ジープ・ラングラー“ルビコン”(5MT/4AT)【海外試乗記】
ジープのなかのジープ 2002.11.13 試乗記 ジープ・ラングラー“ルビコン”(5MT/4AT) もっともスパルタンなジープ「ラングラー」に、電子制御に頼らずオフロード性能を高めた「ルビコン」が、2003年モデルから加わった。自動車ジャーナリスト、森口将之によるインプレッションをおくります!ジープマニア垂涎
1941年に誕生したオリジナル・ジープの正当な発展型であり、“ジープのアイコン”として根強い支持を受ける「ラングラー」。今まではベーシックな「スポーツ」と、ドレスアップした上級グレード「サハラ」の2モデル構成だったが、2003年モデルからラングラーらしいモデル、「ルビコン」が仲間入りした。
“ルビコン”というと、多くの人は「ルビコン川を渡る」というフレーズを思い出すだろう。しかしジープにとっては、もうひとつの意味がある。カリフォルニアにある、アメリカでも屈指のハードなオフロードコースを行く「ルビコン・トレイル」と呼ばれるツーリング(?)があり、すべてのジープはこのフィールドを走破できなければ、市場に送り出されない決まりになっている。ルビコンは、いうなればジープにとっての「母なる大地」の名前を冠したモデルなのだ。
ニューモデルの内容は、この世界を知る者にとっては垂涎物。パートタイム式4WDの副変速機は、ローレンジのギア比が約2.7:1からなんと4:1まで落とされ、前後にはデフロックを装着。サスペンションはハードにセットされ、ホイールサイズを15インチから16インチに変更して、ロードクリアランスを増やし、タイヤサイズは、225/75R15から245/75R16に拡大された。電子制御を使わずメカニカルな手法で、走破性が極限まで高められた。当面は北米向けのみにデリバリーされるルビコンには、やはり日本仕様ラングラーでおなじみの4リッター直6OHV12バルブ(190ps/4600rpm、32.5kgm/3500rpm)が搭載される。トランスミッションは、5段MTと4段ATが設定される。ラングラーのATはようやく3段から4段に進化したわけだ。
オフロードで真価を発揮
まずは4段AT仕様でオンロードを走る。ここでは、ギアが1段増えたことの恩恵を感じた。トップギアで100km/hのエンジン回転数が、約3000rpmから2000rpmへと1000rpmも下がったのだ。シートの形状が一新されたことに加え、ソフトトップの建て付けがよくなったこともあって、クルージングはかなり快適になった。これならソフトトップ仕様でも、ある程度の距離をストレスなく走ることができる。
悪路走破性重視のタイヤはそれなりのロードノイズを発生するが、固められたサスペンションとの組み合わせは意外に悪くない。むしろソリッドなフィーリングによって、自分がルビコンという“特別なラングラー”に乗っている実感を伝えてくれる。
とはいえ、このクルマの真髄を発揮するのはやはりオフロードだ。5段MT仕様に乗り換え、絶壁のような斜面や大岩が転がる沢など、到底クルマでは行けそうもないようなセクションに挑んだ。が、結果的に難なくクリアした。4:1のローレンジの威力はとにかくスゴイ。急な下り斜面でもブレーキを使わず、1〜2km/hという超低速を保って下ることができる。一方滑りやすい上り斜面では、前後デフロックをセットすればスリップが最小限に抑えられ、いとも簡単に登っていける。
基本設計が60年代、という旧式なストレート6は、しかし4リッターというキャパシティにふさわしいトルクを発生。レスポンスがおっとりしているのがかえって奏功して、オフロードでも安心してアクセルコントロールができる。エンジンの性格も、またオフロード向きなのだ。
![]() |
ピュアな楽しさ
しかし、誰にでもすぐにこの走破性が手に入るわけではない。ドライバーは常に冷静な判断と繊細な操作をもとに、ステアリングホイールやシフトレバー、ペダルを操り、必要とあればデフロックをセットして、迫りくるセクションに挑まなければならない。高度な電子制御ディバイスを備え、最小限のことに気を配ればよい最近の4×4とは、このあたりが大きく違う。でもおかげで、走りに熱中できる。ライトウエイトスポーツカーに通じる、ピュアな楽しさが味わえるのだ。
フェンダーからはみ出しそうなタイヤなど、日本に輸入するには難しい部分もあるルビコンだが、見方を変えればこれほどジープらしいジープもない。何とかして日本のユーザーにも、このすばらしいポテンシャルを味わってもらいたいと思った。
(文=森口将之/写真=ダイムラークライスラー/2002年10月)

