ジープ・チェロキー「スポーツ」(4AT)/「リミテッド」(4AT)【試乗記】
クライスラーの誇りと資産 2001.10.02 試乗記 ジープ・チェロキー「スポーツ」(4AT)/「リミテッド」(4AT) ……324.5/368.5万円 “初代ジープ”たる「ウィリスMB」誕生してからちょうど60年。ジープ・チェロキーがフルモデルチェンジを受けた。フロントサスペンションを独立懸架式とし、3.4リッターV6ユニットを新採用した新型チェロキーはどうなのか? 『webCG』エグゼクティブディレクターが乗った。アメリカンSUVは急速に良くなった
この2カ月の間で驚かされたことがある。むろんアメリカの同時多発テロや、それに対する日本政府の軽はずみな行動もそうだが、クルマの話である。何に驚いたかというなら、アメリカ製のSUVがにわかによくなったことだ。
実はシボレーのトレイルブレイザーはまだ乗っていないから、軽々しくは言えないけれど、真夏に新型フォード・エクスプローラー、その1月後にやはり新しいジープ・チェロキーに試乗して、心底感心させられた。エクスプローラーはとてもまじめに進化していた。そしてチェロキーは大胆に切り替わった。聞くところによればトレイルブレイザーもかなりいいという。
要するにこれも一種のレクサスショックでもある。もちろん、ビッグスリーにとって中型以上のSUVは生活の糧だから、とても真剣に取り組んでいる。だが、日本ではライオンが運転しているハリアーが、アメリカではレクサスRX300として登場、短時間にビッグスリーのドル箱を急襲してしまった。これを追ってデビューしたホンダ(アキュラ)の「MDX」もすばらしくできがいい。これではいかんと、本家は威信をかけて新型を開発してきたのだろう。こういう戦いは、当たり前だが「テロ対戦争」という図式よりも、ずっと気持ちがいい。要するに客が幸せになるのだから。
ともかく新型チェロキーにはかなり驚いた。それがアメリカでは「リバティ」という新しい名前に変えられたのも理解できた。従来のチェロキーとは世界が違うのだ。リバティって、いかにもアメリカらしくいい名前なのだけれど、日本ではニッサンがすでに使っている。やはりクルマの世界では、アメリカの最大の敵は日本なのだ。
高水準の両義性
初代ジープたるウィリスMBが生まれてちょうど60年後の2001年に、02年モデルとしてデビューした新型チェロキーは、オンオフ双方の性能を両立すべく生まれている。実際すべてのSUVがそうなっているのだが、特に今回の場合は「高い水準での両義性」であり、それは試乗した結果、はっきりと確認した。
今年の1月、デトロイトショーで発表されたときは、何となく小さく見えたけれど、新型はむしろ大きくなっている。それでも従来よりは何となく締まってなおかつハッピーに見えるのは、デザインのうまさ故だろう。だが、もっと感心したのは中に乗り込んだときだった。高級版の「リミテッド」と廉価版の「スポーツ」があるこのチェロキー、最初前者に乗ったのだが、室内のデザインや品質感に印象を受けた。黒とクロームうまく使ったその室内造形は、従来のアメリカンSUVというよりはチュートニックな味わいと煮詰め方で、皮肉なことに何となく新型フォード・モンデオのSUV版みたいだ。
細部もずいぶん神経が行き渡っており、「俺たちは客を昔から知っているんだ」という意気込みが理解される。ワンタッチでドアを開ける「シングルアクションスウィングゲート」や、リアガラスだけを開閉できる「フリッパーガラスシステム」なんかも、使いやすい。
The Best and the Brightestの誇り
そしてオンロードに乗り出したらさらに好印象を受ける。グランドチェロキーのV8から2気筒を外した新型3.7リッターV6SOHCユニットは、特にスムーズではないけれど、充分軽快に吹くし、必要なトルクは持っている。SUVとして期待される能力に加えて乗用車的な味わいもある。
それはハンドリングや乗り心地も同様だ。新しいエクスプローラーのオンロード能力もいいが、それはあくまでも従来のSUV的能力の正常的進化であるのに対して、チェロキーの場合はあたかもちょっと背の高い乗用車的な感覚を抱く。ステアリングフィールもかなりいいから、結構自信を持って飛ばすことができる。
そしてオフの挙動も予想以上だった。前輪を独立にしたためにアームの長さが限られ、伸び側のストロークが短くなるというハンディがあるが、実用上、これはまったく関係ない。試乗会が開かれたオフロードパークは、さまざまなコース設定が可能だが、この日ダイムラー・クライスラーは敢えてもっともタフなレベルといえる設定を選んだ。それでも丁寧に扱いさえするなら、それほどなれていない人間でも見事にクリアできた。そういう意味で、どんな場面でも、それほどドライバーのスキルに頼らないのというのは、現代のSUVとしては評価される。つまり多くのユーザーが、実際に本当のオフを体験する機会が無く、それゆえにいざというときにテクニックを知らず、宝の持ち腐れになりがちだからだ。
スポーツが324.5万円、リミテッドが368.5万円で10月13日に発売開始される新型チェロキー、かなりの期待作だ。言い換えるなら、クライスラーにとって最大の歴史的誇りと資産こそジープという名前であり、多分"The Best and the Brightest"が開発陣を支えているのだろう。
(文=webCG大川 悠/写真=郡大二郎/2001年10月)

大川 悠
1944年生まれ。自動車専門誌『CAR GRAPHIC』編集部に在籍後、自動車専門誌『NAVI』を編集長として創刊。『webCG』の立ち上げにも関わった。現在は隠居生活の傍ら、クルマや建築、都市、デザインなどの雑文書きを楽しんでいる。
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