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nvh volume 1:クルマだけを見ず、クルマだけを語らない

2007.02.26 internet NAVI NAVI 編集部
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nvh volume 1クルマだけを見ず、クルマだけを語らない加藤哲也『NAVI』編集長

20数年前の“告知”

まったく人生というのは摩訶不思議なものだと改めて思う。今を去ること20数年前、『CG』の入社試験を受けたものの見事落第。失意の中で見つけたのは毎月欠かさず読んでいたCGの編集後記欄に載っていた「新自動車雑誌創刊・スタッフ募集」の告知であった。

モノ心ついたときからクルマにしか興味を示さず、モータースポーツに憧れ、CGに感化されて育った僕の目に、このたった数行の告知が見逃せるワケがなかった。CGと同じ出版社から“分家”する形で独立する雑誌なら、きっと面白いに違いない。

しかし問題だったのは、そこには一体どんな内容の自動車誌なのか? がまったく書かれていないこと。こちらとしては当時の職も夢も投げ打って、第二の人生を賭ける意気込みでいるのに、これじゃああんまり不親切過ぎるんじゃあないか。

と憤慨しているだけでは何も始まらない。当時の僕は迷ったら即行動が身上。さっそく電話をかけて二玄社に問い合わせてみると、CGとはまったく別の形態、まったく異なる編集方針の、今までにない新しい雑誌だというばかりで、頭に巣食った疑問はほとんど氷解しない。

加えて元々がセカンドベストでは納得できない性分だったから、結局はCG一本狙いで次のチャンスを待つことを決心した。新雑誌の方は一読者として楽しませてもらおうというわけだ。ご想像の通り『NAVI』が創刊されたのは、そのしばらく後のことである。

実際、NAVIは画期的な内容の自動車雑誌だった。読んで面白く、好奇心を刺激し、知的興奮を味合わせてくれる。しかしまだ若く、ドライビングプレジャーを得られる機械としてのクルマにだけ興味津々の“偏狭な”クルマ好きでしかなかった当時の僕にとって、“作り手側”に回りたいと熱烈に思わせるものではなかった。


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自動車を評価する眼力と勇気を

その僕が、今こうしてNAVIの現場監督を務めることになったのだから、人生どう転ぶかわからない。しかも20代の頃と違い、今はNAVIでの仕事、自分にとっての新しいチャレンジに意欲満々なのだから面白い。

それもこれも、今、自動車メディアが確実に転換期に差しかかり、変質を迫られているという思いが心の底にあるからだ。
CGという本格的で、ある意味古典的な自動車雑誌の編集部員として、20年以上に渡ってクルマやそれを取り巻く環境と最前線で向き合い、触れ合い、戯れてきた末に得た実感である。

いつの日からか、我々自動車ジャーナリズムは品質の高いクルマ、性能の高いクルマだけをいいクルマと評価してきた。自動車雑誌が長年に渡って培ってきた価値観の上では、決して間違ったことではないだろう。世界の自動車の完成度を高める一助になったことは間違いないからだ。

しかしクルマが情緒的な側面を持つ限り、それだけに頼って判断を下すことがとても危険なことのように思えてならない。

ましてやクルマの基本性能がひと昔前に比べ飛躍的に高まった最近は、一般ユーザーとはまったく無縁とも思える限界域まで追い込むか、あるいは重箱の隅をつつくように微に入り細に穿って観察しなければ、優劣を論じることさえ難しい場合が多い。

自動車雑誌の伝統的評価軸と一般の人々の感覚の乖離を、最近否応なく意識させられるのだ。

もはやクルマをただ機械としての完成度の高さだけで論じる時代ではない。NAVIはクルマだけを見ず、クルマだけを語らない。一般的な尺度で測ればライバルに劣るクルマでも、志を持ち、固有の魅力を訴えかけてくるのであれば、ちゃんと評価する眼力と勇気を持ちたい。それこそが読者に近い立ち位置だと信じるからだ。

(2007年2月)

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(写真=内藤敬仁)
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NAVI 編集部

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毎月26日発売のカーライフマガジン『NAVI』。日夜取材に追われる編集部員は、加藤編集長はじめツワモノぞろい。どこがツワモノかって?……このコーナーを読めばわかります。

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