第27回:8月26日「サンクトペテルブルクへ」(前編)
2007.06.23 「ユーラシア電送日記」再録第27回:8月26日「サンクトペテルブルクへ」(前編)
『10年10万キロストーリー4』刊行記念!
フリーランスのジャーナリスト、金子浩久。ユーラシア横断中ながら、それほどノンビリしているわけにもいかず……。
寄るべきか、寄らざるべきか
いよいよ、今日はロシアの首都モスクワへ入る……かもしれない。
“入らないかもしれない”のは、モスクワを通過して、行けるところまで走ってしまおうと考えているからだ。朝7 時にホテルをチェックアウト後、ニージニー・ノヴゴロド駅前にカルディナを停め、構内で400米ドルを両替(約4万6400円/1ドル=29.9ルーブル)する。駅前屋台で売っているピロシキとバナナ、ヨーグルトを買ってきて、車内で食べながら本日の作戦会議を行った。
「モスクワまで420km、サンクトペテルブルグまで1163km。モスクワに寄らなければ、一気に走れる距離だね」
「モスクワに寄っていたら無理。その場合は、モスクワに1泊することになる」
モスクワには、通訳のアレクセイがインターネットで検索して調べてくれた保険会社がある。われわれは、EU諸国を走るために必須の自動車保険「グリーンカード」に加入しなければならない。その加入申し込みを行うのに、申請するオフィスの所在地が明らかなモスクワに行くか、それとも不確実だがサンクトペテルブルクまで行って探すか。
モスクワにある保険代理店に寄るなら、街に入って出るので時間がかかってしまう。サンクトペテルブルクはロシア第2の大都市で、港町でEC諸国との行き来も盛んだ。それほど大きな街なら保険屋がたくさんあり、「グリーンカード」を扱っているに違いない。念のため、始業時間の 9時を過ぎてからサンクトペテルブルクのフェリー会社に問い合わせた。
「ウチで保険は扱っていない。街に保険会社? もちろん、たくさんあるサ」。
モスクワ、通過決定!
ロシア初の渋滞
小雨ふる「M7」をひたすら西へ。路面は日本並みに良好。大半が中央分離帯なしの片側2車線道路だった。擦れ違う日本車の数が、昨日と較べてまた一段と少なくなり、ロシア車とヨーロッパ車の比率が高まってきた。さらに、ヨーロッパ車だけでなくアメリカ車などの、今まで見なかったクルマが現れた。キャデラック・エスカレード、ダッジ・デュランゴ、インフィニティFX45、ハマーH2などの高級SUVを、モスクワへ向かうM7で見た。ヨーロッパ車も、いままでまったく目にすることのなかったシトロエンC5やC3、エグザンティアやXMなどが一気に登場した。何台か「75」を見かけたローバーも、昨日までは一切擦れ違わなかった。モスクワ中心部に近付くにつれてクルマの数が増えていき、合流地点などでは流れも滞るようになってきた。ロシアで“初めての渋滞”である。
しばらく走ると、環状線が見えてきた。立体交差路もロシア初だ。片側5車線もある、遮音板を備えた立派な自動車専用道だ。東京の首都高速道路よりも道幅が広く、径も大きい。
「なんでモスクワに行かないんですか? モスクワはロシアのキャピタルですよ?」
アレクセイには、モスクワのそばを走っていながら、立ち寄らないことが信じられないらしい。
「“赤の広場”とか、いろいろ見るところがありますよ」
確かにその通りだが、先を急ぐので通過する。サンクトペテルブルグまでは、残り700kmあまり。到着は深夜になるだろう。(つづく)
(文=金子浩久/写真=田丸瑞穂/2003年8月初出)

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