現したものだ。拡大

次回はさらにぶっ飛んでいただきたい

ひところ世界的に顕著となった、既存の自動車ショーの地盤沈下。その時期を経て欧米型の博覧会から脱却し、独自の在り方を模索して至ったのが、今のジャパンモビリティショーなのだろう。テーマパークに片足つっこんだ現状をして日本民族の幼稚性を憂うのは、新橋あたりのガード下で聞くには面白いけど、上述の経緯をリアルタイムで見てきた私たちが、メディアに載せてまでするべき話か? ……というのは半分建前で(半分本音)、「みんな楽しそうだったんだから、いいじゃない」というのが、この論争に関する記者の見解である。

そんなこんなで、展示内容もおもてなしの仕掛けも、業界総動員! といった印象だった今回のジャパンモビリティショー。既述のとおり、コンテンツの充実度が大阪・関西万博との重複によって過給されたものなのは否めないが、だからどうした? 東京モーターショーの時代も含め、今回がいちばん取材が楽しかった。

そして同時に思ったのである。2027年の次回のモビリティショーはどうなるのかな? ぜひまた“ホンダの再使用型ロケット”レベルの、ぶっ飛んだ展示を見せてほしい。

(webCG堀田剛資<webCG”Happy”Hotta>)

海外メーカーではメルセデス・ベンツとBMW、BYD、ヒョンデが出展。いまだに出展を続けてくれる彼らに感謝しつつ、同時に、輸入車に頼らないでもこれだけの展覧会ができる、日本のモビリティー企業のコンテンツ力も実感した。……いやそれでも、いてくれるとうれしいんですけどね。
海外メーカーではメルセデス・ベンツとBMW、BYD、ヒョンデが出展。いまだに出展を続けてくれる彼らに感謝しつつ、同時に、輸入車に頼らないでもこれだけの展覧会ができる、日本のモビリティー企業のコンテンツ力も実感した。……いやそれでも、いてくれるとうれしいんですけどね。拡大
会場にはモビリティー産業への参入を目指すスタートアップの姿も。ただ「生産はどこで?」と尋ねると、その多くが「中国の〇〇ですね」とのこと。時流を思えば当然なのだけれど、ちょっと複雑な気持ちになってしまった。
会場にはモビリティー産業への参入を目指すスタートアップの姿も。ただ「生産はどこで?」と尋ねると、その多くが「中国の〇〇ですね」とのこと。時流を思えば当然なのだけれど、ちょっと複雑な気持ちになってしまった。拡大
最後に、webCG堀田の心に最も刺さった展示がこちら。いすゞ自動車の南極観測用雪上車「SM40S」である。このカッコよさ、ご婦人やお子さまがたにはわかるまい(笑)。
最後に、webCG堀田の心に最も刺さった展示がこちら。いすゞ自動車の南極観測用雪上車「SM40S」である。このカッコよさ、ご婦人やお子さまがたにはわかるまい(笑)。拡大
堀田 剛資

堀田 剛資

猫とバイクと文庫本、そして東京多摩地区をこよなく愛するwebCG編集者。好きな言葉は反骨、嫌いな言葉は権威主義。今日もダッジとトライアンフで、奥多摩かいわいをお散歩する。

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