第5回:「ロータリー心中」NSU Ro80(1967〜77)(後編)
2006.09.13 これっきりですカー第5回:「ロータリー心中」NSU Ro80(1967〜77)(後編)
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小型車専門メーカー「NSU」が、ミドルクラスに進出するにあたって用意した“飛び道具”「Ro80」。先進メカニズム満載のロータリーサルーンは、発表とともにセンセーションを巻き起こしたのだが……。
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■Ro80と較べれば……
前編から続く)ご覧になればおわかりのように、NSU「Ro80」のボディもまた、そうした革新的メカニズムを包み込むにふさわしい斬新なものだった。風洞実験によって大胆にエアロダイナミクスを導入したスタイリングは、当時は「前衛的」あるいは「未来的」などと呼ばれたが、けっしてそれが独りよがりのアイデアではなかったことは、その後の歴史が証明している。発表から30年以上を経過し、エアロルックが常識となった今こそ、ようやくRo80の先進性が正当に評価できるのではないだろうか。
もちろんボディはスタイリッシュなだけではなく、長いホイールベースやコンパクトなロータリーエンジンとFWD(前輪駆動)の組み合わせによってスペース効率に優れ、さらに衝突安全性についても、設計した時点における最大限の配慮がなされていたのである。
同時代のライバルと比較してみると、Ro80がいかに進んでいたかが、より鮮明に浮かび上がってくる。Ro80が目指した中型車市場では、同じドイツ産でいえばメルセデスベンツは俗称タテ目コンパクトこと「W114/115」が登場したばかりで、BMWは1961年デビューの「1500」に始まる 1800/2000が主力という時代だった。いずれも国際水準をリードするサルーンであったが、それでもRo80に比べればなんとも保守的に見える。
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■ロータリーが命取り
名実ともにまさに「未来派サルーン」だったRo80は、発表と同時にセンセーションを巻き起こした。だが、いざデリバリーが開始されると、肝心のロータリーエンジンにトラブルが多発し、NSUはクレームによるエンジン交換に追われる羽目となった。本国では街中でRo80同士が出会うと、すれ違いざまにオーナーが無言のまま指を立て、その本数でエンジン交換の回数を報告しあうというブラックジョークが囁かれたほど、その頻度は高かったらしい。
クレーム対応とエンジン改良の渦中にあった69年に、NSUは経営難からアウトウニオンと合併、「アウディ-NSU-アウトウニオンAG」となり、フォルクスワーゲンの傘下に入った。Ro80はその後も改良を続けながら生産を継続したが、もともと大食いなロータリーには石油危機によるガソリン価格の高騰が致命傷となって販売が激減、77年についに生産中止となった。その間の72年にはプリンツ系のリアエンジン小型車がカタログ落ちしていたので、唯一残っていたRo80とともに、1世紀にわたる歴史をもつNSUの名も消え去ってしまったのである。
ロータリーによって名をあげたNSUが、上級市場への進出を狙い、社運を懸けて開発したRo80だが、結果的にそのロータリーが命取りとなってしまったわけだ。メーカーの息の根を止めてしまうとは、ある意味においてRo80こそ究極の「これっきりですカー」といえるのではないだろうか。総生産台数は約3万7000台、残存数は不明だが、日本にある実動車両となると、勘定するのにおそらく片手で足りることだろう。
(文=田沼 哲/2001年8月11日)

田沼 哲
NAVI(エンスー新聞)でもお馴染みの自動車風俗ライター(エッチな風俗ではない)。 クルマのみならず、昭和30~40年代の映画、音楽にも詳しい。
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第53回:「これっきりモデル」in カローラ・ヒストリー〜その4「謎のスプリンター」〜 2006.11.23 トヨタ・スプリンター1200デラックス/1400ハイデラックス(1970-71)■カローラからの独立1970年5月、カローラが初めて迎えたフルモデルチェンジに際して、68年に初代カローラのクーペ版「カローラ・スプリンター」として登場したスプリンターは、新たに「トヨタ・スプリンター」の名を与えられてカローラ・シリーズから独立。同時にカローラ・シリーズにはボディを共有する「カローラ・クーペ」が誕生した。基本的に同じボディとはいえ、カローラ・セダンとほとんど同じおとなしい顔つきのカローラ・クーペに対して、独自のグリルを持つスプリンターは、よりスポーティで若者向けのムードを放っていた。バリエーションは、「カローラ・クーペ」「スプリンター」ともに高性能版の「1200SL」とおとなしい「1200デラックス」の2グレード。エンジンは初代から受け継いだ直4OHV1166ccで、「SL」にはツインキャブを備えて最高出力77ps/6000rpmを発生する3K-B型を搭載。「デラックス」用のシングルキャブユニットはカローラとスプリンターで若干チューンが異なり、カローラ版は68ps/6000rpm(3K型)だが、スプリンター版は圧縮比が高められており73ps/6600rpm(3K-D型)を発生した。また、前輪ブレーキも双方の「SL」と「スプリンター・デラックス」にはディスクが与えられるのに対して、「カローラ・クーペ・デラックス」ではドラムとなっていた。つまり外観同様、中身も「スプリンター」のほうがよりスポーティな味付けとなっていたのである。しかしながら、どういうわけだか「スプリンター1200デラックス」に限って、そのインパネには当時としても時代遅れで地味な印象の、角形(横長)のスピードメーターが鎮座していたのだ。
