シボレー・クルーズ1.5 LT 4WD(4AT)【ブリーフテスト】
シボレー・クルーズ1.5 LT 4WD(4AT) 2002.05.21 試乗記 ……180.3万円 総合評価……★★スズキ製シボレーブランド
車名だけで判断すると明らかにアメリカ車だが、中身はスズキである。基本的なシャシーはスズキ「スイフト」をベースとし、パワートレインもスズキでつくられたもの。つまりGMとスズキとの共同開発によるシボレー・ブランドのスズキ製“ミニ”ミニバンである。マツダ・ファミリアのフォード版であるレーザーみたいなものだ。だから、いわゆるガイシャの味わいを期待している人には、「なーんだ日本車と変わらないじゃない」ということになるが、ハードウェアとして純粋に評価を下せば、可もなく不可もなくといったところ。個性はないし光るところもないが、日常の足として使うなら、まずまずの仕上がりである。ただし、ここに取り上げた4WDモデルは、乗り心地の点ですすめられない。雪国で生活する人や、泥濘地を走る機会の多い人以外は、フツーのFF(前輪駆動)仕様車を選んだほうがよい。
【概要】 どんなクルマ?
(シリーズ概要)
2001年11月1日から販売が開始された、GMとスズキ初の共同開発(OEMを除く)によるクルマ。コンパクトカーに定評のあるスズキが、「スイフト」ベースのプラットフォームとエンジンを供給し、デザインや足まわりをGMが担当した。エンジンはどちらも可変バルブタイミング機構付きの、1.3リッター直4DOHCと、1.5リッター直4DOHCの2つがラインナップされ、1.3リッターモデルがスズキの「アリーナ」、1.5リッターは「GMオートワールド」を通じて販売される。組み合わされるトランスミッションは4ATのみ。駆動方式はFFと、電子制御によって前後輪へ最適なトルク配分を行う4WDの2種類。4WDはスイッチにより、FFにもできるパートタイム4WDだ。グレードは1.3リッター、1.5リッターモデルとも、ベーシックモデルと、フォグランプや革巻きステアリングホイールなどを装備する上級グレードの2種類となる。
(グレード概要)
「LT」(4WD)は、1.5リッターモデルの上級グレード。可変バルブタイミング機構を備えるエンジンは、110ps/6000rpm、14.6mkg/4000rpmを発生する。駆動方式はスイッチでFFと4WDを切り替えることができる、「EMCD(Electro Magnetic Control Device)」を備えた新開発パートタイム4WD。このシステムは、ABS、エンジンからの信号をもとに、EMCDで前後駆動力を制御するという仕組み。走行状態に合わせて3つのモードを選択することができる。すなわち、発進、加速時や雪道などで、前後の駆動力をEMCDが最適に保つ「オートモード」、乾いた路面などを経済的に走る前輪駆動の「FFモード」、そしてぬかるみや砂地などを抜ける前後輪直結の「ハードモード」だ。装備面では、オートエアコン、CDプレーヤー付きAM/FMステレオラジオ、革巻きステアリングホイール&シフトノブ、ルーフレールなどが標準装備される。
【車内&荷室空間】 乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★
簡素というか安っぽいというか、全体のデザインにはカッコ良さは感じられない。なんだか少し前の軽自動車みたいなのだ。いま登場したクルマにしては設計が古い印象すら持ってしまう。パネル表皮のシボの入り方も上質な感じは薄い。メーターナセルの銀色仕上げのパネルもなんとも品がない。とはいえ、スイッチやレバー類の使い勝手は悪くないし、ウィンカーレバーはもちろん日本車と同じく、ステアリングコラムの右から生えているから、一般的な輸入車とは違い、これまで日本車一辺倒の人でも戸惑うことは皆無である。グラブボックスの容量がミニマムであること以外は、小物入れが豊富であることもありがたい。収納スペースには充分な配慮のあとがうかがえる。
(前席)……★★★
一般的なセダンより高めに位置するシートは、良好な視界をもたらすだけでなく乗降性の容易さにも寄与し、乗り降りが非常に楽である。上述のごとく視点が高めのドライビングポジションとサイズに不満のないシートのおかげで、ドライバーはけっこう快適な気分に浸れる。シートクッション自体は硬めだが、これもまた悪くない。さすがに背の高いクルマだけのことはあり、天井と頭の間の空間もたっぷりしている。助手席との距離がやや近いことも気にならず、けっして広くはないが狭いと感じることはない。