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
-
BYDシールAWD(4WD)【試乗記】 2026.1.17 BYDのBEVサルーン「シール」の機能アップデートモデルが登場。強化のポイント自体はそれほど多くないが、4WDモデルの「シールAWD」は新たに電子制御式の可変ダンパーを装備したというから見逃せない。さまざまなシーンでの乗り心地をチェックした。
-
マツダCX-60 XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ(4WD/8AT)【試乗記】 2026.1.14 「マツダCX-60」に新グレードの「XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ」が登場。スポーティーさと力強さ、上質さを追求したというその中身を精査するとともに、国内デビューから3年を経た“ラージ商品群第1弾”の成熟度をチェックした。
-
カワサキKLX230シェルパS(6MT)【レビュー】 2026.1.13 その出来には“セロー乗り”も太鼓判!? カワサキのトレイルバイク「KLX230シェルパ」に、ローダウン仕様の「シェルパS」が登場。安心の足つき性で間口を広げた一台だが、実際に走らせてみると、ストリートでも楽しめるオールラウンダーに仕上がっていた。
-
メルセデス・ベンツC220dラグジュアリー(FR/9AT)【試乗記】 2026.1.12 輸入車における定番の人気モデル「メルセデス・ベンツCクラス」。モデルライフ中にも年次改良で進化し続けるこのクルマの、現在の実力はいかほどか? ディーゼルエンジンと充実装備が魅力のグレード「C220dラグジュアリー」で確かめた。
-
日産ルークス ハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション(FF/CVT)【試乗記】 2026.1.10 日産の軽スーパーハイトワゴン「ルークス」がフルモデルチェンジ。「見えない危険が……」のテレビCMでお茶の間をにぎわせているが、走る、曲がる、止まるをはじめとしたクルマ全体としての仕上がりはどうか。最上級グレードをテストした。
-
NEW
ベントレー・コンチネンタルGTアズール(4WD/8AT)【試乗記】
2026.1.19試乗記ベントレーのラグジュアリークーペ「コンチネンタルGT」のなかでも、ウェルビーイングにこだわったという「アズール」に試乗。控えめ(?)な680PSのハイブリッドがかなえる走りは、快適で満ち足りていて、ラグジュアリーカーの本分を感じさせるものだった。 -
NEW
第327回:髪もクルマもナイスファイト!
2026.1.19カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。日産の新型「ルークス」で夜の首都高に出撃した。しっかりしたシャシーとターボエンジンのパワフルな走りに感心していると、前方にスーパーカーの姿を発見。今夜の獲物は「フェラーリ・ローマ」だ! -
NEW
日本で売れるクルマはあるのか!? 最新の“アメリカ産ニホンシャ”を清水草一が検証する!
2026.1.19デイリーコラムアメリカからの外圧による制度変更で、北米生産モデルの国内導入を決めたトヨタ。同様に、今後日本での販売が期待できる「海外生産の日本車」には、どんなものがあるだろうか? 清水草一が検証してみた。 -
フェラーリ12チリンドリ(後編)
2026.1.18思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「フェラーリ12チリンドリ」に試乗。前編では伝家の宝刀であるV12エンジンを絶賛した山野。後編ではコンビを組むシャシーの印象を余すところなく聞いてみた。 -
BYDシールAWD(4WD)【試乗記】
2026.1.17試乗記BYDのBEVサルーン「シール」の機能アップデートモデルが登場。強化のポイント自体はそれほど多くないが、4WDモデルの「シールAWD」は新たに電子制御式の可変ダンパーを装備したというから見逃せない。さまざまなシーンでの乗り心地をチェックした。 -
新生ノートンがいよいよ始動! 名門の復活を担う次世代モーターサイクルの姿に迫る
2026.1.16デイリーコラム英国のモーターサイクル史にあまたの逸話を残してきた名門、ノートンが、いよいよ再始動! その数奇な歴史を振り返るとともに、ミラノで発表された4台の次世代モデルを通して、彼らが思い描く未来像に迫った。



































