キャディラック・セビルSTS【ブリーフテスト】
キャディラック・セビルSTS 2001.06.02 試乗記 ……759.0万円 総合評価……★★★ハイテク1本槍はやや古い?
デカくてエラそうで高そうに、つまりは保守的に見えるが、キャディラックというクルマ、実は100年近く前の創業当時から技術革新に熱心なことで知られてきた。最近はすっかり日本車の専売特許みたいになった「世界初の新技術」導入も、1920年代から30年代にはキャデラックの独壇場だった。
現代のパーソナルカー、セビルもその伝統をしっかりと受け継いでいる。全長約5.0m×全幅1.9mの大柄なボディ(これでも昔に比べるとかなり小さい)は、基本メカニズムから小さなアクセサリーにいたるまで全身ハイテクのカタマリ。自ら大GMの最新技術をすべて詰め込んだ「ショールーム」役を演じている。そのうえ国際性と普遍性を求めて日本車やヨーロッパ車を研究した形跡が濃厚で、単に豪華でパワフルなだけでなく、従来不得意としたハンドリングの面でも第一級の仕上がりになってきた。だが、その一方で、全体に若干の違和感をもって感じられるのが、ハイテク車にありがちなデジタルっぽいフィーリング。絶対性能の高さは確かにしても、ドライバーはオンオフ的でなく、しなやかな連続性を欲している。
【概要】 どんなクルマ?
(シリーズ概要)
前作の成功を受け、発展継承型(いわゆるビッグマイナーチェンジ版)として現行セビルが登場したのは1999年。アメリカを代表する高級ブランドの中核モデルとして、また新たに展開する海外戦略の尖兵として期待され、輝かしい伝統に様々な革新技術が織り込まれた。ハイテクの代表的存在は、エンジン、トランスミッション、ステアリング、サスペンション、そしてブレーキを有機的に連携させ、統合的に制御する「ノーススターシステム」。92年にFF用として初めてDOHC32バルブV8エンジンが単体で登場以来、今日に至るまで、統合範囲の拡大と熟成が、モデルを越え、年式を越え、連綿と続けられる壮大なシステムだ。その過程で高度なトラクションコントロール「スタビリトラック」も編み出された。ほかにもクッションとバックレストにビルトインされた10個の空気袋を、ドライバーの体型と姿勢に合わせて機械が随時自動的に調整する「アダプティブシート」など、“世界初”“世界唯一”は数限りない。ついでにいえば、姉妹車のフォーマルサルーン、ドゥビルには、遠赤外線画像を利用した夜間視界補助装置「ナイトビジョン」がオプションで設定される。
(グレード概要)
セビルは2種類。スポーティでより高級なSTSと、コンフォート重視のSLSが用意される。機構上最大の違いはエンジンの出力特性で、STSが305ps/6000rpm、40.8kgm /4400rpmであるのに対してSLSは279ps/5600rpm、41.5kgm/4000rpmと、より低回転・大トルク型になっている。STSは独自にCV-RSS(コンティニュアスバリアブル・ロードセンシングサスペンション)を備え、ABSが路面粗度検知システム付きに、タイアがHRグレードになるほか、内装の一部がより豪華になる。価格はSLSの40.0万円高。
【車内&荷室空間】 乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
バックライトで白く浮かび上がるメーター、ブルーまたはグリーンが鮮やかな各種蛍光管やLED表示、木と革をふんだんにあしらったダッシュボードとトリム類などが、典型的な“キャディラックワールド”を創り出す。好き嫌いはあるにせよ、これがリッチなアメリカンモダーンの極致だ。メーターナセルには車のコンディションを知らせるDIC(ドライバーインフォメーションセンター)が、センターコンソールにはVICS対応のカーナビとBOSEのオーディオ、TV、VTR端子とが一体化した“キャディラックビジョン”(オプション)がインストールされ、しかもそれぞれの情報が完璧に日本語化されているという懲りようだ。その割にシフトポジションの表示が小さすぎて見づらいなど、多少チグハグなところもある。
(前席)……★★★★
アダプティブシートに免じて星4つ。「AUTO」を選んでおくと4分ごとに姿勢を検知し、エアセルの空気を出したり入れたりしてシートを身体に合わせてくれる。面白がってワザと体勢を崩してみたくなるほど。実際になかなかのスグレモノで、機械が人間のために一生懸命奉仕してくれている様子が健気でいい。前席のスペースは標準的。各種シート調整やステアリング調整はあるものの、チルトステアリングのピボットが近くてピッチが荒いため、全体にやや上を向いているのはアメリカ車独得。
(後席)……★★
図体の割に広くない。絶対的には必要充分だが、長身のアメリカ人などにはレッグルームが狭いはず。やや後頭部圧迫気味のルーフも鬱陶しい。もっとも、アメリカ車が圧倒的に前席優先なのは昔からだ。センターアームレストのカップホルダーが剥き出しで、ツヤのない、いかにもプラスチック然とした材質も興ざめ。
(荷室)…★★
広いが床が高めで上下に浅いため、意外に使いでがない。おまけにカーナビ用のCD-ROMチェンジャーが開口部の一部を遮る形で吊り下げられ、荷物の出し入れに邪魔になる。
【ドライブフィール】 運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
パワフルだがいささかスムーズさと洗練性に欠けるキライがある。4段オートマチックのDレンジだと、100km/hで2100rpm。低回転で余裕充分。普通に走っても速くて静かだ。ただし、キックダウンは文字どおり床まで踏みつけないと効かないし、効けば効いたで、特に「3速→2速」は、高級車らしからぬショックに見舞われる。リミットの6200rpmまで回すとアメリカンV8らしく、多少ラフだが豪快なサウンドが楽しめる。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