(後席)……★★★
ヘッドルームは前席ほどたっぷりしていないが、それでも不満はない。身長170cm弱のドライバーが座った状態での、後席の住人の膝とフロントシートとの隙間は横にしたこぶしが1個入る程度だが、このサイズのクルマなら妥当なところだろう。シートバックはやや立ち気味なものの、妙に後ろに傾いていないだけにかえって疲れない。個人的には嫌いじゃない。
(荷室)……★★
容量はミニマムである。スーパーの買い物袋5個くらいを入れるぶんには文句のない広さが確保されている。リアシートの背もたれを前に倒せば(5段階に調節できる)、荷室の有効スペースはさらに増すが、これは後席に人を乗せないことが前提になる。当然、リアシートをたためば、ラゲッジルームをさらに拡大できるが、クッションはそのまま(ダブルフォールディング式ではない)なので、床がフラットにならないのが残念なところだ。ユーティリティの高いホンダ・フィットあたりと比較すると、完全に後れをとる。
【ドライブフィール】 運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
1.3リッターと1.5リッター(スズキのディーラーでは販売されない)の2種類が用意されているが、試乗車は後者で、駆動方式は4WDである。組み合わされるトランスミッションは4ATだ。動力性能は予想どおりというか、1.5リッターの4気筒エンジンと990kgの車両重量なら、そこそこ走る。パワフルではないし、わくわくするパワーユニットではないものの、不満のない走りっぷりである。4WDとはいっても、電子制御カップリング式のため、「4WD AUTO」モードを選択していれば、滑りやすい路面での走行や曲率の小さいカーブをコーナリングする際などを除く通常の使い方では基本的に前輪のみを駆動。4WDならではのブレーキング現象はまず気にならない。
(乗り心地+ハンドリング)……★
サスペンションは硬めのセッティングである。突起や段差を乗り越える際のガツンといった突き上げはうまく抑え込まれているのはいいとして、つねにザラザラ、ゴツゴツした乗り心地であるのが辛い。路面の凹凸を正直に拾ってしまい、滑らかな路面ならいいが、荒れた路面では車体がつねに揺れ動いている。フラット感が希薄なのだ。初期の頃のメルセデスAクラスを思い起こさせるドタバタした足は興ざめである。ハンドリングは思いのほか素直で好ましい。車高のあるクルマなのに、コーナリングでボディが予測した以上にグラリと傾くこともなく、ごく自然に振舞える。ただし改善してほしいのはパワーステアリングのフィーリングだ。速度感応式電動パワステの手応えの不自然さにはがっかりさせられる。あともう一歩の詰めが甘い。
(写真=清水健太)
【テストデータ】
報告者:阪和明(CG編集局長)
テスト日:2001年11月23日から24日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2001年型
テスト車の走行距離:1979km
タイヤ:(前)165/65R15 81S(後)同じ
オプション装備:--
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4)高速道路(6)
テスト距離:2216km
使用燃料:20.5km
参考燃費:10.8リッター/km

阪 和明
-
スズキ・エブリイJリミテッド(MR/CVT)【試乗記】 2025.10.18 「スズキ・エブリイ」にアウトドアテイストをグッと高めた特別仕様車「Jリミテッド」が登場。ボディーカラーとデカールで“フツーの軽バン”ではないことは伝わると思うが、果たしてその内部はどうなっているのだろうか。400km余りをドライブした印象をお届けする。
-
ホンダN-ONE e:L(FWD)【試乗記】 2025.10.17 「N-VAN e:」に続き登場したホンダのフル電動軽自動車「N-ONE e:」。ガソリン車の「N-ONE」をベースにしつつも電気自動車ならではのクリーンなイメージを強調した内外装や、ライバルをしのぐ295kmの一充電走行距離が特徴だ。その走りやいかに。
