ジープ・ラングラー/ラングラー アンリミテッド【試乗記(後編)】
身近になったJeep(後編) 2007.03.17 試乗記 ジープ・ラングラー/ラングラー アンリミテッドモデルの追加、パワーの向上などに加え、オフロード性能にも磨きがかかったという新型「ジープ・ラングラー」。オフロードコースでその進化を試す。
やはりジープはオフロードが似合う
新型ラングラーについてざっと説明したところで、さっそく試乗に移ろう。ジープの試乗会は、いつもアウトドアの雰囲気満点の会場を用意し、オフロードコースも凝りに凝っている。
今回も、既存のオフロードコースに重機を入れてこの試乗会に備えたというから楽しみだ。
まずは2ドアのラングラースポーツに乗り込む。
ラングラーは、センターデフを持たない直結式の4WD。ふだんはFRの「2H」モードで走行するが、いざというときには4WDの「4H」または「4L」が選択できる。オフロードならローレンジモード(変速比2.717)の「4L」が最適で、ATのセレクターを1速に入れてコースインした。
最初に待ち構えていたのが、大きな穴が足跡のように並ぶ難所。スタッフは“エレファントフットホール”と名づけていたが、ここに足を踏み入れると4輪のうち、接地するのは対角線上にある2輪だけになり、残りの2輪は宙に浮いてしまう。
こうなると、いかに直結型の4WDといえども、前後のデフの作用で、宙に浮いた2輪が空転し、接地したタイヤにトルクが伝わらなくなってしまう。
しかし、ラングラールビコンを除くモデルでは、リアデフにLSDを組み込むとともに、ESP(エレクトロニック・スタビリティ・プログラム)の1機能として、空転しているホイールにブレーキをかけ、空転していないホイールにトルクを伝えるBLD(ブレーキ・ロック・ディファレンシャル)を搭載することにより、トラクションを確保。おかげで難所を無事にクリアすることができた。
最低地上高が225mmと高く、前後オーバーハングが短いスタイルも幸いして、その後も激しいアップダウンやぬかるんだ道をスタックすることなく突き進むことができた。
「ルビコン」が面白い!
次に試乗したのは、オフロード性能を極めるラングラールビコン。ソフトトップとハーフドアを備え、ラングラーのなかのラングラーといえる雰囲気のモデルである。
もちろん、メカニズムの面でも、前後にロック可能なデフを搭載したり、ローレンジのギア比を4.100に低めるといった、悪路走破性を高める工夫がいたるところに見られる。
さらに、ルビコンには「アクティブ・スウェイ・バー・システム」(ASBS)が装備されている。これは室内のスイッチを操作することで、フロントのスウェイバー、すなわちスタビライザーを解除することができるというもので、過酷な地形を走破するために、ホイールストロークを増やしたいときなどには重宝する機能だ。
スタビライザー解除機能そのものは、これまでも装着するモデルはあったが、従来はクルマの下に潜ってピンを抜き差しする必要があるなど面倒だった。しかし、ASBSはこれを電子制御することで使い勝手を格段に向上させたのだ。
さきほどのエレファントフットホールでこのASBSの効果を試してみる。
スタビライザーを解除して進入すると、ホイールが宙に浮いている時間が短くなるとともに、対角線上に接地しているホイールを軸とするボディの急激な揺れが緩和されるため、ラングラースポーツ以上に安心してこの穴ぼこ道をクリアすることができた。
ただ、路面によってはスタビライザーを解除したままではロールが大きくなるので、状況に応じてASBSをオン/オフする必要がある。
また、安全に配慮して、29km/hを超えるとスタビライザーは自動的に連結する設定になっている。
ルビコンは、今回のラインアップのなかでは唯一マニュアルトランスミッションを備えるが、急勾配を下るような場合、副変速機で4Lを選択し、ギアを1速にすれば、エンストすることなしに、歩むようなスピードを保ってくれる。こういった状況でブレーキを踏むのは禁物だから、まさに頼れるクルマという印象だ。
静かになったキャビン
オフロード走行を1時間ほど堪能したあとは、ラングラーサハラを一般道に連れ出す。冷静になって(!?)あらためて感じたのが、新しい3.8リッターV6エンジンのできのよさだ。
低い回転数から余裕あるトルクを発揮し、スムーズさ、アクセルペダルに対するレスポンスも良好。エンジンのスムーズさは回転を上げても減ずる気配はなく、4000rpmを中心に盛り上がりを見せる感触もなかなか頼もしい。そしてなによりうれしいのがその高い静粛性で、旧型に比べるとキャビンのなかは格段に静かで、快適になった。
2ドアのサハラはホイールベースが短いだけに、ステアリングに対するレスポンスがクイックでスポーティな印象。
反面、直進性については心許ないところがある。その点、あとで乗ったラングラーアンリミテッドスポーツは、直進性に優れ、乗り心地も落ち着いていた。
軽快さでは2ドアのラングラー、快適さでは4ドアのラングラーアンリミテッドという具合に、性格の違いははっきりしている。
そのどちらを選ぶかは、買う人の好みや家族構成によるわけだが、どれを選んでも“ジープ”の伝統やスタイル、そして機能性を手に入れることができるのがうれしいところ。今回のフルモデルチェンジにより、オフロードを極めた本格的なモデルがより身近になったことは間違いない。
(文=生方聡/写真=ダイムラー・クライスラー日本)
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生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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