BMW 335iクーペ(FR/6AT)【試乗速報】
気負いなく乗れる駿足クーペ 2006.10.03 試乗記 BMW 335iクーペ(FR/6AT) ……722万5000円 クーペボディのBMW3シリーズ「335i」が日本上陸。セダンとは全く異なる衣をまとい、ツインターボで武装するこのクルマの実力はいかに?定番クーペが遂に日本上陸
この10年で4シータークーペの販売が激減している日本市場にあって、コンスタントに台数を稼いでいるプレミアムセグメント。その定番モデルといえる「BMW3シリーズクーペ」がリニューアルし、日本での販売をスタートした。
ベースとなるのは「E90」と呼ばれる現行の3シリーズセダンで、前:マクファーソンストラット、後:5リンクのサスペンションや2760mmのホイールベースといったシャシーの基本設計は当然同一であるが、「セダンと共用しているボディパネルが一枚もありません」とプレスリリースに明記するだけあって、セダンとは随分違った雰囲気に仕上がっている。
ボディサイズは、セダンに比べて全長で65mm長くなっているが、実物はその数字以上に大きく見える。また、巧みなデザインにより伝統のロングノーズを実現する。後方からの眺めも特徴的で、セダンとはまるで違うテールランプのおかげもあり、トランクリッドに付く「335i」のバッジがなければ別のシリーズと見紛うほどの変身ぶりだ。
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注目は新開発の直噴ツインターボ
しかし、そのスタイリング以上に注目したいのが、新開発の直噴ツインターボエンジンだ。3リッターのストレート6は、最大200バールの噴射圧を誇るピエゾインジェクターを備えた直噴システムと、2基の小型ターボチャージャーが与えられた。306ps/5800rpmの最高出力をマークするが、驚くべきは1300rpmという低回転から5000rpmにいたる広い範囲で400Nm(40.8kgm)の最大トルクを絞り出すことである。それでいて燃費低減への要求にも応えたといい、「4リッターエンジンのパワーと3リッターエンジンの燃費を両立する」とBMWが謳う、自慢の新システムなのである。
そんな新エンジンへの期待に胸ふくらませながら、さっそく運転席に収まることにする。
美しいベージュのレザーシートに座り、ドアを閉める。そしてシートベルトを手に取ろうとすると、後方から伸びたアームがシートベルトを前に押し出してくれた。Bピラーが後退しているクーペではうれしい配慮である。体勢を整えたところでダッシュボードにあるスターターボタンを押した。
まずはゆっくりとクルマを進めてみる。アクセルペダルに軽く右足を載せると、エンジンが2000rpm以下で回っている状態でも十分に力強さが感じられる。アクセルを少し踏み増すと、わずかに遅れてトルクが湧き上がる感じはターボならでは。しかし、ターボラグを感じるのはこの領域だけで、あらかじめカタログをチェックしていなければターボと気づかないレベルだ。2000rpmを越えるころには気にならなくなり、3リッターという排気量とは思えないほど力強いトルクを発揮し始める。
アクセルペダルを床まで踏み込めば、新しいストレート6は即座に臨戦態勢に入り、それまでの豊かさをさらに上回る強大なトルクが堰を切ったように湧き出てくる。とくに4500rpm前後の吹け上がりの鋭さ、トルクの盛り上がりは圧倒的で、4リッターV8並みの実力というのは決して大げさな表現ではなかった。
紳士的に躾けられた足まわり
強大なパワーを受け止める足まわりはそれなりに締め上げられてはいるが、十分に快適さを確保しているのも335iクーペの特徴である。
試乗車は、前:225/45R17、後:255/40R17サイズのランフラットタイヤが装着され、街中の荒れた道をゆっくりと進むような場合に多少バネ下の重さやタイヤの硬さを意識させられる。しかしながら、スピードが上がるにつれてそれも気にならなくなり、プレミアムクーペにふさわしい快適な乗り心地に変化する。サスペンションの締め上げ具合も適切で、場面によっては、もう少しダンパーを締め上げたほうがいいと思うくらいの快適さだ。これならふだんの移動や長時間のドライブでも苦痛と感じることはないだろう。
それゆえ、ワインディングロードでは多少ロールを伴いながらコーナーを駆けぬけることになるが、ロック・トゥ・ロックわずか1.9回転のアクティブステアリングの効果もあって、その機敏な動きはボディの大きさを感じさせない。
走り以外の部分でも見るべきところは多く、たとえば二人乗りとなる後席は足元、頭上ともに大人が乗っても窮屈さはない。ラゲッジルームは、後席を起こしたままでも十分な広さが確保され、いざというときには後席のバックレストを倒してスペースを拡大できる。荷室側から簡単にバックレストが倒せるのも便利である。
つまりBMW335iクーペは、クーペというスタイルを採りながらも、快適さとオールマイティさを手に入れた大人のクーペということになる。もちろん、その気になれば圧倒的パワーのエンジンの実力を引き出して、スポーティなドライビングが可能。ドアの大きささえ苦にならなければ、毎日気負いなく乗れる駿足クーペなのだ。
(文=生方聡/写真=河野敦樹/2006年10月)

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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