-
スバル・ソルテラET-HS プロトタイプ(4WD)/ソルテラET-SS プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2025.10.15 スバルとトヨタの協業によって生まれた電気自動車「ソルテラ」と「bZ4X」が、デビューから3年を機に大幅改良。スバル版であるソルテラに試乗し、パワーにドライバビリティー、快適性……と、全方位的に進化したという走りを確かめた。
-
トヨタ・スープラRZ(FR/6MT)【試乗記】 2025.10.14 2019年の熱狂がつい先日のことのようだが、5代目「トヨタ・スープラ」が間もなく生産終了を迎える。寂しさはあるものの、最後の最後まできっちり改良の手を入れ、“完成形”に仕上げて送り出すのが今のトヨタらしいところだ。「RZ」の6段MTモデルを試す。
-
BMW R1300GS(6MT)/F900GS(6MT)【試乗記】 2025.10.13 BMWが擁するビッグオフローダー「R1300GS」と「F900GS」に、本領であるオフロードコースで試乗。豪快なジャンプを繰り返し、テールスライドで土ぼこりを巻き上げ、大型アドベンチャーバイクのパイオニアである、BMWの本気に感じ入った。
-
NEW
2025-2026 Winter webCGタイヤセレクション
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>2025-2026 Winterシーズンに注目のタイヤをwebCGが独自にリポート。一年を通して履き替えいらずのオールシーズンタイヤか、それともスノー/アイス性能に磨きをかけ、より進化したスタッドレスタイヤか。最新ラインナップを詳しく紹介する。 -
NEW
進化したオールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2」の走りを体感
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>欧州・北米に続き、ネクセンの最新オールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2(エヌブルー4シーズン2)」が日本にも上陸。進化したその性能は、いかなるものなのか。「ルノー・カングー」に装着したオーナーのロングドライブに同行し、リアルな評価を聞いた。 -
NEW
ウインターライフが変わる・広がる ダンロップ「シンクロウェザー」の真価
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>あらゆる路面にシンクロし、四季を通して高い性能を発揮する、ダンロップのオールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」。そのウインター性能はどれほどのものか? 横浜、河口湖、八ヶ岳の3拠点生活を送る自動車ヘビーユーザーが、冬の八ヶ岳でその真価に触れた。 -
NEW
第321回:私の名前を覚えていますか
2025.10.20カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。24年ぶりに復活したホンダの新型「プレリュード」がリバイバルヒットを飛ばすなか、その陰でひっそりと消えていく2ドアクーペがある。今回はスペシャリティークーペについて、カーマニア的に考察した。 -
NEW
トヨタ車はすべて“この顔”に!? 新定番「ハンマーヘッドデザイン」を考える
2025.10.20デイリーコラム“ハンマーヘッド”と呼ばれる特徴的なフロントデザインのトヨタ車が増えている。どうしてこのカタチが選ばれたのか? いずれはトヨタの全車種がこの顔になってしまうのか? 衝撃を受けた識者が、新たな定番デザインについて語る! -
NEW
BMW 525LiエクスクルーシブMスポーツ(FR/8AT)【試乗記】
2025.10.20試乗記「BMW 525LiエクスクルーシブMスポーツ」と聞いて「ほほう」と思われた方はかなりのカーマニアに違いない。その正体は「5シリーズ セダン」のロングホイールベースモデル。ニッチなこと極まりない商品なのだ。期待と不安の両方を胸にドライブした。