大型FWD(前輪駆動)車であることを意識させる場面が少なくない。タイヤは縦方向のグリップが不足気味で、勢い良くスタートするとホイールスピンすることが多い。若干のトルクステアも。ステアリングは軽く、ロック・トゥ・ロック=2.4回転とクイックだが、小まわりは効かない。ブレーキはペダルの反発力が強く、漸進的な感触が掴みにくい。それもあってABSの効きは早め。しかし、コーナリング自体のレベルは高く、かなりのハイペースでも破綻を来さないという意味で、なによりも安全である。しかも、スタビリトラックなどが介入する以前の話なのだから大したものだ。乗り心地は今やヨーロッパ車以上の硬さ。ただし、そう感じるのは低速だけで、一旦スピードに乗ってしまえば解消する。
(写真=高橋信宏)
【テストデータ】
報告者:二玄社別冊単行本編集室 道田宣和
テスト日:2001年5月21日から23日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2001年型
テスト車の走行距離:3589km
タイヤ:(前)P235/6018R16 99H/(後)同じ(いずれもGoodYear Eagle LS)
オプション装備:フロントアダプティブシート+キャディラックビジョン+クロームメッキアルミホイール+電動スライディングルーフ=89.0万円
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4):高速道路(6)
テスト距離:438.3km
使用燃料:84.0リッター
参考燃費:5.2km/リッター

道田 宣和
-
三菱eKクロスEV P(FWD)【試乗記】 2026.10.17 三菱の軽乗用電気自動車(EV)「eKクロスEV」が、一部改良でデザインを刷新! 2022年発売の古参の一台は、台頭するライバルをどう迎え撃つのか? 最新モデルと比べても、キラリと光る魅力はあるのか? 軽EVのパイオニアが擁する一台の実力を確かめた。
-
フィアット・グランデパンダ ハイブリッド ラプリマ(FF/6AT)【試乗記】 2026.10.16 欧州を代表するコンパクトカーの一台である「フィアット・パンダ」が第4世代に進化。新たに「グランデパンダ」を名乗り、日本にやってきた。ずばり新型の見どころは車両の随所にちりばめられた初代モデルへのオマージュである。上位グレード「ラプリマ」の仕上がりをリポートする。
-
フィアット500トリノ ハイブリッド(FF/6MT)【試乗記】 2026.10.13 電気自動車からエンジン搭載車へと華麗に変身! 日本では珍しい、4代目「フィアット500」のマイルドハイブリッドモデルに試乗。1リッターの自然吸気エンジンを6段MTで駆るイタリアンコンパクトは、今のクルマが忘れてしまった楽しさに満ちていた。
-
ボルボES90ウルトラ ツインモーター パフォーマンス(4WD)【試乗記】 2026.10.12 ボルボの電気自動車(BEV)「ES90」のトップモデル「ウルトラ ツインモーター パフォーマンス」を駆り、東京から初秋の新潟へ。往復700kmを超えるロングドライブで分かった新型5ドアハッチバックモデルの実力と、BEVで気になる充電環境のリアルな今を報告する。
-
フェラーリ・プロサングエ ハンドリング スペチアーレ仕様(4WD/8AT)【海外試乗記】 2026.10.8 フェラーリの4ドア4シーターモデル「プロサングエ」に、「ハンドリング スペチアーレ」を名乗るスペシャルバージョンが登場。その走りは従来モデルからどのように変わったのか? 跳ね馬の原産国、イタリアで確かめた。
-
NEW
トヨタ・ランドクルーザー“300”GRスポーツ(4WD/10AT)【試乗記】
2026.10.19試乗記トヨタの「ランドクルーザー“300”」にハイブリッドパワートレイン搭載モデルが登場。環境負荷低減のために牙を抜かれた……どころか、電気の力を味方に、さらに力強さを増しているから面白い。愛知県のオフロードコースで乗った印象をリポートする。 -
NEW
フェラーリが「日本上陸60周年」 記念祭から“ブランドの今とこれから”を読む
2026.10.19デイリーコラム「日本上陸60周年」を祝うファン感謝イベントを開催したフェラーリ。自動車界に燦然と輝くハイブランドは、いま何を目指しどこに行こうとしているのか? 経営トップの談話を交えながら推察してみよう。 -
日産キックスX e-4ORCE(前編)
2026.10.18思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が新型「日産キックス」に試乗。デザインが新しいのはもちろんのこと、まさに下ろしたての最新のパワートレインを搭載。日産の大きな期待を背負ったコンパクトSUVである。箱根のワインディングロードでの印象を聞いた。 -
三菱eKクロスEV P(FWD)【試乗記】
2026.10.17試乗記三菱の軽乗用電気自動車(EV)「eKクロスEV」が、一部改良でデザインを刷新! 2022年発売の古参の一台は、台頭するライバルをどう迎え撃つのか? 最新モデルと比べても、キラリと光る魅力はあるのか? 軽EVのパイオニアが擁する一台の実力を確かめた。 -
写真で解説する「フィアット・グランデパンダ」
2026.10.16画像・写真ステランティスが「フィアットブランドの大きな柱のひとつとなる重要なモデル」と位置づける「グランデパンダ」が日本上陸。その具体的な見どころを、写真とともに解説する。 -
フィアット・グランデパンダ ハイブリッド ラプリマ(FF/6AT)【試乗記】
2026.10.16試乗記欧州を代表するコンパクトカーの一台である「フィアット・パンダ」が第4世代に進化。新たに「グランデパンダ」を名乗り、日本にやってきた。ずばり新型の見どころは車両の随所にちりばめられた初代モデルへのオマージュである。上位グレード「ラプリマ」の仕上がりをリポートする。







