【スペック】全長×全幅×全高=4820×1795×1495mm/ホイールベース=2705mm/車重=1680kg/駆動方式=FF/3リッターV6DOHC24バルブ・ターボ インタークーラー付き(200ps/5000rpm、31.6kgm/2500rpm)車両本体価格=615.0万円(テスト車=633.0万円)

サーブ9-5エステート3.0tグリフィン(4AT)【ブリーフテスト】

サーブ9-5エステート 3.0tグリフィン(4AT) 2001.01.17 試乗記 道田 宣和 ……633万円 総合評価……★★★★★
 

「北欧」の好イメージどおり

サーブの、というよりは広くヨーロッパ車全体を見わたしてもかなりのハイクラスに属するスウェーデン製大型車。実際、アメリカ市場では、ライバルからも「ラージ」または「ラクシュアリーセグメント」のクルマと見なされている。
GMグループ入りしてからユニットやパーツレベルで共用が進んだが、ベースとなったオペルとはコンセプトとアプローチが明確に異なり、事実、まったく別のクルマに仕上がった。料理と同じで、クルマは素材でなくチューンひとつでいかようにも変わるという見本だ。ひとことで言えばはるかに高級かつ高品質。静かでマイルドで品が良く、しかも上級車に相応しいだけのパフォーマンスを充分に備えている。
メルセデスやBMWなどのドイツ勢からギラギラした部分を取り除き、アメリカ車のホスピタリティを与えたうえで、信頼感とクオリティ感を加えたと思えばわかりやすいだろう。唯一の弱点は値段が割高に感じられることだが、そのこと自体、これまでアンダーバリューされてきた証拠かもしれない。テスト車は2001モデルイヤーに新規追加された、エステートのトップモデル。9-5はいまお薦めの1台だ。

【概要】 どんなクルマ?

(シリーズ概要)
フロアパンの基本はオペルの現行ベクトラ。弟分に9-3があるが、そちらは旧型ベクトラをベースにしている。9-5のエンジンは自前の2.0/2.3リッター直4と、オペルオリジンの3リッターV6がグレードに応じて用意され、いずれもサーブ伝統のインタークーラー付きターボを備える。サルーンは全て、エステートは2.3と3リッターが日本に入れられる。過給方式は大別してパワー追求型(ハイプレッシャー)と燃費重視型(ロウプレッシャー)に分かれ、片側バンクのみの排気で過給する3.0tの場合は後者に当たる。
(グレード概要)
グリフィンは、「ハーマンカードン」製オーディオシステムやベンチレーション付きレザーシートなどを標準装備する最上級車種。2001年に初めてエステートモデルが加わり、価格のうえでもセダン「グリフィン」以上のトップモデルとなった。2001モデルイヤーとしての変更はターボゲージの追加、リモコン機能一体式イグニッションキーの採用など。

【車内&荷室空間】 乗ってみると?

(インパネ+装備)……★★★★
装備は充分以上。トップモデルの名に恥じないだけの内容と水準が保たれる。エアコンの出来優秀。全体にフィニッシュ良く、高級感に溢れる。欠点は小物入れが少ないこと、パワーウィンドウがワンタッチで上がらないこと、ドライビングコンピューターの表示が本国仕様のままで分かりづらいこと。
(前席)……★★★★
ドライバーズシートはゴージャスのきわみ。レザー張りかつメモリー付きパワーシートであるのはこのクラスとして当然とも言えるが、北欧車らしい電熱ヒーターが気持ちよく、さらにクッション部の強制換気が加わってサラサラとした快適さが得られる。センターコンソール設置のイグニッションが独得。北欧人を基準としているせいか、ステアリングはチルト/テレスコピックをもってしても若干遠め。
(後席)……★★★★
スペースはホイールベースの数字(2705mm)以上に余裕があり、豪華で大きなリアシートは前席同様、ヒーター付き。ショファードリヴンにも好適だ。室内はリアスカットルなしのワゴンボディながら遮音がきわめて良く、終始あらゆるノイズレベルが低い。
(荷室)……★★★★★
文句なしの広さ、文句なしの使いやすさ、文句なしの上質さでワゴンの理想型。使う身になった工夫が随所に。重量物を奥に押し込めるための「スライディングフロア」はその典型。外光を一切遮断できるほど造り込みの良い成形式ラゲッジシェルフは、セキュリティの面で3ボックス車同等の安心感を与える。

【ドライブフィール】 運転すると?

(エンジン+トランスミッション)……★★★★
静か、スムーズかつパワフル。独自の低圧ターボは低速からトルクたっぷりで、街中での回転数は、常に1000rpm台。メーター読みの100km/hは2000rpmちょうど。6000rpmのリミットに対して余裕たっぷりだが、踏み込んだ時のレスポンスは鋭く、特に115km/hまで効く2速へのキックダウンを利用すると、巨体に似合わずターボ本来の豪快な加速を披露する。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
ドイツ車あたりに比べると、乗り心地は一貫してかなりソフト。当たりが柔らかい。それでいて高速でも煽らないのがエライところ。ステアリングはかつてのメルセデスのように直進付近をわざとダルにして過敏さを排除、一見頼りないが高速になるほど安定する。コーナリングは適度な深さのロール感が秀逸。意外なペースで飛ばせる。

(写真=荒川正幸)

 

【テストデータ】

報告者:別冊編集室 道田宣和
テスト日:2000年12月4日から12月7日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2001年型
テスト車の走行距離:1393km
タイヤ:(前)215/55R16 93V/(後)同じ
オプション装備:電動ガラスサンルーフ(18.0万円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2):高速道路(7):山岳路(1)
テスト距離:914.1km
使用燃料:115.66リッター
参考燃費:7.9km/リッター