第17回:8月16日「リモートアクセス四苦八苦 その2」
2007.05.30 「ユーラシア電送日記」再録第17回:8月16日「リモートアクセス四苦八苦 その2」
インテルネット、ニエット!
『10年10万キロストーリー4』刊行記念!
(前回からの続き)
ビジネスセンターの職員に、近くにあるインターネットカフェを2軒教えてもらい、iBookと財布、パスポートとノート、念のための電話線とモデムチェッカーをザックに詰めてホテルを飛び出す。早く行け、デジタルスレイブ!
外はいい天気で、エニセイ川を散歩する人々、釣りをする人々、臨時営業のカフェでくつろぐ人々……。
どうせ、オレは電脳奴隷さ。
1軒目は立派なビルのなか。カフェというより、看板から推察するにコンピュータ関連の会社のようだ。ビル入り口受付のオバちゃんに呼び止められる。「●%×▲&□&$%〜+」
「あ〜、……インターネットカフェ」
「?」
「インターネット、インターネット」
「オー! インテルネット。ニエット、ニエット。●%×▲&□&$%〜+」
なんだかわからないが、他に人の出入りがなく、土曜日で休みのようだ。奥から屈強なガードマンが出てきたので、立ち去ることにした。
2軒目は、エニセイ川沿いの1階に看板を出していた。が、ドアを押してみると、店内を解体していた作業員が、「ニエット、ニエット。●%×▲&□&$%〜+」
なんだかわからないが、追い返されてしまった。
ならば、スコヴォロジノで成功した“郵便局作戦”だ。ホテルに戻って場所を聞くと、エニセイ川と反対側のミーラ通り沿いにあるとのこと。汗を拭き拭き、小走りに向かった。建物はスコヴォロジノにあった郵便局の何倍もの大きさだが、窓口が全部開いているワケではない。
順番が来たところで、iBookを見せながら、さっきのオバさんを真似して、「インテルネット、インテルネット」と呼びかける。が、こっちのオバさんはテレホンカードを差し出してくる始末。別の窓口にいる若い女性に、iBookのLANジャックを見せ、「インテルネット! インテルネット!」
「ニエット」
電話線のコードを指し、iBookの電話線ジャックに差し込む仕草をして、「パジャロスタ(プリーズ)、パジャロスタ」
「ニエット!」
カウンターのシャッターを閉められてしまった。イーゴリさんがいないので、ロシア人がロシア語で交渉できないから、粘れない。
“アプル”お断り
参ったナ……。
そういえば、昨晩食事にこの辺に来た時に、電話局があったのを思い出す。電話ボックスがビルのなかにたくさん並んでいたのがガラス越しに見えていた。たしか、この先の剥製屋と消防署の並びだったはずだ。
電話局は見付かったが、結果は郵便局と大同小異。でも、そこのオバさんが、近くのネットカフェを身振り手振りとメモ書きで教えてくれた。ちょっとした脇道を入ったところにあったネットカフェは、これまで他の国で見たことのある“ネットカフェらしい”なりをしていた。
でも、厳しい。いかにも秋葉原を歩いていそうな、色白で太って、長髪を後ろで束ねた店員がiBookを見た途端、「ニエット、アプル」。電話線でダイヤルアップさせてくれと英語で頼んでも、「ニエット、テレフォン」。大都市だからどうにかなるさとタカを括っていたが、どうにもならない。どうしたらいいんだ!?
昼食をとっていないことに気付き、エニセイ川沿いに戻って「ホテル・アグニーエニセーヤ」のオープンカフェでランチ。子牛のソテーにラタトゥイユを注文する。フレンチフライドポテトを付け合わせにした、ロシアで初めて食べるヨーロッパ調料理だった。
美味しかったけど、田丸さんの分と生ビールを1杯ずつ飲んで1260ルーブル(約5000円)と、(ロシアにしては)高かった。満腹感で、インターネットに接続できなかったフラストレーションは紛れたが。
(文=金子浩久/写真=田丸瑞穂/2003年8月初出)

-
最終回:「エピローグ」(後編) 2007.7.29 トヨタ「カルディナ」でユーラシア横断を終えたジャーナリストの金子浩久。東京で旅行を振り返る。 海外での日本人職員の対応や、ロシアの現状について考える。
-
第41回:「エピローグ」(前編) 2007.7.28 トヨタ「カルディナ」で、ユーラシア横断を終えたジャーナリストの金子浩久。ようやく東京に戻り、長かった旅行を振り返る。前編では、参加メンバーのその後の様子を報告。
-
第39回:9月11日「ユーロトンネル」(前編) 2007.7.22 ウラジオストクからロカ岬まで。「トヨタ・カルディナ」で、ついにユーラシア横断を果たした金子浩久。カメラマンと別れ、友人の待つロンドンまでパリ経由で向かう。「ユーラシア電送日記」のエピローグをおくります。
-
第38回:9月4日「ロカ岬」 2007.7.21 2003年7月31日に富山県を出発した、「カルディナ」と自動車ジャーナリスト金子浩久の一行は、ついにポルトガルに到着。最終目的地の、ユーラシア大陸最西端「ロカ岬」へたどり着くが、カルディナのゴールはまだ先だった!?
-
NEW
航続距離は702km! 新型「日産リーフ」はBYDやテスラに追いついたと言えるのか?
2025.10.10デイリーコラム満を持して登場した新型「日産リーフ」。3代目となるこの電気自動車(BEV)は、BYDやテスラに追いつき、追い越す存在となったと言えるのか? 電費や航続距離といった性能や、投入されている技術を参考に、競争厳しいBEVマーケットでの新型リーフの競争力を考えた。 -
NEW
ホンダ・アコードe:HEV Honda SENSING 360+(FF)【試乗記】
2025.10.10試乗記今や貴重な4ドアセダン「ホンダ・アコード」に、より高度な運転支援機能を備えた「Honda SENSING 360+」の搭載車が登場。注目のハンズオフ走行機能や車線変更支援機能の使用感はどのようなものか? 実際に公道で使って確かめた。 -
新型「ホンダ・プレリュード」の半額以下で楽しめる2ドアクーペ5選
2025.10.9デイリーコラム24年ぶりに登場した新型「ホンダ・プレリュード」に興味はあるが、さすがに600万円を超える新車価格とくれば、おいそれと手は出せない。そこで注目したいのがプレリュードの半額で楽しめる中古車。手ごろな2ドアクーペを5モデル紹介する。 -
BMW M2(前編)
2025.10.9谷口信輝の新車試乗縦置きの6気筒エンジンに、FRの駆動方式。運転好きならグッとくる高性能クーペ「BMW M2」にさらなる改良が加えられた。その走りを、レーシングドライバー谷口信輝はどう評価するのか? -
ホンダ・プレリュード(FF)【試乗記】
2025.10.9試乗記24年ぶりに復活したホンダの2ドアクーペ「プレリュード」。6代目となる新型のターゲットは、ズバリ1980年代にプレリュードが巻き起こしたデートカーブームをリアルタイムで体験し、記憶している世代である。そんな筆者が公道での走りを報告する。 -
第931回:幻ですカー 主要ブランド製なのにめったに見ないあのクルマ
2025.10.9マッキナ あらモーダ!確かにラインナップされているはずなのに、路上でほとんど見かけない! そんな不思議な「幻ですカー」を、イタリア在住の大矢アキオ氏が紹介。幻のクルマが誕生する背景を考察しつつ、人気車種にはない風情に思いをはせた。