サーブ9-5エステート リニア2.0t スペシャルパッケージ(5AT)【試乗記】
余裕ある贅沢 2003.03.14 試乗記 サーブ9-5エステート リニア2.0t スペシャルパッケージ(5AT) ……419.0万円 “知的でスポーティ”をキーワードに、GMグループにおけるプレミアムブランドの地位確立を図るサーブ。セダンとなった新型「9-3」の発表に続き、2003年モデルの「9-5エステート」に、エントリーグレードとなる2リッターモデルが導入された。千葉県で開催されたプレス向け試乗会で、webCG記者がチョイ乗り。![]() |
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ボルボ・キラー
2002年のマイナーチェンジで、“スポーティ”をキーワードに大幅な改良を受けた、サーブのフラッグシップ「9-5」シリーズ。2003年モデルの「エステート」ことワゴンに、2.3リッターターボ、3リッターV6に加え、2リッター直4ターボを積むエントリーグレード「リニア2.0t エステート」が導入された。発売は、2003年3月8日から。
パワーソースは、サーブ自製の2リッター直4を低圧ターボで過給したもの。150psと24.5kgmのアウトプットは同じだが、9-3用の新型エンジンとは異なる。トランスミッションは、シーケンシャルモード付き「サーブ・セントロニック」5段ATが組み合わされる。ホイールはスチール製15インチ(カバー付き)、インテリアはファブリックと、装備が他のグレードより簡素化されるが、価格は従来もっとも低価格の「リニア2.3t エステート」(460.0万円)より61.0万円低い、399.0万円に設定された。16インチアルミホイールやレザー内装が奢られる「スペシャルパッケージ」(20.0万円)を装備した、「リニア2.0t エステート スペシャルパッケージ」(419.0万円)に至っては、リニア2.3tと装備内容もほぼ同じ。メルセデスベンツ「Cクラス ステーションワゴン」(415.0万円〜)、BMW「3シリーズ ツーリング」(409.0万円〜)と同価格帯で、ひとまわり大きなボディが手に入る。
日本GMのサーブ担当者に聞いたところ、エントリーグレードに期待される役割は「ボルボ・キラー」。ボルボの中核モデル、「V70」への対抗馬である。2.4リッター直5(140ps、22.4kgm)を積む、V70ベーシックモデルの価格は400.0万円だから、戦略的な値付けといえる。
しかし、「ボルボを追い抜こう、という考えはありません」と、担当者が続ける。ボルボの本国での年間生産台数50万台に対し、サーブは12〜13万台/年で約5倍の差がある。ところが、2002年上半期、日本での販売実績はボルボが8206台、対するサーブは647台。10分の1以下しかない。「本国での比率に近づけ、適切なバランスをとること」が、日本におけるサーブの目標だという。
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最大2000リッターの荷室
テスト車は、グラファイトグリーンの「リニア2.0t スペシャルパッケージ」。緑に茶色を混ぜたようなボディーカラーは、一見すると黒っぽいが、光加減によって深いグリーンであることがわかる。かなりシブいです。
微妙に内側へ湾曲したダッシュボードが、ドライバーを囲むようなインテリア。上級グレードのインパネには、メタルやウッドパネルがあしらわれるが、2リッターモデルはブラックの樹脂製。しかし、見ても触っても質感は安っぽくなく、シフター後部に設けられたイグニッションや、ドライバーを運転に集中させるため、夜間に速度計以外のイルミネーションを消灯する「Night Panel」スイッチが備わる。
試乗車はスペシャルパッケージ仕様のため、「サンド」と呼ばれるベージュの本革シート&ドアトリム、前席パワーシート(運転席8Way、助手席4Way)と、3段階に調節可能なシートヒーターが備わる。厚みのある革を張ったシートは、座面長、横幅ともタップリあり、座った時のフワっと柔らかい感触が心地よい。
9-5エステートは、ワゴンとしての機能性も高い。荷室は、開口部が約110cm、奥行き約110cmとスクェア形状。トノカバーまでの高さは45cmあり、容量は890リッター。6:4でダブルフォールディングできるリアシートを倒せば、最大2000リッターの大容量となる。無造作に使ってもかなり積めるはずだが、荷物の出し入れを容易にするスライディングフロア(オプション設定)や、フックの位置を任意に変えられるカーゴレール、パーセルシェルフ(仕切板)など、ラゲッジルームを効率よく使うアイテムも多彩。100%活用するのが、むしろ難しそうなくらいだ。
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余裕タップリ
低圧ターボにより過給される直4エンジンは、わずか1800rpmで24.5kgmの最大トルクを発生。かといって出足が急激で下品なこともなく、アップダウンのある千葉の山道を悠々と走る。バネ下が重いのか、特に低速で重量感のある突き上げを感じるものの、速度が上がるにつれて安定したフラットライドになるところは、飛行機の離陸時みたい……というのは、サーブの生い立ちを気にしすぎでしょうか。
2003年モデルから、スポーティ演出の必須(?)アイテム、ステアリングホイール上にシフトスイッチが設けられた。9時15分の位置でハンドルを握ると、中指か薬指でスイッチをクリックでき、右がシフトアップ、左はシフトダウンを受けもつ。
ただ、シフトレバーで「M」モードを選択しないとスイッチは機能しない。さらにレバーでのシフトもできない。右ハンドル仕様でシフトダウンする場合、レバーをMモードに入れ、ハンドルを持ち直してシフトと、手間が多いのが残念だ。アイシンAW製の5段ATは、走行状態やドライバーの意思をすぐ反映して、シフトアップ&ダウンを制御する優れもの。2〜3速にホールドして山道を駆け上がるならともかく、わざわざシーケンシャルモードを使わなくとも、普段はATにおまかせで充分。
ということで、Dレンジに入れっぱなしの安楽ドライブに切り替え、右足をアクセルペダルにそっと置いて走る。ターボエンジンの豊かなトルク感、ペダルのマージンから感じる余裕が嬉しい。人間なら時間とかお金とか、クルマならパワーや室内空間など、なににつけても余裕があるのは、贅沢な気持ちになれる。2リッターの9-5エステートはその多くを提供してくれるし、しかも価格はリーズナブル。浮いたお金でバカンスに行ける!
と贅沢な妄想が膨らんだものの、時間を取れる人が一番贅沢だっていうハナシもあります……。
(文=webCGオオサワ/写真=郡大二郎/2003年3月)

大澤 俊博
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