大矢アキオの「ミラノ・デザインウイーク2024」探訪記 偶然の発見にも秀逸なアイデア
2024.05.04 画像・写真イタリアのミラノで2024年6月15日から21日に「デザインウイーク」が開催され、多くのデザイナーや企業関係者、そして愛好家でにぎわった。
今回も期間中は市内のあらゆる街区で、それこそ常設ショールームやスタジオだけでなく倉庫やガレージまで使って、展示が繰り広げられた。主となるオーガナイザーが把握しただけでも、今回は1125のイベントが企画されたという。
一歩間違えれば大海を泳ぐがごとく、ひたすらさまよってしまう。その間にも会期終了まで時間は容赦なく流れてゆく。そうしたなかで、“自動車”というテーマをもって会場を巡ることは、年によってアメーバのように変幻自在に姿を変えるイベントの訪問を有意義にする鍵だ。
と言いつつ、気分を変えてふらりと歩くのも大切である。偶然たどり着いた企業展示に、意外に秀逸なアイデアが示されていたりする。写真内で紹介するトヨタ・マテリアルハンドリング・ヨーロッパなどは、その一例だ。会場内にいたイタリア人スタッフに「もっと宣伝すればいいのに」と指摘すると「広報活動に改善の余地ありね!」と笑った。
そして小さなパビリオンほど、関係者やデザイナーに「よく見つけてくださいました」と歓迎され、熱心な説明を受けられるのも、イタリア第2の都市におけるこの春の祭典が貴重である理由だ。ぜひ「マッキナあらモーダ! 第857回」と併せてご覧いただきたい。
(文=大矢アキオ ロレンツォ<Akio Lorenzo OYA>/写真=Akio Lorenzo OYA、大矢麻理 Mari OYA/編集=堀田剛資)
-
1/20トリノのデザイン開発会社であるイタルデザインは、「We are Generation Ideneers(私たちは発想するエンジニア世代)」というスローガンとともにパビリオンを開設。入り口では、2023年のデジタル公開に続き、今回いよいよ実車となった新作コンセプトEV「アッソ・ディ・ピッケ・モビメント」のマケットが来場者を迎えた。
-
2/20イタルデザイン、レクサス、広州汽車集団(GAC)などが展示を行ったのは、市内随一のデザイン街区であるトルトーナ。期間中は夜9時近くまで開場しているパビリオンが少なくなかったことから、遅くまで人々のにぎわいが続いた。
-
3/20イタルデザインは、新作コンセプトEV「アッソ・ディ・ピッケ・モビメント」のモックアップ(左奥)とともに、その着想の源となった1973年「アッソ・ディ・ピッケ」(右手前)を展示した。
-
4/201973年「アッソ・ディ・ピッケ」のシリンダー状の計器盤を、ガラス越しに鑑賞する。当時、飛ぶ鳥を落とす勢いだったデザイナー、ジョルジェット・ジウジアーロの才気がふんだんに感じられる。
-
5/20イタルデザインのプロダクトデザイン部門による近作から。最上級の格付けであるDOCGのワイン「アルタランガ」の生産者組合の委嘱で製作したクリスタル製グラス。三角形のプレート形状が特徴的だ。
-
トヨタ の中古車webCG中古車検索
-
6/20レクサスのインスタレーション「BEYOND THE HORIZON」を担当したのは、英国で自身のスタジオ、Tangent(タンジェント)を主宰する吉本秀樹氏。彼は2013年の第1回レクサス・デザインアワード受賞者であった。
-
7/20「BEYOND THE HORIZON」には、2023年のジャパンモビリティショーで公開されたコンセプトモデル「レクサスLF-ZC」が据えられた。
-
8/20実は2011年からミラノにデザインスタジオを構えており、デザインウイークの参加も10回目となるトヨタ紡織のパビリオン。大径の“おりん”は島谷好徳氏の製作によるもので、ビジターのたたき加減によって、周囲に投影される光輪がさまざまな形に変化。聴覚と視覚で心地よさを体感させる。
-
9/20トヨタL&F(ロジスティクス&フォークリフト)の傘下にある、トヨタ・マテリアル・ハンドリング・ヨーロッパも、トルトーナで2部屋の小さな展示を行っていた。これはレーザーカットされたプレートを折り曲げるだけでつくれる、パレットトラックのコンセプト。開発途上国で有効と訴える。
-
10/20トルトーナ地区の中心にある広州汽車集団(GAC)の欧州R&Dスタジオで。スケールモデル「カーカルチャー・プロジェクト#3 シティーボックス」は、デリバリー業務用のスリーホイーラーである。
-
11/20GACは、スタジオの隣で中央美術学院(北京)との共同プロジェクトを公開。手前は、韓国人学生ミュンスプ・ジュン氏による「借景庭園 Pavilion」。本人によると、側面からのグリーンハウス形状は、アジアの伝統的建築物の屋根をイメージしたという。
-
12/20ポルシェは、スイスの家具ブランド、ヴィトラとコラボレーション。「356」や「911」のシートに用いられてきた千鳥格子をあしらったチェア3点を公開した。これはヴィトラの定番商品「プティ・ルポ」をベースにしたもの。99脚限定で、イタリア国内販売価格は、3911ユーロ(約64万円)。
-
13/20ポルシェ×ヴィトラのコラボレーションによる「イームズ・プラスチック・サイドチェア」。イタリア国内販売価格は、まさに車名にあやかった911ユーロ(約15万円)。限定脚数は、登場年にちなんだ1963である。
-
14/20ポルシェ×ヴィトラのコラボレーションによる「IDトリムL」。911脚限定で、イタリア国内価格1911ユーロ(約31万円)。
-
15/20あのフェラガモが所有する高級ホテル、ポートレート・ミラノでアウディが繰り広げたインスタレーション「リフラクション(Reflaction)」。reflectionとactionを合わせた造語である。巨大ミラーを十字に配し、「Q6 e-tron」を世界で初めて一般公開した。
-
16/20アウディはテーマ「リフラクション」に連動するかたちで、「Q6 e-tron」の灯火類にスポットを当てた展示を行っていた。これは同車の「マトリクスLEDヘッドライト」。デイタイムランニングランプ(昼間走行灯)は122個のLEDセグメントで構成されている。デジタルライトシグネチャー機能とアプリの組み合わせで、点灯パターンをユーザーが選べるのも特色。
-
17/20「アウディOLEDテクノロジー2.0」の解説。その多様な表示能力で、将来は“car to Xコミュニケーション”の一端を担えると説く。これは筆者の考えだが、クラウドから配信される危険情報を表示し、後続車に知らせるといったことも可能だろう。
-
18/20中国・東風系の電動高級車ブランド、ヴォヤーが展示を行った、セルベッローニ宮の一角にて。「Mヒーロー917(猛士917)」は、同じ東風のフル電動SUV。最高出力800kWで航続可能距離は750km(WLTC)と発表されている。
-
19/20ドゥカティによる「フォルマ(形状)」と題したパビリオン。内部では「ドゥカティ・パニガーレV4」のデザイン開発プロセスが解説された。インスピレーションは(同じフォルクスワーゲン・グループに属する)ランボルギーニなどの自動車から得ることもあるという。
-
20/20「ドゥカティ・パニガーレV4」のデザイン開発では、スケッチから選択した3案を3Dプリンターでスケールモデル化。一番右が採用案となった。