フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアントTSIコンフォートライン(FF/2ペダル6MT)/2.0TSIスポーツライン(FF/2ペダル6MT)【試乗速報】
あらゆる部分が進化 2007.08.03 試乗記 フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアントTSIコンフォートライン(FF/2ペダル6MT)/2.0TSIスポーツライン(FF/2ペダル6MT)……310万7000円/362万3000円
ボディはもとより、エンジン、足まわり、車名など、いたるところが新しくなったフォルクスワーゲン「ゴルフヴァリアント」。TSIエンジンを搭載したニューモデルに試乗、その走りを試す。
ジェッタヴァリアント!?
「フォルクスワーゲン・パサート」に続き、フルモデルチェンジを機に「ワゴン」から「ヴァリアント」へ呼び名を変えた「ゴルフヴァリアント」。といっても、これは日本の話。ドイツでは最初からゴルフヴァリアントだった。ちなみに、アメリカ市場では「ジェッタスポーツワゴン」として発売されるらしい。
このニューモデルは、現行型ゴルフをベースに、2575mmのホイールベースはそのままでリヤオーバーハングを340mm延長。4565mmの全長は、実は「ジェッタ」とまったく同じである。
フロントマスクも「ジェッタヴァリアントでしょ?」とツッコミを入れたくなるデザインで、同じメキシコの工場から世界に送り出されるから?と邪推する私なのだが、インポーターによれば、「フォルクスワーゲンのデザインのトレンドを先取りした」「ゴルフとゴルフヴァリアントのユーザーではクルマに求めるものが違うので、別の性格を与えた」というのがジェッタ顔を採用した理由とのことだ。リアのデザインも、これまでの、どちらかというと素っ気ないもの(それがゴルフらしかったのだが)から、多少色気のある雰囲気になった。
ぜーんぶTSI
ゴルフヴァリアントのラインナップは、1.4リッターTSIを積む「TSIコンフォートライン」と2リッターTSIの「2.0TSIスポーツライン」のふたつ。
フォルクスワーゲンはこのゴルフヴァリアントから、過給器付きの直噴ガソリンエンジンをすべてTSIと呼ぶことにしたので、2リッターTSIというのはゴルフGTIなどに搭載される200psの直噴ガソリンターボである。
一方、1.4リッターTSIは、ターボとスーパーチャージャーを組み合わせた、いわゆる“ツインチャージャー”だ。ご存知のとおり、1.4リッターTSIにはチューンの違いによって、140psと170psの2タイプがあるが、ゴルフヴァリアントに載るのは後者のハイパワー版となる。組み合わされるトランスミッションは、もはやすっかりおなじみとなった2ペダル6MTのDSGだ。
エンジン以外の違いとして、2.0TSIスポーツラインにはスポーティな装備が追加されている。たとえば、タイヤは205/55R16から1インチアップされた225/45R17となり、スポーツサスペンションのおかげで全高は20mm低められている。
シートはスポーツシートに。また、パドルシフトやバイキセノンヘッドライトが付くのも2.0TSIスポーツラインだけ。
価格は、TSIコンフォートラインの296万円に対して、2.0TSIスポーツラインは335万円である。
39万円の差は?
さっそくこの2台を乗り較べてみる。まずは2.0TSIスポーツラインから。乗り込むと、眺めはハッチバックの「ゴルフGT TSI」とほぼ同じ。ただし、ゴルフGT TSIのようにブースト計がメーターパネルの燃料計横に置かれることはなく、いままでどおりの水温計になる。
走り出すと、2リッター直噴ターボは、低回転から実にスムーズで、トルクも十分。もちろん、アクセルペダルを踏み込んでやれば、4000rpmあたりから一気にレブリミットまで駆け上がる気持ちよさだ。ターボラグが気にならないのは相変わらずだ。DSGの動きにもますます磨きがかかった印象。とくにエンジン回転を低く保った状態で一般道を巡航中に、すこしアクセルペダルを踏み増すような場面では、シフトダウンとともにスッと回転を上げて加速、そして元のギアに戻るのだが、一連の動きが実にスムーズで、いまやトルコンATに迫る勢いである。
1.4リッターツインチャージャーのTSIコンフォートラインも1470kgの車両重量に対して十分すぎるほどの力強さを見せる。しかし2.0TSIスポーツラインから乗り換えると、エンジンノイズが大きめであったり、1500rpm以下のトルクが頼りないのが目立ってしまう。高いギヤを選びたがるDSGとの組み合わせではこの辺の回転を使うことがよくあり、すこし加速をしたいときに動きが鈍く、それを見越して右足に力をいれすぎると、今度はシフトダウンとともに急激な加速に見舞われるなど、こういった部分の洗練度は2.0TSI+DSGに水をあけられた感じだ。
乗り心地は、ノーマルサスのTSIコンフォートラインでもゴルフらしい落ち着いた印象で、これは予想どおり。ワゴンだからといって必要以上に硬いということもない。
一方、スポーツサスペンションに17インチタイヤが組み合わされた2.0TSIスポーツラインは、やや硬めの乗り心地を示すものの、十分快適なレベルを保つ。フラット感はTSIコンフォートラインよりも上で、試乗前の予想とは反対に(!?)、私はこちらのほうが好ましく思えた。ハンドリングは、どちらのモデルもハッチバックよりマイルドになるが、ステアリングの操作に素直に反応する感じは、このヴァリアントにも受け継がれている。
ラゲッジスペースにも進化が
後回しになってしまったが、ワゴンならではの部分もチェックしよう。荷室はそのままでも広く、必要ならリアシートを倒してスペースを拡大する機能が備わるのも当然のこと。その際、シートバックだけを倒すこともできるし、クッションを起こした後にシートバックを倒すダブルフォールドも可能だ。ヘッドレストを外さなくてもダブルフォールディングできるところは旧型との大きな違い。
ちなみにハッチバックのゴルフにはダブルフォールディング機能はないが、急ブレーキや事故などのとき、荷物がキャビンに入るのを防ぐ上では、ダブルフォールディングのほうが有利なはずだ。荷室の床板を起こすと、荷物の仕切りになるのはいまや珍しくないが、荷物が少ないときには便利な機能だ。
そしてもうひとつ、このゴルフヴァリアントには、フォルクスワーゲンとしてははじめて、大型のガラスサンルーフがオプション設定されている。見るからに開放感があり、前半分はチルトやスライドができるのがうれしい。ウィンドディフレクターのおかげで、風の巻き込みも少ない。個人的にはぜひ選びたいと思う装備である。
ところで、私は以前、旧型のゴルフワゴンを所有していたのだが、それに較べてこの新型は、パワートレイン、サスペンション、荷室の使い勝手など、あらゆる部分で確実に進化を遂げていて、それなりに満足して乗っていた旧型以上に魅力的なクルマに仕上がっていた。
欲をいえば、ハッチバックの「ゴルフE」に相当する、もうすこしベーシックなモデルがあってもいいかと思う。ドイツでは1.4リッターTSIの新しいバリエーションとしてスーパーチャージャーのないバージョンが発表されているから、これがゴルフヴァリアントに搭載されて日本に上陸するのはそう遠い話ではなさそうだ。
(文=生方聡/写真=荒川正幸)

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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