第2回:8月2日「RUS号にて」
2007.04.29 「ユーラシア電送日記」再録第2回:8月2日「RUS号にて」
『10年10万キロストーリー4』刊行記念!
1996年型「トヨタ・カルディナCZ」で、ウラジオストクからポルトガルはロカ岬まで。自動車ジャーナリスト金子浩久による、インターネット経由の旅の日記帳。第2回は、船上から。
なぜカルディナで?
予定時刻を2時間半も過ぎた午後9時半に伏木港を離れた「RUS(ルース)号」は、日本海を一路、ウラジオストク目指して航行を続ける。到着予定は、3日の午前9時30分。1日半の船の旅だが、船倉に預けられたわがカルディナに触れることはできない。こっそりと見に行っても、船倉には鍵が掛けられ、姿を眺めることはできなかった。
そもそも、ユーラシア大陸を横断するのに、なぜ中古のカルディナなのか?
この旅のことを人に話すと、全員からその理由を訊ねられた。「オフロードタイプの本格的なSUVやキャンピングカーなどの方がふさわしいのでは」と、みんな考えるのかもしれない。僕らも最初はその通りに考えた。でも、情報を集めていくほどに、その必要はないことが明らかになり、SUVは採らなかった。SUV は大きく、重たいから燃費がよくない。舗装路での乗り心地も乗用車より確実に劣る。乗り心地が悪ければ疲労は重なるし、僕の場合は、腰痛だって引き起こすに違いない。
ルートについては改めて説明するが、一部を除いてほとんどが舗装路だから、ステーションワゴンで十分。必要なラゲッジスペースさえ確保できれば、むしろステーションワゴンの方が望ましい。
そこで日本で手に入るステーションワゴンを思い浮かべてみた。選択に当たって、最優先するべきことは何か?ガソリン事情が不明なことと、給油回数が少ないに越したことはないことから、まず、ハイオクではなく、レギュラーガソリン指定のものをリストアップ。そのなかから、燃費に優れたものを探し出すと、カルディナの名前が眼についた。
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37.0万円の中古車
知人のSさんたちと数年前に東京から志賀高原にスキーに行ったときに、みんなで交代してハンドルを握ったことを思い出した。1.8リッターのリーンバーンエンジンを積んだカルディナは、4段ATながら高速道路とすいた国道で、非常に優れた燃費で走ったのだ。たしか、 13〜14km/リッターは走った。Sさんに確かめると、普段でもそのくらいは走るという。それまでカルディナというクルマのことを特に意識したことはなかったけど、それからは“高燃費のクルマ”として記憶された。
燃費とガソリン事情以外にも、検討材料はまだあった。もしもクルマが故障した場合の、ロシアおよびヨーロッパでの修理しやすさだ。修理しやすさとは、修理工場がたくさんあり、パーツもあまねく出まわっていることを意味する。そういうクルマは何かと想像すると、何世代かにわたってベストセラーを記録し、地域差がなく、広い範囲で売られているクルマが望ましい。
日本車ならば、トヨタの各車。ヨーロッパ車ならば、フォルクスワーゲンやフォードなどのクルマがそれに当たるだろう。
フォルクスワーゲンならば、「パサート」か「ゴルフ」のワゴン、フォードならば「モンデオ」のワゴンあたりがいい。
いずれも乗ったことがあるが、カルディナに勝る燃費を記録したものはない。それで、カルディナに決めた。カルディナはヨーロッパに正規輸出されているし、中古車もロシアに多く渡っている。そうした経緯によって、クルマはカルディナの1.8リッター・リーンバーンに決定した。
『Goo』という中古車情報誌で見つけた37.0万円の1996年型を、神奈川県座間市の小さな中古車販売店まで買いに行き、車検を取って名義変更を行った。国際登録証を制作して準備が整い始めたのは、7月に入ってからのことだ。もう出発まで1ヵ月を切っている。急がなければならない。まだ、クルマの整備や改造などやらなければならないことはたくさんあった。
(文=金子浩久/写真=田丸瑞穂/2003年8月初出)

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