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第52回:「これっきりモデル」in カローラ・ヒストリー〜その3「唯一のハードトップ・レビン」〜 2006.11.15 トヨタ・カローラ・ハードトップ1600レビン(1974-75)■レビンとトレノが別ボディに1974年4月、カローラ/スプリンターはフルモデルチェンジして3代目となった。ボディは2代目よりひとまわり大きくなり、カローラには2/4ドアセダンと2ドアハードトップ、スプリンターには4ドアセダンと2ドアクーペが用意されていた。このうち4ドアセダンは従来どおり、カローラ、スプリンターともに基本的なボディは共通で、グリルやリアエンドなどの意匠を変えて両車の差別化を図っていた。だが「レビン」や「トレノ」を擁する2ドアクーペモデルには、新たに両ブランドで異なるボディが採用されたのである。カローラはセンターピラーのない2ドアハードトップクーペ、スプリンターはピラー付きの2ドアクーペだったのだが、単にピラーの有無ということではなくまったく別のボディであり、インパネなど内装のデザインも異なっていた。しかしシャシーはまったく共通で、「レビン」(型式名TE37)および「トレノ」(同TE47)についていえば、直4DOHC1.6リッターの2T-G/2T-GR(レギュラー仕様)型エンジンはじめパワートレインは先代から踏襲していた。ボディが大型化したこと、および双方とも先代ほど簡素でなくなったこともあって車重はレビン930kg、トレノ925kgと先代より60〜70kg前後重くなった。
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第51回:「これっきりモデル」in カローラ・ヒストリー〜その2「狼の皮を被った羊(後編)」〜 2006.11.10 トヨタ・カローラ・レビンJ1600/スプリンター・トレノJ1600(1973-74)■違いはエンブレムのみ1972年3月のレビン/トレノのデビューから半年に満たない同年8月、それらを含めたカローラ/スプリンターシリーズはマイナーチェンジを受けた。さらに翌73年4月にも小規模な変更が施されたが、この際にそれまで同シリーズには存在しなかった、最高出力105ps/6000rpm、最大トルク14.0kgm/4200rpmを発生する直4OHV1.6リッターツインキャブの2T-B型エンジンを積んだモデルが3車種追加された。うち2車種は「1600SL」と「1600SR」で、これらはグレード名から想像されるとおり既存の「1400SL」「1400SR」のエンジン拡大版である。残り1車種には「レビンJ1600/トレノJ1600」という名称が付けられていたが、これらは「レビン/トレノ」のボディに、DOHCの2T-Gに代えてOHVの2T-B型エンジンを搭載したモデルだった。なお、「レビンJ1600/トレノJ1600」の「J」は「Junior(ジュニア)」の略ではないか言われているが、公式には明らかにされていない。トランクリッド上の「Levin」または「Trueno」のエンブレムに追加された「J」の文字を除いては、外から眺めた限りでは「レビン/トレノ」とまったく変わらない「レビンJ/トレノJ」。だがカタログを眺めていくと、エンジンとエンブレムのほかにも「レビン/トレノ」との違いが2点見つかった。
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第50回:「これっきりモデル」in カローラ・ヒストリー〜その1「狼の皮を被った羊(前編)」〜 2006.11.6 誕生40周年を迎えた2006年10月に、10代目に進化したトヨタ・カローラ。それを記念した特別編として、今回は往年のカローラおよびその兄弟車だったスプリンター・シリーズに存在した「これっきりモデル」について紹介しよう。かなりマニアックな、「重箱の隅」的な話題と思われるので、読まれる際は覚悟のほどを……。トヨタ・カローラ・レビンJ1600/スプリンター・トレノJ1600(1973-74)■スパルタンな走りのモデル型式名TE27から、通称「27(ニイナナ)レビン/トレノ」と呼ばれる、初代「カローラ・レビン1600/スプリンター・トレノ1600」。英語で稲妻を意味する「LEVIN」、いっぽう「TRUENO」はスペイン語で雷鳴と、パンチの効いた車名を冠した両車は、2代目カローラ/スプリンター・クーペのコンパクトなボディに、セリカ/カリーナ1600GT用の1.6リッターDOHCエンジンをブチ込み、オーバーフェンダーで武装した硬派のモデルとして、1972年の登場から30余年を経た今なお、愛好家の熱い支持を受けている。「日本の絶版名車」のような企画に必ずといっていいほど登場する「27レビン/トレノ」のベースとなったのは、それらが誕生する以前のカローラ/スプリンターシリーズの最強モデルだった「クーペ1400SR」。SRとは「スポーツ&ラリー」の略で、カローラ/スプリンター・クーペのボディに、ツインキャブを装着して最高出力95ps/6000rpm、最大トルク12.3kgm/4000rpmを発生する直4OHV1407ccエンジンを搭載したスポーティグレードだった。ちなみにカローラ/スプリンター・クーペには、1400SRと同じエンジンを搭載した「1400SL」というモデルも存在していた。「SL」は「スポーツ&ラクシュリー」の略なのだが、このSLに比べるとSRは装備が簡素で、より硬い足まわりを持った、スパルタンな走り重視のモデルだったのである。
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