三菱パジェロショート VR-I(4WD/4AT)【試乗記】
土で、輝く 2007.06.06 試乗記 三菱パジェロショート VR-I(4WD/4AT)……278万2710円
本格オフローダー路線を突き進む「三菱パジェロ」。ダートコースで、その実力を探った。
別格の4WD
“シティ派”SUVがますます幅を利かせるなか、本格派・正統派の路線を突き進んでいるのが「三菱パジェロ」。モータースポーツの顔として、そして、いまや三菱のフラッグシップモデルとして重要な役割を果たしているのは、ご存知のとおりだ。
そのパジェロが自慢とするオフロードでの高い走破性を支えるのが、三菱が誇る4WD技術だ。三菱では、クルマの特徴にあわせていくつかの4WDシステムを用意していて、「i」や「コルト」など比較的コンパクトなモデルにはビスカスカプリングを用いたパッシブ4WD、ラージサイズのパジェロにはセンターデフ式4WD、その中間のアウトランダーやデリカD:5では電子制御カプリング式4WDを採用している。
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より楽しく、より安全に
パジェロのセンターデフ式4WDは「スーパーセレクト4WD II」と呼ばれるもので、プラネタリーギアを用いたセンターデフによって、通常は前33:後67にトルクを配分。滑りやすい路面ではビスカスカプリングが前50:後50までトルク配分を自動調整することで、高いトラクションを確保する。加えて、センターデフロックや副変速機、オプションのリアデフロックなどにより、悪路での走破性を高める。
また、燃費向上を狙い、後輪駆動モードも備えている。2H:後輪駆動、4H:フルタイム4WD、4HLc:直結4WD、4LLc:ローギヤ直結の4モードは、レバー式のスイッチで簡単に切り替えることが可能だ。
試乗車として用意されたのは、2ドアボディに3リッターV6を搭載したパジェロショート VR-Iで、メーカーオプションのリアデフロックとASTC(アクティブスタビリティ&トラクションコントロール)が装着されていた。
このASTCは、横滑りを防ぐスタビリティコントロールと、グリップを失ったタイヤにブレーキをかけることで駆動力の抜けを防ぐトランクションコントロール(電制LSD)の機能を併せ持つものだ。これがオフロードコースにおいて、より楽しく、より安全なハンドリングをもたらすことが、試乗によって明らかになった。
スポーティな素顔
設定された試乗コースには、小山を越えたり、急な坂を登る場面はあったものの、ぬかるみや岩場などはなかったので、駆動モードは4Hを選択。スタート後すぐに現れるタイトなコーナーで素早くステアリングを切ると、ショートボディとはいえ1900kgもあるパジェロが、面白いくらい簡単に向きを変えていく。そういえば、以前試乗会でV8を載せる計画はなかったか?」と尋ねたところ、同席していたラリードライバーの増岡 浩選手が、「V8が積めるほどエンジンルームを大きくしたらパジェロの戦闘力は大きくダウンしてしまう。V8がなくてよかった」と話していたことを思い出した。そしてこの鋭い回頭性は、パジェロで戦わない私にも、とても楽しめるものだった。
コーナーの途中でアクセルペダルを踏んでやると、ややリア寄りのトルク配分特性を持つパジェロは、多少オーバーステア気味に、ノーズをコーナーのイン側に巻き込むような動きを見せた。それでも、挙動に唐突さはないし、4輪の駆動力が失われる気配がないのは、先に述べたASTCの威力なのだろう。
試しに、センターデフ式4WDを搭載するが、ASTCのような制御プログラムを持たない「トライトン」で同じコーナーを試したら、簡単にリアがグリップを失ってしまった。腕に自信のある人ならともかく、安全に速く走りたいなら、ASTCが強い味方になってくれるに違いない。
それはさておき、舗装路だけではわからなかったパジェロのスポーティさに触れることのできた今日のオフロード試乗会。“水を得た魚”ならぬ“土を得たパジェロ”は、いつもより輝いて見えた。
(文=生方聡/写真=高橋信宏)

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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