第308回:新型三菱デリカD:5試乗
もしやコレ、金八センセーに乗ってほしいかも……!?
2007.03.06
小沢コージの勢いまかせ!
第308回:新型三菱デリカD:5試乗もしやコレ、金八センセーに乗ってほしいかも……!?
教育問題に立ち向かうクルマ
いやー、久々結構感動しましたね。三菱の新型ミニバン「デリカD:5」。
最初はあんまり期待してなかったのね。デザインはそれなりにカッコいいけど、ハッキリいって昔のイメージの進化版だし、新鮮さに欠けるような……っていうか先日出たパジェロがあまりに“シーラカンス”してたんで、もしやその第2弾かもと。あんまり期待できなかったのよ。
と思ったらデリカはひと味違いましたなぁ。事実上開発を取りまとめた山内さんが若く、とっても率直かつ才気溢れる人で印象が変わっちゃった。さらに実際見てみると意図が明快で今までにないミニバンだったのだ。クルマってまだまだ可能性あるのよねぇ。
小沢: まずは今回のポイント、これだけは言っておきたいってところを教えていただきたいんですが。
山内: テーマはやはり家族です。お父さんが乗ってて満足できるようなミニバンを……。
小沢: それって結構普通な気がするんですけど。
山内: 違うんです。コレだけ子供の虐待とか教育問題のことが叫ばれる中、家族のきずながしっかり築けるようなクルマにしたいと。
お父さんをキャプテンに
小沢: どういうことですか?
山内: デリカは3代目の「スターワゴン」の時代から、本格オフロード性能の高いミニバンとしてご好評をいただいていました。それをキープしつつもっと伸ばそうと。
小沢: それはわかりますが。
山内: 具体的には、アウトランダーをベースに足まわりにパジェロのパーツを使い、オンロードの性能を確保しつつも、グランドクリアランスや高い悪路走破性を獲得してます。
小沢: それって本当に必要なんですか?
山内: もちろん! なにしろD:5の前のスペースギアは13年も作っていて、末期でも月300台以上売れてたんです。当然トヨタさんやホンダさんには及びませんが熱狂的なファンがいらっしゃいました。そういう方たちを裏切りたくなかったし、そういう需要は絶対になくならないと思ったんです。
小沢: 確かに。ミニバンでいろんなところに行きたい、あれくらいのサイズで適当に野宿したい、みたいな需要って少なからずあるでしょうしね。俺自身、いろんなところでしょっちゅうクルマ停めて寝てるし(笑)。
山内: 実際、D:5を企画した時点でコアなデリカファンにお見せしたんですが、やはりクルマで河川敷に寝る方とか、雪山で野宿される方とかいらっしゃったんですよ。私たちとしてはそういう期待にはぜひとも応えたいし、もっと喜んでいただきたい。つまり“キャプテンとしてのお父さん”ですよ。子供たちの先頭にたって行動する、たくましいお父さんに向けたミニバンを作りたかったんです。
小沢: それはいい! 今、なんか自動ドアとか子供を軟弱にする方向のミニバンばかりですけど、もっと厳しいガンコなオヤジ向けのミニバンがあってもいいじゃないですか。夏休みに野宿しながら日本一周しちゃうようなね。ある意味、『巨人の星』に出てくる星一徹タイプのお父さん向けってことですね。あるいは金八センセーみたいな、熱い教育者向けってことでもいいけど……。
山内: 自動ドアは付いてるんですけどね(笑)……あえて言えばそういうことです。
ダイクラなき、新生三菱自動車の証
小沢: 具体的にがんばったところは?
山内: ありますよ。僕自身の趣味なんですが、日本車としては初めてサブバッテリーを付けました。一部ホンダ・ステップワゴンとかに付けられる社外品はありましたが、純正ではデリカが初めてです。
小沢: 要するにクルマを停めたままラジカセとかランタンが付けられると。無駄にエンジンかけなくていいし、バッテリー上がりを気にする必要もない。これはいいわ。
山内: サブバッテリーに対応してオプションで電気毛布なども用意しました。
小沢: これもいい。なんだか結構、欲しくなってきたなぁ。
山内: そういっていただけるとうれしいです。このクルマ、やはりダイムラー・クライスラーがいたらできなかったクルマなんですね。国内専用ボディということで難しかったし。でも今回いろいろあって、好き者が言い続けてやっと実現できたクルマなんです。
小沢: これこそ“新生三菱自動車”の証だと。
山内: そういう感じですかね。
小沢: でも山内さん、本当にお若いですよね。ひょっとして30代?
山内: ええ。
小沢: 途中で会社辞めたくならなかったですか。
山内: いやまったく。みんな辞めていきましたけど、ここで辞めたら今までの苦労がなんになると。
小沢: 言葉で言うのはカンタンですけど、凄い根性いりますよね。俺なら辞めてたかも……。
山内: いやそんな。でも確かに当時、会社の雰囲気はもの凄かったですよ。
小沢: そうでしょう。今の日本の潔癖的なところって凄いですよ。一度悪いとレッテル貼られたものは徹底的にコキ下ろす。でも、そんな山内さんだからこそ、このいい意味でガンコなデリカができたんですよね。
それに三菱社内の雰囲気も本当に変わった気もする。こんなに若い、事実上のチーフエンジニアがいるだなんて、トヨタでもホンダでもあり得ないです。それだけでも凄い。こういうクルマって確かにありだし、本当の意味で三菱らしいですよね。これからもがんばってください。
山内: はい(笑)。
ってなわけでデリカD:5。普通に乗っただけでは、やや足まわり硬めで昔のイメージを追っただけのクルマにも思えたけど、実は違った。きちんと時代にあわせ、なおかつ自らの個性、つまり三菱らしさをしっかり見つめて作った快心作だったのだ。
マジ、俺に息子が3人ぐらいいたら、もしやコレ買うかもって思いました。いやはや山内さん、ホント今後も期待してまっせ〜。
(文と写真=小沢コージ)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
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